第15話 お土産はさつまいも

私の決意の後、シオンが書店で情報誌と新聞を買ってきてくれていたとの事で、一度村に戻り今後についてお祖父様も含めて話し合おうと言う事になった。




そう決まれば、あとは村に戻るだけなのだが…


レオンがお土産を買いたいと言い出し、少しだけならと渋々シオンが許可したので私達は土産物屋に居た。




土産用の雑貨を眺めながらぼんやりと考え事をする。




出来れば攻略対象者を見付けておきたかったけど…今回は難しいかも。あんな騒ぎになってしまったし…


それにしても、あのチンピラを追い払った男の人…何処かで見た気がするんだけど……




先程の青年の特徴を思い出しながら、記憶を探ればその正体はあっさりと判明した。




あの人、攻略対象者の一人じゃん!




食事処でおじさん達が話題にしていた、王子を負かして護衛についた男――。


それがまさに先程チンピラを追い払ったその人だった。




名前は…なんだっけ、フルネーム…ファンからは『サクちゃん』て呼ばれてたのは覚えてるんだけど…


ていうか何で忘れてたの私!!見付けて様子を伺うつもりが関わっちゃったじゃん!


しかも最悪な形で!




頭を抱えて蹲りたい衝動に駆られていると肩をぽんぽんと軽く叩かれる。


「アザミ様、一人百面相してどうしたの?」




彼の片手にはお菓子の入った袋が握られている。


私が物思いに耽っている間に買い物を終えたようだ。




「いいえ、何でもありませんわ。少し考え事をしていて……あら、シオンさんはどちらに?」




つい先程まで私の真横に居たはずのシオンの姿が見えない。


護衛なので私を一人にして居なくなることは無いはずだ。


レオンが買い物を終えたので入れ替わりに、シオンも買い物に行ったのだろうか?




「なんか少し見たいものがあるんだと。ほら、あそこ」




レオンの指差す先には、少し離れたところで土産物を真剣な眼差しで選ぶシオンの姿があった。




「アザミ様は何か欲しいものとか無いの?」




そう聞かれて目の前にある棚を眺める。


棚には女性が好きそうなアクセサリーや髪飾りがディスプレイされているが、こう言ったものに特に必要性は感じない。




アザミ様の顔立ちってそのままで充分だから、着飾ったらゴテゴテしそうだし。


私自身あんまりアクセサリーとか興味ないんだよね……




「特にありませんわ」


「そう?じいちゃんに何か買っていったりとかは?」


「…お祖父様の好みが分かりませんし…これひとつで充分ですわ。せっかくいただいたので料理してお祖父様と美味しくいただきます、その方がお祖父様のリクエストも聞けますから」


そう言って、私は先程女の子から貰ったさつまいもを見せる。






「………アザミ様って、女なのに色気ねぇのな」




……は?


何故、突然貶して来たのこの子。




「色気………?」


「…あー…うん。そのままでいいよ、アザミ様は」




なんだろう、喧嘩売ってる?


私喧嘩売られるようなことしただろうか?




不審の眼差しを向けると、レオンは微笑み私の頭に手を伸ばし、ぽんぽんと撫でた。


何故だ。




そんなやり取りをしていると、シオンが会計を終えたのか小さな袋を持って戻ってきた。


私の頭の上に、レオンの手が置かれてるのを見て眉間にシワを寄せる。




おぉ?どした、イケメンが台無しだよ?




「……何してるんですか」


「いやー、アザミ様は可愛いなって話をしてたんだよ。な?」


「いやいやいや、してませんわ!そんな話欠片もしてませんでしたよ!?」


「…レオンとは双子ですが、それには同意しかねます」


「ですからそんな話は全くしていませんでしたっ!」


「そう?意地はらなくてもいいんじゃね?」


「はってません。意味のわからないことを言わないでいただきたい」




そうか、お兄ちゃんと私が仲良く話してたもんだから嫉妬しちゃったのね。


可愛いなー…、シオンってば照れて素直に言えないんだな、ツンデレさんですな。


兄弟愛尊い。




でも、二人だけで話を進められて、ぽつんと一人蚊帳の外なのは寂しいんですけどぉ…


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