第31話 族長として

「僕も先程…その同じ問いを彼女にしてしまいた。僕らの認識している魔導一族の歴史とどうも食い違っているようなのです」




「食い違い……?」




首をかしげるクラウドにアレクは先程私が答えた内容を説明する。


説明を聞き終えるとクラウドは指先を額に当てて目を伏せた。




「…どちらが真実なのか、証人も居ない為確認するすべがない。と言うことか」


「はい。仮に魔導一族に伝わる歴史が正しいのであれば、僕らの先祖は魔導一族に対して…取り返しのつかないことをしてしまったことになります」


「…古い文献が書庫にあったはずだ、調べてみることにしよう」




驚いた。


私の言い分を信じてくれようとするのか、この人たちは。




急に歴史上の悪人(悪いことはしてないと思いたい)一族が現れて、自分達が信じてきたものと異なる歴史を口にした。


普通なら不敬罪やら、反逆罪等で罰せられてもいいレベルなのに。






「あの…ありがとうございます」


私が礼を言うと、二人の王子がこちらを見た。




「私の言葉を、聞いてくださって。否定しないで下さって」


「…まだ、裏付けが済んでいない。その間、アザミ殿には申し訳ないが城に滞在していただく。もし…魔導一族の歴史を証明することが出来なければ…投獄される可能性もあるぞ?」


クラウドの言葉にアレクが目を伏せる。




「それでも。私は一族を信じています、もし一族が聖域を狙っていた過去があるならば…その責任は私が取ります」






もしかしたら、聖域を手にしようとした過去もあったかもしれない。


それでも、今を生きる一族の人たちは支え合って一生懸命生きている。


アザミ様になって、日は浅いけれど…一族の皆と過ごした時間は私にとって既に宝物だ。




一緒に畑仕事して、ご飯食べて、井戸端会議もして…楽しかったし、嬉しかったから。




一族の皆は、私の家族だ。


そう言えるほどに暖かい人ばかりで。




もし、昔の一族の責任を取らねばならないとしたら。


私は族長として、その責任を取ろう。


大好きになった人達を守ろう。


そう思えるほどに、一族の皆は私に愛情をくれたから。








クラウドがまっすぐに私を見る。


その目は、どこか悲しげで羨望を含んだような眼差し。




「…わかった、君の覚悟に第一王子として誠心誠意応えよう」






この日から、私とクラウド、アレクは三人で正しい魔導一族の歴史を調べることになった。






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