第7話 お姉さまはお義姉様

声がした方に、体ごと振り返るとそこには美人なお姉さまがいた。




胸元まで伸ばされたプラチナブロンドは朝日に照らされてキラキラ輝き、ロングスカートの裾から見えるスラッとしたおみ足。




誰、この美人なお姉さまは?


アザミ様とはまた違った儚げな美人!


前世なら病院とか、自然の多いところで療養生活とか送ってそうな…


「あの木の葉っぱが落ちたら、私もきっと…」とか窓の外を眺めて憂いてそうなお姉さまは何処の何方ですか!!




私が見惚れていると、お姉さまはにっこり微笑みかけてくださった。




目が……っ、目が幸せです!!




「おはようございます、アザミ様。今朝はいつもよりお早いのですね」




見とれてる場合じゃない、挨拶返さなきゃ!挨拶は人の基本です、学生だけじゃなく社会人も老若男女問わず挨拶は大事。




「おはようございます…えっと、目が覚めてしまって少し散歩でもしようかと」




「そうでしたか、昨日は就任式の後大変でしたものね…。すみません、夫が失礼な事を……」




「夫……?」




この美人さんは人妻さんでしたか!!


うわぁ、どんな旦那さんだろ…?美人な奥さん捕まえたなぁ…羨ましい。是非なれそめを聞きたい。




「ええ。久しぶりに帰って来たレオンとシオンに会えてはしゃいでいたのでしょうね…アザミ様のドレスの裾を踏んだ事にも気が付かず転ばせてしまうなどと…」




そんな事が…説明ありがとうございます!状況把握できました先生!


……あれ、聞いたことある名前が出てきたぞ?




「私は大丈夫ですよ、たいした怪我もありませんでしたし……。えっと、レオンさんとシオンさんとお会いするのが…久しぶりなのです、か?」




何か日本語おかしくおかしくなったけど伝わるよね?




ものを考えながら喋ると日本語がつい怪しくなってしまう…気を付けないと。


お姉さまは私の質問に、微笑みながら頷いた。




「そのようです。私も夫はあの子達と兄弟だからもっと頻繁に連絡を取っているものだと思っていたのですが……随分久しぶりだったようで…昨日はいつも以上にご機嫌でした。ふふ…まるで子供みたいでしたね」




口許に手を当てておしとやかに笑う姿は本当に麗しい…守りたい、この笑顔。




お姉さまの話を纏めると、お姉さまの旦那さんがあの双子の兄らしい…そしてお姉さまは双子の義理の姉。


話の途中で、一瞬「え、もしかして双子と親子!?」と思ってしまったけれとそうでは無かったみたいだ。




いいな、いいな、私もこんなにお姉さんほしかった!!


前世じゃ長女だったから、上に兄弟ががいる人達が羨ましかったんだよね…


もちろん、私には可愛い妹が居たけどね、それとはまた別で。




「家族は…兄弟はやっぱり傍にいた方がいいですよね…喧嘩しても、兄弟にはかわりないですから」




言葉にしてしまってから、前世の妹を思い出して少ししんみりとしてしまう。


…私がいなくなって、泣かせてしまったかもしれない…寂しい思いをしてるかもしれない。妹不幸な姉でごめんね…




するとお姉さまが私の手をとって微笑んでくれた。




「私は…アザミ様も大事な妹のように思っているのです、ですから何かあったらすぐ相談して下さいな。一人で悩むより、解決策が見つかるかもしれません」




私が何か悩んでると思ったのだろう、お姉さまは優しい言葉をかけてくれる。




うわぁ、いい人だ…




社交辞令でよく聞く「何かあったら相談に乗るよ」と言った言葉と違う。


何が違うって声色とか、お姉さまの眼差しとか。それが全て私を心配しての事だと伝わってくる。




お祖父様に続き、お姉さまも私の涙腺を弱めようって魂胆なのか!?


前世から優しさ不足だった私には刺激が強いよ、優しさの刺激が。


玉ねぎのみじん切り並みに刺激が強いのですよ!




「ありがとう、ございます。頼りにさせていただきますわ」




涙腺崩壊しないように一度奥歯を噛み締めてから、微笑む。


いくら優しさ欠乏症でも、人前で泣きたくない。




お姉さまやお祖父様のようなタイプはきっと私が泣いても、優しくしてくれると思うけれどそれは甘えになってしまう。


だから泣くのはダメだ。


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