第9話 行動開始

朝食後、お祖父様に村の外の情報を得るため東の国を訪れてみたいと告げてみた。




何故クラルテ国でなく東の国を選んだかというと、攻略対象を観察できる可能性が高いからだ。




クラルテ国の攻略対象は王子様やお城に使える騎士なので、街に行っただけではその姿など見ることは出来ないだろう。




接触するつもりはなく、ただ観察するだけだが、見つけなければ意味がない。




対して、東の国は攻略対象に侍がいたりするので町で見つけられる可能性が高い。




それに東の国関係の攻略ルートだと、必ず魔導一族は破滅させられてしまうんだよね…警戒しておかないと…






最初は一族の人達に話を聞いて情報収集しようと思ったが、百年近く隠れ住んでいる一族だ。


最近のお国事情に詳しいとは思えない…




今はとにかく、少しでも新しい情報が欲しい。


しかし、お祖父様は難色を示す。




当然だよね…、魔導一族は東の国とクラルテ国から逃げて森のなかに住むようになったんだから…。


村の外に出たら、魔導一族とバレて捕まるかもしれないし…。






「…………他の誰かに行かせるのでは駄目なのか?」


お祖父様は困ったように呟く。






「アザミの言うように……そして魔導一族が安心して暮らせる土地を探すためにも…大きな国で情報を得ることは必要なことだろう」




お祖父様も情報を欲していたようだ、私とは理由が少し違うけれど。




「だが、他の者に行かせるべきだ。アザミはこの一族の長だ、万が一の事があっては困る」




お祖父様の言うとおりだと思う。


アザミ様は、族長に就任した。一族を背負い、守り導いていく責任がある。




これからは私がその責任を果たさないと…私はアザミ様だもの。




「私が行かねば…意味がないのです。一族の方を信用していないわけではありませんわ、けれど自分で見て聞いて、考える事が出来なければ、族長としての責任を果たす器にはなれないと思うのです」




誰か他の人に頼んだんじゃ、ヒロインの事や攻略対象の事は調べることはできない、それにどこに破滅フラグがあるのか把握できればそれを回避する作戦もたてられる。




「…………そうか、わかった。ただし条件がある。護衛の二人を必ず連れていく事、魔導の一族とわからぬような変装をする事。いいな?」




お祖父様は暫く何か考え込んでいたが、一つ頷くと条件を提示した。




「勿論です、ありがとうございますお祖父様」




感謝を込めて深く頭を下げる。


するとお祖父様は部屋の入り口に向かって声をかけた。


ドアの向こうには私の護衛である双子が控えている。




「レオン、シオン。聞いていた通りだ、アザミが東の国へ向かう。しっかり護衛してやっておくれ」




「「畏まりました」」




ドア越しに二人の声が聞こえる。


あ、声もすごく似てるけど微妙に違うんだ…




こうして私は東の国に行くことになった。

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