第27話 クラルテ国

きっとこれから拷問が待ってるに違いない…!


コンクリートで固められそうになりながら、「死にたくなかったら一族の場所を吐け」とか言われるんだ…!






アレクにクラルテ国に連れてこられた私は「今日はここで休んでください」と、ある部屋に案内された。




それは私の思っていた拷問部屋ではなく、豪華な客間だった。


ふかふかのベッドに、豪華な絨毯。二人掛け用のソファに、ガラスのテーブル。


まるで一流ホテルのスイートルームみたいだ。




…一流ホテルのスイートなんて、前世の旅番組でしか見たことないけどね




「何か必要なものがあれば侍女を呼んでくださいね」


そう言ってアレクは部屋から出ていった。




ルイ…ちゃんとお祖父様達の所に戻れたかな?




不安に思ながら窓の外を眺める。


嵌め込み式の窓はびくともせず、空気を入れ変えるために上の部分だけが少しだけ開くようになっている。


ルイがいつ戻ってきてもいいように、換気用の窓を開けるとそっとソファに腰掛けた。




ここは言わば敵地…気を抜いちゃダメ!


いくらアレクが優しくても、破滅フラグは確実にやって来るかもしれないんだから。




ぎゅっと拳を握り締めて夜が明けるのを待つ。


待っていた、つもりだった。












◇◇




おはようございます、朝です。


私の頭はスッキリしています。何でかって?


敵地ですやすや寝こけてしまったからだよ!!




侍女さんがかけてくれたのか体は毛布に包まれててとてもぬくぬくだ。




さすがお城。これ絶対高い毛布だよ、手触りがいいしすごくもふもふしててぬくぬくで…いくらでも惰眠を貪れそう…




毛布のぬくぬくに再び目を閉じてしまいそうになって、べしべしと自分の頬を叩く。




いや寝ちゃダメじゃん!敵地で眠りこけるとかどんだけ神経図太いの私!!




被りっぱなしだったフードを脱いで、毛布を丁寧に畳んでいると部屋のドアがノックされた。


返事をすべきか迷っていると、スッとドアが開いて侍女さんが二人、入ってきた。




「お目覚めでしたか、アザミ様。お着替えとお食事をこちらでご用意させていただきました」




「えっと…お手数お掛けします、毛布もありがとうございました」




とりあえずお礼が先だ。


今のところ害を受けるとごろかめっちゃ良くしてもらってる。


何かしてもらったらありがとうをいうのは人間の基本だよね、うん。




私が頭を下げると侍女さん達は暫く固まったあと、柔らかい微笑みを浮かべてくれた。


ありがとうは魔法の言葉かもしれない。




侍女さんたちが朝食の支度をしてくれている間に、私は用意された服へと着替える。




服っていうか……これ、ドレス?




用意されたのは水色を基調とした生地にレースが上品にのあしらわれたドレスだった。




派手すぎるわけじゃないけれど、一般人が着れる服じゃないよこれ…まぁ、用意してもらったからには着るけど。


というか、貴族とか王族の女の人っていつもこんなの着てるんだ……汚したらクリーニング代いくらかかんのよ






「アザミ様、お似合いです。まるでお伽噺の妖精のようですね」


「あ…ありがとうございます」




私ごときが妖精とか……妖精に失礼だと思う。




「こちらへどうぞ」




着替え終えて軽く髪も整え、案内されるがままにソファに座る。


テーブルの上には一人分の朝食が綺麗に並べられていた。




至れり尽くせりか!


ここは敵地…敵地…なん、だけど…食べなかったら…用意してくれた人に申し訳ないよね…




朝食の匂いに空腹を自覚する。




食べ物を粗末にはできません!




そう自分に言い訳して、私は用意され朝食に手をつけた。




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