第17話 コドモドラゴン
「魔導一族が森の外にでて暮らすようになれば、また狙われるかもしれない…ならば安全な場所で今まで通り暮らした方がいいだろう」
お祖父様はそう告げるとゆっくり立ち上がる。
「アザミ、レオンにシオンも。今日は遠出して疲れただろう、ゆっくり休むといい」
そのまま部屋を出てしまった。
「……お祖父様は、もしかしたら森の外に出て暮らせる事を期待していたのかもしれませんわ」
「かもな。森の中に結界張って暮らすのって、鳥かごに閉じ込めてるみたいだって…じいちゃん、昔言ってたんだ」
レオンがポツリと呟く。
「鳥かごから一族を自由にしたいって思っていらっしゃったのかもしれませんね」
レオンの言葉に返すシオンの声は、少しだけ寂しそうに聞こえた。
◇◇
昨晩は良く眠れなかった…。
もしも、一族が外に出て自由に暮らせるのなら…その為に何が必要かと考えていたからだ。
一番大事なのは一族の安全。生活が脅かされないこと。
なんとか東の国とクラルテに掛け合って、害を成しませんって平和協定みたいなものを取り付けられればいいけど…魔導一族とわかった瞬間捕まえようとしない保証なんかないし…。
かといってこのまま森のなかで暮らすのは、やっぱり良くない…族長として一族の皆を、鳥かごに閉じ込めたままにはしたくない。
それで一族は守られたとしても、衰退してしまいそうな気がする…それじゃ元もこもないんだよ!破滅ルートのまんまじゃん!
「どうしたもんかなぁ…」
ドレッサーの前で髪を解かしながらついため息をついてしまう。
なんとか魔導一族の安全を確立できる為の取引材料があればいい……東の国もクラルテ国も迂闊に魔導一族に手を出せないような何か。
魔法は狙われる要因になってしまうのでそれ以外で。
「んー…………何か、ないかな」
考えながら何気なく視線を窓の外に向ける。
すると窓越しに目があった。
ゲーム越しにしか見たことのない、聖域にしか存在しないハズの生き物。
面長の顔、真ん丸の瞳、後頭部から生える真っ白い角が左右に二本。
短い手足、ぽてっとしたお腹、ちょこっと伸びたしっぽ。
コドモドラゴンと呼ばれる生き物が私の部屋の窓に、ベッタリとしがみついてこちらを見ていた。
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