第24話 フラグ回収

アレクセレイ王子が鉄格子の隙間から手を伸ばして鍵を手にする。


「お疲れ様でした、アザミ大丈夫ですか?」


手を伸ばされてそっと頬を撫でられた。




私そんなに疲れた顔してるかな?




「大丈夫ですわ。ほらアレクセレイ王子、鍵を開けましょう」


「………アレク、と呼んではいただけませんか?」


いつの間にかアレクセレイ王子の顔が近い。




…な、何事!?




「アザミ…是非アレクと呼んでください」




耳元に唇を寄せて懇願するように囁く声に、頬が熱を持つ。




うわわ…流石、乙女ゲームの攻略キャラクター!囁き方、百点です!


是非ドラマCDとかで発売してください、買います!公式に貢ぎます!




じゃなくて!


…名前、わざわざ愛称で呼んでほしいって…友達がほしいって事なのかな?


王子様だから、中々気が楽に出来る友達とかいないとか……。


もし友達になったら、魔導一族を守るために何か知恵を貸してくれるかも!






「分かりました、アレク」


「ありがとうございます」


アレクセレイ王子――アレクは嬉しそうに微笑むと私から離れ、鉄格子に腕を回して鍵を器用に開ける。




そして鉄格子の扉を開けると、そこからルイが飛び出る。




「みゃ、みゃ、みゃーうっ!」




見張りの気を引くようにルイは思い切り鳴いた。


私とアレクは物陰に隠れて様子をうかがう。






「なっ…!?どうやって逃げ出しやがった!こら、戻れ!」




ルイを捕まえようと見張りの男が窓枠のついたドアを開けて、牢屋の方にやって来る。


ルイに手を伸ばした瞬間、私とアレクは飛び出して男に思い切り体当たりした。




「ぐえっ」




牛蛙が踏まれたような声をあげて、男が倒れる。


頭をぶつけたのか動かない。




し、死んじゃった!?嘘!?




慌てて呼吸を確かめると息はある。気絶しただけのようだ…良かった。




「アザミ、今のうちです」




アレクの声に牢屋の中に残っていたコドモドラゴン達も引き連れて、扉の外へとでる。




外に出ると月の明かりが私達を照らした、振り返ると私たちが出てきたのは洞窟だった。




密猟者はこの洞窟を拠点にしていたらしい…道理で暗くてじめじめしていたはずだ。


早々に出られて良かった。




「アレク、早くここから離れましょう」


アレクの方を見ると、こちらを見つめ目を見開いている。




「アザミ……貴女、その髪は…」




髪……?




そう言われてはっとする。


私の髪は、反射して視界の隅でキラキラと輝いている。


洞窟に比べて、外は明るい。




月の光がこれでもかと言う程、魔導一族の象徴である金色の髪を、ローブを、明るく照らしていた。


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