第35話 父と息子
静かな書庫。
本棚の奥にいけば、私一人しかいないんじゃないかという錯覚に落ちる。
ちらりと近くの本棚で歴史書を調べているクラウドの様子を見ると、思い切り眉間にシワが寄っていた。
よっぽどストレス溜まってるのかなぁ…?
「クラウド様?」
声をかけるとびくりと小さく肩が震えた。
あ、ごめん、脅かすつもりは無かったんだ。
「…すまない、アザミ殿。考え事をしてしまっていた…時間は有限だというのに」
クラウドはため息混じりにそう呟くとパタンと本を閉じる。
「確かにそうですわね…有限だからこそ優先すべきことがあるのではないでしょうか?」
「あぁ、そうだな…もっとしっかりと書物を探して歴史の確認を―」
「そんなものは一先ず横に置いといてくださいな」
「…………は?」
うっわ、思い切り怪訝な顔してる。
そりゃそうだよね、ここにいる目的は魔導一族の歴史と事実を確認する為なんだから。
でも、私は破滅フラグ回避の為でもある
アルフレッド王に認められたいが為に、魔導一族を飼い殺しにしたなら、親子で分かり合えたら破滅フラグも折れる!
「そんなに国王陛下がお嫌いですか?」
私の質問にクラウドは視線をさ迷わせる。
「そんなことは、ない。王としては尊敬している」
「父親としては?」
途端にクラウドが口ごもり、表情を曇らせる。
この人顔に出やすいタイプだなぁ…
王族足るものポーカーフェイス位できないと外交とかやっていけないんじゃないかな?
「時間は有限です、ですから後悔なく向き合ってお話しされた方が宜しいのでは?」
「……父は、私の話など聞かない」
「話してみたことあるんですか?」
「いや、無い」
「…無いのに分かるんですか?」
「……私が、そういう話をしようとすると不機嫌になられるんだ」
「……………それを、国王陛下には?」
「王に不機嫌になるな、私の話を聞け等言えるわけがないだろう」
つまり、ろくに話もしてないのに不機嫌になられたから諦めた、と。
「不機嫌じゃなかったら?」
「顔をみればわかる、あの顔は不機嫌な時の顔だ」
駄目だ、らちが明かない。
「君には、この気持ちなどわからないだろうが…」
「何当たり前のこと仰ってるんですか、人の心を読むなんて芸当出来なくて当たり前です。だから言葉にするんです」
「言葉にすることすら…させてもらえなかったら?」
「言葉にしてから仰ってください。何かをする前に、そのあとの心配なんて不要ですわ。まずやってみて、ダメだったら次を考えればいいです。思い悩むのなんてその後でいいんです」
行動に移してもいないのにあーだこーだいったって何も変わらない。
まず、行動してみる。そこから得られるものが少なからずあるはずだ。
名付けて行き当たりばったり作戦!
胸を張って語って見せると、クラウドは目を瞬かせた。
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