第36話 魔導一族の過去、真実の歴史

「……まず、やってみる、か」


ポツリと呟くとフッと息を吐く。




「そうだな、当たって砕けてみるとしよう」


「粉砕したらアレク王子と私で慰めて差し上げますわ」


「弟と客人にそんな真似させられないだろう」


クラウドは楽しげに笑う、つられて私も微笑む。




少しは励ましになったかな?


このままアルフレッド王と和解というか仲良くなってくれれば破滅フラグを折れるんだけどなー。






そんな事を考えながらまた書庫の本を調べていく。


すると棚の隅に、埃を被った古そうな装丁の本を見つけた。




手に取りぱらりぱらりと捲って見ると、どうやら日記のようだ。


文章に視線を走らせハッとする、ここに記されていたのは紛れもない真実かもしれない。


「クラウド様、これをご覧ください」


該当するページを開き、見せるとクラウドは私の隣に並びその内容を黙読する。


「これは…陛下にお伝えしなければいけない内容だな。その前に鑑定と、アレクセレイにも伝えなければならない」








◇◇


日記が見つかって数時間後、私の借りている客室にクラウドとアレクが揃った。


ソファは二人掛けの物しかなかったので侍女さんに椅子を持ってきて貰い、テーブルを囲むように座る。




「まず、この書庫で見つかった日記だがこの部分を見て欲しい」




クラウドがテーブルに先程の日記を置いて、表紙を捲る。


そこには角印の判子が押されていた。




「これはクラルテ国の王が偽り無い内容だと保証する角印だ。大まかな形や文字の配列は同じだが、初代から父上の代まで少しずつ模様が違っている」


「どの王の時代の物か、分かるようにするためですね」


アレクの言葉にクラウドは頷いて、自分の横に置いていた一冊の冊子を開いた。




「この冊子には歴代の王の角印を記録してある。それを照らし合わせてみた所、この日記の角印は初代国王のもであることが分かった」




つまり、この日記はクラルテ国初代国王に保証された内容のものとなる。




「それで、魔導一族の事が書かれていたのでしょう?」


アレクの質問に私が頷く。


クラウドは申し訳なさそうに目を伏せる。


「……クラルテ国では、魔導一族を奴隷のように扱っていた事が…書いてあった」




きゅっと拳に力が入る。


正しい歴史を伝えていたのが魔導一族だと言うことが分かったけれど、それは私にとって悲しい内容だった。




「奴隷…?どういうことですか?」


アレクの声が険しくなる。




「……当時、魔石はまだ発掘されていなかった。新たな生活エネルギーを求めていた初代国王は、聖域から魔法の力を授かった魔導一族に目をつけた。東の国と共謀して拐い、その力を国のエネルギーとして利用した。逆らうものは……身内を人質にとって脅し、それでも屈しないものは…殺した」




「そんな事が許されるのですか、仮にも王でしょう」




冷静にアレクが言葉を返すが内心憤っているのだろう、声が震えている。




「王だからこそ、自分の国民の利益を優先させ国民ではない魔導一族を犠牲にせざるをえなかったのだと書いてある。おそらくこれは初代国王の日記だろう、他にも魔導一族への謝罪や、苦悩が記されていた」




「…………残った魔導一族は自分達の魔力を駆使して、結界を張り隠れすむことになったんですのね」






親を、兄弟を、友人を、大事な人を、住む場所も失って。


逃げて逃げて。


私には想像することしかできないけれど、きっと私だったら…悔しくて苦しくて生きることを諦めていたかもしれない。心がとても、痛い。


胸を締め付けられる、というのはこう言う痛みを言うのだろうか。








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