第5話 たんぽぽな柴犬

違う、これは人だ。人の頭だ。


たんぽぽに近い金髪、その両サイドに癖がついていて少し跳ねている。


顔立ちはシオン同様に整っている青年だった。




「君がアザミ様?」




青年は私を見るとぱっと笑顔を浮かべる。人懐っこい笑顔に、可愛い印象を受ける。


なんか雰囲気が柴犬っぽい…。


そしてこの人もイケボだな、おい。本当にCV誰だよ。




「俺はレオン、じいちゃ……前族長様からアザミ様の護衛頼まれたんだ。これから宜しくな……じゃない、宜しくお願い致します」


言い直してぴしっと背筋を伸ばす。




なるほど、この子がシオンのお兄さん…失礼だけど双子なのに似てない…。髪の色も違うし。柴犬だし。




「公の場所以外では畏まらなくても構いませんし、話しやすい口調でいいですよ?その方が私も嬉しいですわ」




そう言うと柴犬……レオンの目が輝く。尻尾を降るような幻覚が見える気がするのは…気のせいだろうか。


あ、気のせいじゃない。この人襟足で髪結んでるからぴこって短い尻尾がある。ますます柴犬じゃないか。




「ありがとうアザミ様。俺、ずーっと畏まってんのって苦手でさ、そう言ってくれると助かるよ。ともかく、これから宜しくな」




握手を求め、差し出された手を握り返すと嬉しそうに笑う柴犬。




「こちらこそ宜しくお願い致します、レオンさん」




なんとか、レオンとは友好関係を築けそうだ。


私の破滅フラグを破滅させる計画に、僅かだけれど光が指した気がする。




「アザミ様はシオンにもう会ったんだろ?…どう、だった?」




イケメンでした!……じゃなくてこの場合は態度の事を言っているのか、それとも容姿がどうだった?と言うことだろうか。


後者なら迷わずイケメンです、目の保養です。




「…どう、とは?」




「アイツ、魔導一族なのに髪が白銀だから…昔からちょっと回りによく思われていないんだよ。じいちゃんだけが優しくしてくれて…そしたら今度は贔屓だって言われて。大分ひねくれた性格になっちゃったからさ…俺と一緒にアザミ様の護衛に付くって聞いて、兄として態度とか諸々大丈夫かなーって心配でさ」




あーよくあるやつ。どこにでも居るんだね、何かと理由つけて突っかかってくる苛めっ子。


でも、弟が心配なお兄ちゃんとか……兄弟愛ですね。たまらん。


ひねくれ弟と、柴犬兄……たまらん。


おっと、意識を妄想に持っていかれるところでした。危ない。危ない。




「綺麗な髪だとは思いました。なにも知らない私が言うのも烏滸がましいかも知れませんが…大丈夫ですよきっと。こんなに素敵なお兄様がついているのですから」




あからさまなのにはちょっとだけもやっとしたけど、不愉快って程でもないし人生色々あるからな…その中でひねくれてしまう事だってあるだろうし。大事なのはこれからどうするか、だと思う。




私の言葉にレオンは二回ほどゆっくりと瞬きをすると嬉しそうに微笑んだ。




「ありがとうな、アザミ様。君が族長で良かったよ」




私も良かったよ、こんな(色んな意味で)素敵な双子が護衛についてくれて。


妄想し放題、目が幸せ、最高。


是非、仲のいい姿を見せてください。大丈夫、ポーカーフェイスは得意です!


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