第20話 王子様は攻略対象者

「アザミ様、ここから先は結界の外です。そろそろ戻られた方が宜しいかと」




シオンに言われて回りを見ると、私達は村を囲う結界の目の前までやって来ていた。




この結界は内側からは見えるが、外側からは見えないマジックミラーのような効果がある。


この結界で魔導一族は守られている、ただし一族の人間であれば外からも見ることは出来るし、中にはいることもできる。


外部の人間は見ることもできなければ、入ることも出来ない。




そしてどうやら聖域の生き物にも結界は通用しない様だ、ルイが迷い込んだのがその証拠だろう。




「ルイ、戻りましょう?」




声をかけるとルイはいやいやと首を横に振り、結界の外に向かって突進していく。


「結界の外は駄目よ、ルイ!」


「アザミ様!」




追いかけて私も外に出てしまう。


けれど、ルイはすぐに捕まえることが出来た。


レオンとシオンもすぐに追ってくる。




「アザミ様、無事か!?」


「えぇ、大丈夫ですわ!」




追ってくるレオンに返事を返して、腕の中で私にしがみついているルイの頭をそっと撫でる。




離れたくない気持ちは私も同じなんだけどな…




「ルイ、戻ろう?」


「みゃ……」




その時だった、足元でカチリと機械的な音がする。




「…え?」


「「アザミ!!!」」




急に足元に違和感を感じて、視線をやるとぽっかりと真っ黒い穴が開いていた。


一瞬聞こえた私を呼ぶ声に答えることも出来ないまま、私とルイは穴に吸い込まれた。














◇◇




一瞬とも永遠とも感じられる浮遊感。ジェットコースターに乗った時の感覚に似てる。


そう感じた瞬間、どさりと何処かに落とされた。




「うぅ…っ」


ちょっと腰打ったかもしれない…痛い。






ここは何処だろう……?


冷たくて硬い地面。暗くじめっとした部屋。


腕の中のルイを見ると、突然景色が変わったことに驚いて目をぱちぱちさせている。


可愛い…ってそれどころじゃない。




ゆっくりと辺りを見回すと、少し離れた所に蝋燭の火が灯っているのが鉄格子越しに見える。




……は?鉄格子?


何ここ、牢屋…なのかな


何で急にこんなところに…落とされたんだろう…魔法か何か?




「あの……大丈夫ですか?」


「わひゃっ…!?」




突然声がして思わず悲鳴をあげてしまった。




「申し訳ありません、驚かせるつもりは無かったのです」




恐る恐る声のした方を見ると、蝋燭の明かりに照らされた一人の少年がいた。


視線が合うとその少年は、私を安心させようとにっこりと微笑む。




「はじめまして、僕はアレクセレイ・椿・クラルテと申します。クラルテ国の第二王子です」




あっさりと名乗り、身分を明かしたその人は




……アレクセレイって…攻略対象者じゃん!






クラルテ国側の攻略対象者でした。




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