第39話 再会


「必要なかったからな」


急に声が聞こえて私はびくりと顔をあげる。


しかし回りに人の姿はない、この庭園には私とルイだけだ。






え……なに、見えない何かがいる?


…………幽霊とか!?


いやまって無理、私ホラーとか苦手なのよ!


ゾンビ系の主張が強いのは戦い方次第では勝てそうだから平気だけど、日本のしっとりした幽霊とか無理!


物理攻撃効かなそうなんだもん!!






ルイをぎゅっと抱き締めてキョロキョロ辺りを見回す。


きつく抱き締め過ぎてしまったのか、驚いたルイがぽんっと腕から飛び出した。


「ここだよ、こーこ」


「…ひぁっ!?」


急に近くで声がして思わず飛び退くと、そこには柴犬…じゃなかった、レオンがいた。




「……レオン、さん?」


「久しぶり、アザミ様。遅くなってごめんな…手紙で近況は知ってたけど、元気か?一族の為に、一人で頑張らせちまったな」


「本当に……?」


「本物だって。幻とか夢じゃない」




信じられなくて目を瞬かせる私の手に、レオンはそっと触れて指を絡ませて手を握る。




「な?俺はちゃんとここにいるだろ?」




こくこくと頷く。


繋ぐ手のひらが暖かい。


よかった、また会えた。


私がレオンとの再開の余韻に浸っていると、繋いだ手を引かれぎゅっと抱き締められた。






レオンまでハグ!?何ゆえ!?


あれですか、今日はハグの日ですか。






「無事でよかった…」


上から聞こえて来た声に、切ないような嬉しいような感情が溢れて私はレオンをぎゅっと抱き締め返す。


「心配した…すっげぇ心配したんだ…。クラルテ国で酷い目に合っていないか、怪我したりしてないか…。本当に、無事で良かった」


「…迎えに来てくれて、ありがとうございます」


そういうとレオンは私の顔が見える程度に少しだけ体を離して、柴犬のような笑顔を見せてくれた。




うん、柴犬は笑わないけどね?






……あぁ、私の回りには本当に優しい人がたくさんいる。


私は人に恵まれているんだな…




レオンの笑顔に、何か満たされるものを感じた。




「シオンさんは一緒ではないのですか?」


「城の外で待ってる。じいちゃんから姿を消せる魔法を教えてもらったけど、シオンの持続時間が短くてさ。俺は丸一日くらい続けて消していられるから、それで潜入担当になったってわけ」


「あら、便利な魔法…私も戻ったらお祖父様に教えてもらおうかしら」


「それは勘弁。俺達がアザミ様を護衛できなくなるだろ?」


「それもそうですね。残念ですが諦めましょう」


わざとらしく肩を竦めて見せると、私の頭の上にルイがぽすんと乗った。




レオンと二人で話してたから退屈してしまったのだろうか?


小さな手で私の髪をもそもそ弄っている。




「…ルイ?」


「みゃ」




返事もどことなく素っ気ない。

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