第8話 兄もイケボでした

「二人で楽しそうに、何をしてるんだい?」




二人で手を握って微笑んでいると、また声をかけられた。




低めのダンディな声、これもまたイケボ。


なに、この一族、イケボ一族ですか。


目だけでなく耳も幸せなんですけどー!!




心の中で悶えながら、声のした方に顔を向ける。




お姉さまと同じくらい長さのあるプラチナブロンドを、右側に流して根本で一本に結わえている男性がいた。


何処の俳優さんですか、絶対日本人じゃない!…あ、ここは日本じゃなかった。




「あら、あなた。どうなさったの?」


お姉さまがこてんと首をかしげる。




あ、な、た………ですと!?


つまりこの人がお姉さまの旦那様で、双子の兄……!


わお、それは納得です。




「ミナモがなかなか戻ってこないから迎えに来たんだ、アザミ様とお話し中だったんだね。随分楽しそうだったけれど、何の話をしていたんだい?」




おおぉ、お姉さまのお名前はミナモ様と仰るのか!覚えておかねば!






「ふふっ、女性同士の秘密ですわ。ね、アザミ様」




「そうですね、秘密です」




「それは残念。でもミナモ、そろそろ戻らないと朝食が冷めてしまうよ?」




「あら、もうそんなに時間がたっていたのですか…。申し訳ありませんアザミ様、御先に失礼致しますね」




「あ…はい」




ミナモ様はふわりと微笑むと、旦那様と腕を組む。


二人は私に向かって一礼をすると、湖の方にある家に向かって歩いていった。




その後ろ姿はまるでお伽話の王子様とお姫様みたいで、とても眩しく見えた。




…はっ!私もそろそろ戻らないと…お祖父様が起きた時に私が居なかったら心配するかもしれない。




くるりと進行方向を変えて、家の中に入り自分の部屋へと戻る。


出てきたときのようにこっそりと音を立てずに戻ってみたがまだお祖父様は起きていないようで家の中は静かだ。




机に向かうとアザミ様ノートを取り出す。先程会ったミナモお姉さま夫婦の事を書き記しておこう。




それにしても、紳士的な旦那様だったなぁ…


あ、旦那様の名前を確認するの忘れた……。


レオンやシオンに会ったらそれとなく探りを入れてみよう。




次にあった時に名前を知らないままだといつボロが出るかわからないもんね……


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