第29話 真実の行方
「……アザミは魔導一族、ですか?」
私の髪を物珍しそうに撫でながらアレクは首をかしげた。
どう、答えるのが正解……?
必死で思考を巡らせる。
「…だとしたら、このまま捕まえて…国のために利用しますか?」
声が震える。
肯定と取られてしまうだろう…でも、私に話術や駆け引きの才能はない、むしろ苦手だ。
「いいえ」
アレクはゆっくりと首を横に降る。
「聞きたいことが、あります。魔導一族は聖域を支配しようとしていた、というのは事実ですか?」
その言葉に思わず顔をあげると、真剣に私を見つめてくる瞳と視線が合う。
「……百年以上前のことは、分かりません。知ってる人が…いないから…。でも、今の私達はそんな事考えていません!ただ、安全な土地で自由に暮らしたいだけです」
「安全で…自由に?」
視線を反らさないまま私は頷く。
「私達一族の間では、一族の持っていた魔法の力をクラルテ国と東の国に狙われて、姿を消すしかなかったと伝わっています」
アレクは暫く私の目を見つめていたが、申し訳なさそうに頭を下げた。
「…不躾な質問をしてしまい申し訳ありません、事実が分からないにしろ言葉を選ぶべきでした」
慌てて気にしないでくださいと告げると、お優しいのですねと微笑まれる。
なんだろう、出会ってから何回も微笑まれてる気がする。
私は小さい子供のように思われてるんだろうか、目が合ったらとりあえず笑っとけ、みたいな。
「僕らはお互いに理解が足りないようですね……、もっとアザミのことが知りたいです」
ん?魔導一族のことを…ってことかな。
知ることは、理解しようとすることはお互い歩み寄るための、大事な第一歩だと思う。
そう思ってもらえるなら、そしてもし…知ってもらって受け入れてもらえたら。
絶対、嬉しい。
私の大事な一族の皆を…大事に思ってもらえたら嬉しいと思う。
うん、高望みだとは思うけどね。
「ありがとうございます、アレク。そう言っていただけて嬉しいです」
私がアレクに微笑み返した時、ドアがノックされる音が響いた。
返事をすると、アレクと似た顔の青年が入ってくる。
グレーブルーのベリショートヘア、目元は細く右目の泣き黒子が色気を演出している。
その瞬間、私の記憶がざわめく。
心音が素早く警告する。
彼もまた、一族を破滅に追いやるルートを抱えた攻略対象者だと。
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