第2話 探偵?いいえ、不審者です

私のゲーム知識だと、この世界は大陸が二分割されていて東には『東の国』、西には『クラルテ国』がある。




『東の国』は昔の日本みたいな和風の建物や服装が多い国。侍とか忍者の役職がある。




『クラルテ国』は洋服が多くて、魔法を使うための材料、魔石の採掘が盛んな国。




どっちの国も人の名前は和名と洋名が混在してる。


例えばファーストネームが太郎なのにセカンドネームがジョーンズで、ファミリーネームがハワードとか。


フルネームだと『太郎・ジョーンズ・ハワード』みたいな。




攻略キャラの名前も長くてだいたいファーストネームで呼んでたけどね。






『東の国』と『クラルテ国』のちょうど真ん中には『聖域』と呼ばれる場所がある。


ここにはファンタジーぽいドラゴンとかが住んでて、ヒロインは平和を取り戻すためそのドラゴンに召喚されるって設定。




『聖域』から北に行くと、アザミ様(私)の納める魔導一族の村がある。


かすかだけど魔法を使える一族。基本的に一族の人は皆金髪で、誰もが呪文など無しに魔法を使える。その中でも強い力を持ったのが先代族長の孫であるアザミ様。


ちなみに村は森の奥にあるので他の国の人たちは場所を知らない。






ゲームで得た知識とアザミ様のノートの知識を照らし合わせていく。どうやら私の持っていた知識と大差は無いらしい。よかった…なんとかなりそう。




ノートをパラパラと捲っていくと『魔導一族の歴史』と纏められたページに行き着く。


なにこの親切設計、まるでゲームの説明書読んでる気分だな。




『魔導一族


100年以上昔、聖域の生き物より魔法を授かり、平和と繁栄を極めていた。


しかし東の国、クラルテ国初代国王達が魔法を我が物にしようと魔導一族を捕まえようとした為、当時の族長は一族を守る為に森のなかに隠れひっそりと生きるようになった。』




ほう、こんな設定があったのか……。


え、これ魔導一族悪くないじゃん!


利用しようとした他の国のせいで隠れて暮らすようになって挙げ句、破滅とかおかしい!いや…でも流石に戦争引き起こそうとするのはやり過ぎだけど…




何事も、相手の立場に立ってみないとわからないと言う事なのだろうか。


私も、これ読むまでただの悪役と思ってたからなぁ……うん。


片寄った意見や考えはよくないね、このノートが全部真実かは分からないけど…だからこそいろんな情報を集めて吟味しないと。




一冊目のノートを閉じて、他のノートをパラパラと捲ってみる。


薬草についてのまとめや、料理のまとめ等が書いてあった。




アザミ様、いろんな事においてかなりの勉強家だったみたい…私の中のアザミ様に対する好感度が上がった


って違う違う。そうじゃない。




このノートたちは今後、フラグ回避の為に活用させてもらおう。料理はともかく、薬草とか何かあったときに役に立つかもしれない。大事にしよう。




ノートを確認し終えたので、次は机の中。さりげないメモとかでも充分に情報元となる。


おぉ、なんか私、探偵っぽい?


いや、人様の机漁ってるんだから探偵どころか怪しい奴だわ。アザミ様(自分)の机だけど。




机の上をガサガサしてると不意に部屋のドアがノックされた。




「アザミ様、いらっしゃいますか?」




おー、いい声。イケボ。CV誰だろ?


じゃない!待った、一族の人達相手にアザミ様ってどう話してたっけ!?


ボロが出る危険なイベント発生!というかゲーム内でも魔導一族たちは名無し扱いでアザミ様しかほぼ出てこなかったから、名前とかもわかんないんだけど!?!?






「アザミ様…?何かありましたか?開けますよ」




慌ててわたわたする私の返事が無いことを不審に思ったのか声を主はがチャリとドアを開ける。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る