第34話 前世の母
私は母親を一方的に恨んでいた時代がある。
まだ学生だった頃、ありがちなイジメにあった私は精神的に体調を崩しやすくなっていた。
心配した母親は病院をつれ回した。
けれど、学校にいる時以外は体調を崩す事もなく。
仮病を疑われながら訪れた、何件目かの診療所で「○○○○障がいですね、精神的なものです」と言われた。
後日、些細なことで口論になった時に母が私に怒鳴り散らした。
「アンタは障がい者だから普通じゃない!」
自分で言うのもなんだが、その時は全ての感覚が世界から遮断された気がした。
今思えば、あの感覚はショックを受けていたんだと思う。
それから母親の小さなことで苛立つようになった。
詳細は省くが気がつけば母親が大嫌いだった。
大人になり独り暮らしをしてだいぶ楽になった頃、たまたま実家に帰ったときに母がポツリと漏らした。
私が診断を受けた同時期、親戚の介護で辛い思いをしていたこと。
母の大事な友人が立て続けに不幸に見舞われていたこと。
母の職場で、母が嫌がらせを受けていた事。
それでも家族を守ろうとしていたこと。
私も傷付いていたけど、母もたくさん傷付いて必死だったことを知った。
知った上で、母を憎むことはもうできなかった。
やっぱり、私はお母さんに守られて、愛されて生きてきたんだなって思えるようになったから。
愛されてる自信がついたから、多少のことがあっても許せるようになったんだよなぁ
分かり合えないと心を閉ざしてしまうことは簡単だし、楽だ。
でも立ち向かう、理解しようとすることはかなり難しい。
何度も何度も、怒りや恨みに飲み込まれそうになったこともある。
けれど、私の得た回答はシンプルで
やっぱり、大好きな人には幸せでいてほしい。
それだけだった。
その為に出来ることは簡単だ、自分が愛せばいい。もちろん、恨みも悲しみの感情もある。
でも、それを越えて相手を愛することができたら自分も前に進めると思ったんだ。
現に私の世界はがらりと姿を変えた。
自分が変わらなければ、自分の目に見える世界も変わらない。
結局、親孝行は出来なかったけど…。
考え方を変えてからお母さんの笑顔が増えたのは、嬉しかったなぁ……。
だから、クラウドにもアルフレッド王にも何か切っ掛けがあればきっと家族関係は修復出来ると思う!
それがなんなのかはまだわからないけど。
家族を恨まなきゃいけない辛さは、私がよく知ってるから。
だから余計に、気になったのかもしれない。
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