第25話 残念なことに知名度は高い

ぎゃーっ!これは、ヤバイです、ピンチです!


さっきのはやっぱりフラグだった…


………アレクが魔導一族を知らないなんて奇跡は……




「その金色の髪……アザミは魔導一族の方なのですか?」




起きなかったー!デスヨネー


わかってた、分かってましたとも。


こうなったら全力疾走するしかないっ!もともとそのつもりだったし!




私がスカートを膝まで捲し上げダッシュする決意した時だった。




のっそりと熊のような大きな影がいくつも現れた。




「あぁん、なんだお前ら?」


「お頭、こいつらコドモドラゴンを連れてやがる!きっと牢屋から逃がしたんだ!」


声と共に月が照らしたのは熊のような、人相の悪い複数の男達だった。






「貴方達が…コドモドラゴンを密猟している、密猟者ですか」


アレクが私の傍に来て、庇うようにぎゅっと肩を抱き寄せる。


「大人しく自首するならば僕の権限で罪を軽くして差し上げますが…いかがですか?」




「はぁ?何様だぁ、おめぇ」


「おい…あの女、金髪だ!魔法を自在に操るっていう魔導一族かもしれねぇ、金になるぜっ」


「ほぉ、おい坊主、その女をこっちに寄越せ。そしたらお前の命だけは助けてやる」




お頭と呼ばれた厳つい男が私の方に視線を向ける。




魔導一族が隠れて百年くらいたってるはずなのに、知名度高すぎじゃない!?


一発でバレたよこんにゃろうっ


私、このまま売られる!?




不安になりアレクの上着をぎゅっと掴むと、アレクは私に向けて優しく微笑んだ。


「大丈夫ですよ、アザミ。貴女を渡したりはしません」


「アレク…」




「おうおう、女の前で格好つけてんじゃねぇよ優男!大人しくこっちに寄越せっていってんだろぉ?」




男が私に向けて伸ばした手は、急にぴたりと動きを止める。


いつの間にかアレクが短剣を男の喉元へと突きつけていた。




…何処から出てきたんだろうこの短剣…服の中に隠し持ってたのかな?




こんな状況でそんな事を考える私は能天気だなー、なんて他人事の様に思ってしまう。




「汚い手で彼女に触るな………クラルテ国、第二王子アレクセレイが命じる、密猟者達を捕縛せよ!」


冷たい声が聞こえたかと思うと、アレクが声をあげて命令する。




その瞬間、私達を取り囲んでいた密猟者達をさらに取り囲む形で、剣を構えた騎士たちが姿を現した。


騎士たちの鎧にはクラルテ国の紋章。


彼らはアレクを助けに来たクラルテ国の騎士たちだった。




「かかれ!一人たりとも逃がすな!」


その号令と共に騎士たちは密猟を捕まえていく。


あっという間に、密猟者たちは全員縛り上げられてしまった。

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