第33話 親子

来訪者はクラウドだった。




「アザミ殿、これから書庫に行けるよう手筈を整えた。今日こそは正しい歴史を確認できるといいが」


「ありがとうございます、クラウド様」




クラウドに連れられて書庫までの廊下を歩く。


その途中、クラルテ国の国王陛下と出会った。




「クラウド、アザミ殿。これから書庫か?」




クラルテ国の国王、アルフレッド・椿・クラルテ。


40代後半と聞いている。


ゲームの中ではイラスト化はされておらず、シルエットのみだったので対面することになった時どんな方だろうと緊張していた。


案内された玉座の間。


そこにいたのは、ダンディーな雰囲気のおじさまだった。




刑事ドラマとかで中年刑事が、サングラスかけて犯人の部屋見張ってたりするじゃない?


そのイメージがぴったり似合う男性だった。




王妃様はアレクが産まれてすぐになくなっている、それから男手ひとつで国も息子たちも育ててきた立派な国王様だ。




人当たりも良く、国民にも愛されていると侍女さんから聞いたこともある。


私も顔を会わせると何かと声をかけてくれるので、一族のおばちゃん並みの親しみやすさを感じていた。






「はい、国王陛下。ご配慮いただきありがとうございます」


感謝の意を込めて頭を下げると、アルフレッド王は目尻のシワを深くして微笑む。




微笑んだ時の顔はアレクとそっくりだ、さすが親子。




「クラウド、アザミ殿を手伝うのは構わないが自分の将来をもう少ししっかりと考えろ。まだアレクセレイの方が堅実的だぞ」


「…………申し訳ありません、国王陛下」


「それでは、アザミ殿。何かあればいつでも言っておくれ」


「御気遣い感謝いたします」




アルフレッド王を見送ってから、クラウドと共に書庫に入る。




書庫に入ると私は前回調べていた書物のある棚へと向かった。




クラウドはまだ扉の辺りに立ったままだ。悔しげに唇を噛み締めている。


本棚の本を手に取り、調べる振りをしながら小さくため息をついた。




以前にも述べたが、クラウドはアルフレッド王を尊敬する反面、憎んでいる。




ゲームの中ではアルフレッド王は、王であることに必死で'父親'であることを放棄したと描かれている。


つまり、クラウドは部下としての愛情は受けたが、息子としての愛情を受けられなかった。




それゆえに時折アルフレッド王が見せる父親としての顔に、わざと「国王陛下」という呼び方で答える。


要はひねくれ反抗期なのだ。




加えてアルフレッド王は無自覚でクラウドとアレクセレイを比較するような言葉を言う。


それがクラウドの自尊心を傷付けいることも知らずに。






何か切っ掛けがあればきっと分かり会えると思うのよ…心から全部憎んでるわけじゃないんだから。




それに、私も昔はそうだった。


もちろん、前世での昔だけど。




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