第28話 お届けにあがりました
朝食を終えて、侍女さんに淹れてもらった紅茶を飲んでいると、カコンと音がして換気用の窓からルイが戻ってきた。
目印もなにもなかったのに私の所に戻ってくるとか名犬!
いや、犬じゃないから名ドラゴンだ!
「ルイ!お帰りなさい、大丈夫だった?」
「みゃう」
ルイを抱き締めてよしよしと頭を撫でると、すりすりと擦りよってくる。
暫くお互いにぎゅっと抱き締めあった後、ルイは手をずいっと差し出してきた。
その手にはなにやら宝石のような綺麗な石が紐でくくりつけられている。
それを外すとルイはちょいちょいと私の耳を指差した。宝石と耳を交互に指差す。
「……耳に当てるとか?」
「みゃ」
首をかしげて尋ねるとルイはこくこくと頷く。
巻き貝だと海の音が聞こえるとかよく聞くけど、宝石も何か聞こえるのかな?
そう思って耳に当ててみると、聞こえてきたのは知った人達の声だった。
『アザミ様、無事!?怪我してない!?ルイからクラルテ国に捕まったって聞いて…俺達役立たずな護衛で本当に…ごめん』
『レオン、ルイの記憶を魔法で辿りましたが、第二王子はアザミ様に害は加えないと思いますよ。
貴女も貴女です、もっと危機感を持ちなさい。どれだけ私達がしんぱ………探したと思ってるんですか』
『兎に角、絶対迎えにいくから!じいちゃんと相談して色々準備してんだ。クラルテ国に忍び込む準備をな』
『城に忍び込むのでそれなりの準備と期間が必要です。その間、連絡役をルイに頼みました。勝手な行動は取らないで、大人しく私達が行くまで待っていなさい』
『もし何かあっても、まず自分の身を大事にしてくれよ?俺達はアザミ様が大事なんだ、一族の皆も心配してる。それからシオンの言うとおり少しだけ危機感、持ってくれ。密室に男と二人きりになったりするなよ?それじゃ、また連絡するから!』
そこで声は途切れた。
役目を終えたらしい宝石は、ぽひゅっと音を立てて煙になり消えてしまう。
これも魔法の一種なのかな、ボイスレコーダーみたいで便利そう……使い方わからないけど。
でも、声を聞けて良かった…。心配かけてごめんなさい…
紙とペンがあれば返事をかいてルイに届けて貰おと思い、膝の上で寛いでいたルイを見ると寝息を立てていた。
疲れてしまったのだろう、こんな小さな子に無理をさせてしまって申し訳ない…
でも、ルイだけが連絡手段だ。
「ごめんね…ルイ…」
すぴすぴと寝息を立てるルイをそっと撫でながら、私は謝ることしかできなかった。
◇◇
寝息を立てるルイに私のローブをかけてあげ、よしよしと頭を撫でていると控えめに部屋のドアがノックされた。
返事をすると、アレクが入ってくる。
「アザミ、おはようございます。よく眠れましたか?」
「はい、もふもふ毛布のお陰で眠れましたわ」
苦笑いしながら告げるとアレクは少し驚いたように目を開いた後、安心したように微笑む。
「それは良かったです……おや、ルイさんはおやすみのようですね」
「えぇ…疲れていたみたいです……あの………」
名前を呼ぶとアレクは優しい微笑みを浮かべながら首をかしげて、私の次の言葉を待つ。
少し気まずく感じて私は言葉を発することが出来ずに視線を反らしてしまう。
何を言えばいいんだろう、私を村に返してください…いやダメだ。一族の皆を危険に晒してしまう。
私をどうするつもりですか?とか…拷問にかけますとか言われたら………怖すぎて想像したくない!
…魔法の実験台にでもするつもり、とか…私そんなに高度な魔法使えないからね!?
一人でぐるぐると考えていると、アレクの指先が私の髪に触れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます