第37話 今、やるべきこと
「よかったです、真相が…わかって」
私が顔をあげるとクラウドとアレクに深く頭を下げられた。
「申し訳ない、アザミ殿。謝って許されることではないが」
「僕達の先祖が…貴女達の先祖に酷いことを…。そして今も、一族の皆さんに不自由を強いている」
当時の人々の気持ちを考えれば、私は族長としてもクラルテ国や東の国を許せない。
でも、恨みや悲しみだけじゃ何も変わらないのも理解している。
目を閉じて、ゆっくり深呼吸をする。
いろんな感情が浮かんで、混ざって、ごちゃごちゃに絡み合う。
私が今するべき事は、なんだ。
魔導一族の先祖達を思って、泣くことでもクラウド達に怒りをぶつけることでもない。
「許す許さないを決めるのは…一族の一人一人です。クラウド様…この事について国王陛下とお話させていただけませんか?」
許す許さないは、私が全て決めてしまえることではない。それはクラウドやアレクも同じ。
個人の立場としてでは、いくら王子と言えど出来ることに限界があるだろう。
だから、直接トップに話をする必要がある。
族長としてアルフレッド王に向かい合わなければならない。
「国王陛下には内容を伝えてある、角印の証明の事も。明日にでも正式に謁見できるだろう」
「ありがとうございます」
「……アザミ、僕らを責めないのですか?」
アレクがぎゅっと拳を握る。
「アレク、私は…魔導一族の族長です」
その名乗りにクラウドとアレクが目を見開き私を見る。
「族長として、一族を未来に導く責務があります。その為に、今私がするべき事はクラルテ国の王族を…貴方達を責めることじゃない」
口の端をあげてにっこりと笑って見せる。
「私個人としては結構ショック受けてます、だけど私に足を止めている時間はない。だから進みます」
泣くのは、悔しがるのは、あとからでいい。
かつての一族の弔いも。
しなければならないかもしれない…
でも、今の一族の為に族長として出来ることをやる。
そして一族の未来を、守る。
それが今、私のやるべきことだから。
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