第11話 あんみつ三つ

ここでこうして三人で頭を付き合わせていても、情報は集まらないのでとりあえず食事処に行ってみようということになった。




お客さんたちの会話に聞き耳を立てていれば、町の人に積極的に関わらずとも情報を得られるというシオンの提案だ。




三人で人が集まりそうな、大きめの食事処を探し中にはいる。


空いている席に座ると、可愛らしい浴衣の女の子がお冷やを出してくれた。




ちらりとレオンとシオンの顔を見ると、彼女は頬を赤らめてすぐに店の奥に引っ込んでしまう。




わかる、わかるよ。イケメンだもんね、二人とも。


二次元から出てきたんですか、って位格好いいもんね!




最初は似てないとか思ったけど、髪の色を同じにすると結構似ているように見えるから不思議だ。


つい二人を眺めているとレオンと目があった。




「アザミ様、何にする?」




おっと危ない、人の顔じろじろ見るなんて失礼だよね




食事処に来たのだから注文しないと、不審がられてしまうという事で軽食を頼むことになった。




「俺はねー、甘いの食いたい」


「レオン、目的は食事ではないですよ」


「分かってるって。でも、どうせなら村じゃ食べらんない物食べたいじゃん?あ、おねーさんちょっといいですか?」




レオンは女性店員さんを呼ぶとメニューを開いて、店員さんの方に向けた。




「このメニューの中で、お店のお勧めってあります?」


「えっと…デザート系になりますが、白玉あんみつがお薦めです。白玉がもちもちで好評なんですよ」




レオンのイケメンスマイルに頬を染めながら説明してくれる店員さん。


イケメンに照れる女の子って可愛いよねぇ…こう、なんていうか恥じらう女の子って感じで。




「じゃあそれ三つで」


「か、畏まりました!」




オーダーを伝えるために店の奥に戻っていく店員さんを眺めていると、近くに座ったおじさんたちの会話が聞こえてきた。




「聞いたか、王子にかなり腕のたつ護衛が雇われたらしいぞ」


「…いくら腕のたつ護衛を雇ったところであの我が儘王子のことだ、何かにつけてクビにするんじゃないのか?」




おじさん達は声を潜めるので、私達はメニューを見るふりをして聞き耳を立てる。




「あぁ、だが護衛の方が物申したんだ。王子と模擬試合をして、自分が勝ったらこのまま護衛を任せるようにと」


「思いきったことをしたなぁ、そいつ。王子だってそれなりに剣術に長けている武人だと聞いているが……で、結果はどうなんだ?」


「王子の完敗だ」


「ほぉ…そいつ、そんなに強いのか」


「模擬試合を見学したやつの話だと、東の国一の強さといっても過言ではないらしい」






「……覚えておく必要がありそうですね」


暫く話に聞き耳を立てていると、シオンがぼそりと呟いた。


「万が一、この国が私達と敵対した場合、相手の戦力を知っておく必要があります」




「だな、出来ればもう少し詳しく調べたいところだが…それはまた次の機会だ」




一度に行動を起こそうとすれば目をつけられる可能性がある、とレオンは呟く。




確かに、今目立つことは私としても避けたい。




そんなことを考えていると、目の前にあんみつが三つ、並べられた。

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