挿話 シオン-似てる-
「……何か?」
やたらと此方を見てくる視線に不機嫌を隠さずに尋ねる。
「ごめんなさい、やっぱり双子なんだなと思って…二人とも美味しそうに召し上がるお顔が似ていたのでつい」
そう答える彼女に思わず昔の姿が重なった。
それはまだ、彼女が幼い少女だった頃。
◇◇
「しぃはレオとそっくりね」
拙い言葉で彼女はそう言った。
「何処が?髪も違うし、性格も違うだろ」
子供相手に大人げないと自分でも思う。彼女の年齢は僕の半分だ、けれど一族の中では一番年齢が近いという理由で、少女の両親に頼まれて双子の兄と一緒に面倒をみさせられていた。
双子の兄においては力仕事の手伝いまでしている。
「あら、髪なんて切ってしまえば皆に違うし、全く同じひとじゃないだもん。せーかくが違うのは当たり前よってお母さまがいってたわ」
「じゃあ似てないだろ?」
「んーん、にてるの。そっくりよ」
訳がわからない。所詮は子供の言うことだ。
「しぃとレオみたいに、にてるのってうらやましいわ」
思わず顔をあげた。
少女の顔が年齢より大人びて見えた気がした。一瞬だったけれど。
「…そう、か」
彼女の言葉を心のなかで、繰り返す。
金髪の一族の中で白銀の髪を持って生まれてしまった僕。
回りは似てない、本当に双子なのかと僕を否定する。僕だけが違う。
僕はただそれに耐えた。そして諦めた。
誰かが認めてくれることを、認められるために何かをすることを。
そんな時だった、この子がこんなことを言い出したのは。
子供だからそんな難しいことは絶対考えていないだろう
でも…何気ないその言葉を嬉しいと思ってしまった。
「しぃ……?どうしたの?」
「ちょっと…うるさい、あっち向いてて」
涙ぐんだ顔をみられたくなくて、片手で少女の顔を鷲掴みしてしまった。
「は、離してよぉっ!レオッ、レオッ!しぃがいじめるー!」
「なっ……!?おいこら何してんだよ!」
「愛の鞭」
「嘘つけ!」
双子の兄が駆け寄ってくるまでに何とか顔を戻そうと努力した。
◇◇
そんな事もあったな…と思い出す。
少女の面影を残しながら、美しく成長した彼女はそんな事覚えてもいないだろう。
現に、再開した時、私の事など忘れていたようですし…あれから何年も経ちましたからね。
それでも、貴女の言葉に救われたのは事実なんです。
なんて、絶対に言ってやりませんけど。
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