第23話 ルイは役に立ちたい
とはいえどうやって此処から逃げ出そうか…
鉄格子の間隔は狭く、コドモドラゴンでも隙間を通ることはできそうにない。
何か牢屋の鍵を開ける道具とか落ちてないかな…?
針金とか…あ、ヘアピン…なんて便利なものはつけてませんよ私。
というかつけててもピッキングなんて出来ないよ…
牢屋の中と、外をよく見回してみると蝋燭で点々と照らされたその先に、窓枠のついた木製のドアが見えた。
窓枠の外には見張りがいるようでちらちらと頭が見えている。
見張りは……一人かな?
お、ドアの内側にぶら下がってるの鍵っぽい!
ドアの内側に引っ掛けられてるのは、この牢屋の鍵かもしれない、あれが手元に届けば少なくともこの牢屋から出られる!
「アレクセレイ王子、私のまほ……魔石の力を使えばあの鍵を取れると思いますわ」
「アザミはそんなことまで出来るのですね…凄いです。ですがこの牢から出られたとしても、扉の前の見張りをなんとか交わさなければなりません…」
「私が囮になってあの人を誘き寄せるのはどうでしょう?アレクセレイ王子は物陰に隠れてて、あの人が隙を見せたらコドモドラゴン達と飛びかかる、とか」
私の提案にアレクセレイ王子は険しい顔をする、薄暗くて見えないけど眉間に皺を寄せてるような気がした。
「女性を囮にするなどそんな卑怯な真似は致しません。僕が囮になります」
「でも、アレクセレイ王子は王族ですから…」
「貴女を危険に晒す位なら、僕は王族なんて立場は捨てますよ」
はいぃ…?何を言い出すアレクセレイ王子!
ここから出る作戦の為だけに王子に王族の立場を捨てさせたりしたら、国王様に恨まれるかもしれないじゃないっ!
かといって王子を囮にしましたなんて事が知られたら、それこそ一族ごと全滅させられちゃう…破滅ルートまっしぐら…
そんなのお断りします、全力で。
私がなんとかアレクセレイ王子を思い止まらせようとしたその時、ルイが声をあげた。
「みゃあ、みゃう」
しゅたっと手をあげている、やっぱり可愛い。
「みゃあ、みゃー、うみゃっ」
何か喋っているようだ。アレクセレイ王子ならわかるだろうかと思って視線を向ける。
「この子が、自分が囮になると言っています」
「え…ルイが?」
「アザミの役に立ちたいそうです」
ルイの方を見れば、その通りだというようにこくこくと頷く。
「危ないと思ったらすぐに逃げるんだよ?無理しちゃ駄々からね?」
「みゃあ」
「…じゃあ、お願い」
私がお願いするとルイは任せろというように胸を張る。
それを確認すると、ドアの内側に引っ掛けられてる鍵の方に指先を向けて力を込める。
指先から糸を伸ばすイメージで、魔力を集中させ鍵を少しずつ手前へと動かしていく。
少し時間はかかったけれど、無事に鍵を鉄格子の前、手を伸ばせば届く距離にまで移動させることができた。
「……ふぅ」
魔力を操るというのは意外と繊細な作業で神経を使う、なんとか目的の第一段階を終えて私は息をはいた。
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