第30話 第一王子

クラルテ国のアレクルートは魔導一族の破滅ルートにはあまり関係のない唯一のルートだ。


しかし、兄のクラウド・椿・クラルテ。




こいつのルートは、魔導一族の破滅ルートに繋がっている。




第一王子にして次期国王のクラウドは、自分に厳しい父親を尊敬する反面、憎んでもいた。


なぜ自分を理解してくれないのか、と。




そして彼は自分を認めさせたいがゆえに、魔導一族を全て捕らえて飼い殺しにするのだ。


父である国王に、自分の力を見せつけるように。


しかしヒロインによってその心は救われ、自分の事を見つめ直すことが出来てヒロインと結ばれ立派な王になる。




けれど、魔導一族は飼い殺しのまま。




クラウドルートをプレイして「どこが立派だよ!ヒロインちゃんも飼い殺しを許すなよ!」と画面越しに突っ込みいれたのを覚えている。


因みにこのルート、初手でアザミ様はクラウドに引きずり出され、処刑される。






嘘でしょ…ヒロインも現れてないのに、クラウドルート……入っちゃった?


このまま処刑されちゃう!?






「兄上、何か?」


クラウドを警戒する私の横で、アレクは声をかける。




「その方が魔導一族の女性か?」




クラウドの声色はアレクと似ていてあくまでも優しい雰囲気がある。


「ええ、そうです。彼女はアザミ、昨晩のコドモドラゴン密猟者討伐に貢献してくださって、僕を助けて下さった方です」




私が……アレクを助けた?


いやむしろ密猟者の手から助けられたのは私の方なんだけど…


ひょっとして、私が良いことしたみたいに伝わっているのだろうか?


ただアレクと協力しただけなんだけど…




アレクの方をちらりと見ると、また微笑まれた。




この子、将来韓流スターになれそう。微笑みの貴公子とか呼ばれてマダム層を微笑みで瞬殺できるよアレク。




「お初に御目にかかります、アザミと申します。クラルテ国の第一王子にお会いできて光栄ですわ」




膝で寝ているルイを起こさないようにそっとソファに寝かせてから、立ち上がりクラウドに向かい合うと、失礼がないようにドレスのスカート軽くを持ち上げて礼をする。




私は貴族でも王族でもない、前世でも今世でも上流階級の挨拶なんて知らない。


前世でみたアニメの見よう見まねである。




多分こんなだった、もし失礼だったら土下座で謝る!




「挨拶が遅れて申し訳ない、クラルテ国第一王子、クラウド・椿・クラルテだ」




王族的には先程の挨拶で良かったのだろうか、クラウドも挨拶を返してくれる。




「…ひとつ確認したいんだが、アザミ殿は、聖域を手に入れようとされているのだろうか?」




私はぴしりと動作を止める。




この王子、素直なのだろうか…無礼だけどバカなのだろうか。




クラルテ国に伝わっているのはアレクもさっき言った通り、東の国に伝わっているものと同じで魔導一族が聖域を狙ったために退治された、と言うものなのだろう。




仮に聖域を支配するために私が姿を表したとするなら、馬鹿正直に「はい」なんて絶対言わない。




「兄上」




アレクも同じ事を思ったのだろう言葉を挟む。




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