第21話 使える魔法
蝋燭の明かりではっきりと顔は見えないけれど、多分攻略対象のアレクセレイ王子で間違いないと思う。
薄ぼんやりみえる彼の衣服には、ゲームのなかで見たようなクラルテ国の紋章が入ってるし。
「貴女のお名前を伺っても宜しいでしょうか?」
アレクセレイ王子は穏やかな口調で話し掛けてくる。
もちろん、魔導一族の族長です!なんて自己紹介は出来ないので名前だけ告げる。
「私は…アザミ、です」
今は暗がりでみえないけど、明るいところで髪見られたら魔導一族ってバレる!
ていうか、私、身バレするローブを着ちゃってるんですけど…めっちゃピンチ!
なるべく暗い壁の方に身を寄せる。
すると、腕の中が苦しかったようでルイが飛び出してしまった。
「ルイ…!」
「おや…コドモドラゴン、また増えましたね」
へ…?また?
不思議に思い顔をあげると、アレクセレイ王子の回りにコドモドラゴンが何匹か寄り添っているのが見えた。
仲間を見つけて嬉しいのか、ルイはそちらの方へと歩み寄っていく。
「あの…アレクセレイ王子、この子たちは?」
何故聖域にしか居ないはずのコドモドラゴンが、こんなところにいるのか。
そして、何故、王子のアレクセレイがこんなところにいるのか。
「密猟者が捕まえてきたコドモドラゴン達です……奴らは、聖域付近の森のあちこちに罠を仕掛け、餌を取るため聖域から出てくるコドモドラゴンを捕まえて…悪どい貴族や官僚に売り付けているようなのです」
アレクセレイ王子の話をによると、私とルイはその罠に掛かったことになる。
「僕は父上…国王陛下の勅命を受けて、城の騎士たちと共に密猟者達を捕まえようとし動いていました。ですが…怪我をしたコドモドラゴンを見つけて、気が付けばここに…」
私のように穴に落ちて、ここに来たと言うことらしい。
「怪我をしたのは、どの子ですか?」
「この子です」
アレクセレイ王子がわらわらと固まっているコドモドラゴンの一匹を抱き上げて、私に見せる。
その子の後ろ足は何かにぶつけたようで擦り傷が出来ていた。
これくらいなら……。
私はその子の傷口にそっと手を翳すと、手のひらに力を込める。
すると淡い光が傷口を包み込んであっという間に、傷は治癒された。
これは私がこの七日間で使えるようになった魔法だ。
アザミ様は大きい魔力を持っていたけれど、私は使い方を知らなかった。
まぁ、今までは普通の人間として生活してたんだから当たり前なんだけど。
それでお祖父様にそれとなく探りをいれてみた所、アザミ様はどうも魔法が苦手できちんと使えていなかったとの情報を得た。
でも使えたら便利だし何よりせっかく魔力があるなら役立てたい!
というかせっかくだから使えるようになりたい!
そう思って七日間で少しずつ魔法の練習をしていたら、簡単なものではあるが治癒魔法と物を数センチ動かす魔法が使えるようになった。
それがこんなところで役に立つとは思わなかったけど。
「……魔法、ですか?」
…おふ、忘れてた…魔導一族意外は呪文や魔石無しに魔法を使うことなんて出来ないんだった…
あ、もしや、自分から破滅フラグ立てた感じですか?
ぎこちない動作で顔をあげるとアレクセレイ王子が目を丸くしてこちらを見ていた。
…………これ、バレたかも…
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