悪役族長の家族修復計画
枝豆@敦騎
第1話 悪役族長
これはきっと、ご褒美だと思う。
たった一人で横暴な上司や、理不尽な仕事に耐え続けたご褒美。
今までよく頑張ったね、ご褒美に二次元への扉を開いてあげよう!しゃらんらー!的な。
お陰で私は今、二次元にいます。
いや、私からしたら現実世界だから平面ではないんだけど。
しかも乙女ゲームの世界って最高じゃない?推しキャラを身近に感じられるんですよ?
………ただし悪役は除く、だけど。
はい、お察しの通り私は悪役です。悪役に転生したみたいです。しかも族長です。未来に待ってるのは破滅フラグというやつです…………何故だ!?
二次元への扉開いてくれたのは感謝するよ!?誰だが分からないけど!
でも、どうせならヒロインに攻略される側が良かった!最近の乙女ゲームのヒロインて可愛いんだもん!!
…すいません、精神的に三十路近い女が「もん」とか調子乗りました。
前世の最後の記憶はいつものように出勤して、業務をこなし、帰ろうとしている記憶。
覚えてないけど、事故にでもあったのだろう。
会社を出たところで記憶はブラックアウトし、気が付けば目の前に乙女ゲームのキャラがいた。
ゆるふわの淡い金髪ショートヘア、青空のような水色の瞳。
顔付きは乙女ゲームのイラストでみたより少し幼い、17か18歳くらいだ。
けれどその姿は間違いなく最近クリアした乙女ゲームの悪役、アザミだった。
彼女は「ドラゴンと騎士」という乙女ゲームの悪役。魔導一族の族長で、一族繁栄の為に戦争を引き起こそうとしたりヒロインを亡き者にしようとする役処。
どの攻略ルートでもだいたい一族ごと破滅してしまう。
でも、一族への愛情が深いところとか、自分の破滅を目の前にしても一族の事を心配する優しさに、密かに人気があったんだよね。私も嫌いじゃなかった。
隠しルートで、アザミ様とヒロインの友情エンドがあるかと思ったけど残念ながら無いままだった…
なぜアザミ様救世ルートがないのかって相方と熱く語った事もあります。
それにしても……ふおおぉ!アザミ様、美少女!
私が驚いて目を丸くすれば、目の前のアザミ様も目を丸くする。恐る恐る手を伸ばしてみればアザミ様も手を伸ばし………ってこれ鏡だ。
何だ鏡か、いやぁ、ビックリした…………って私がアザミ様!?何故!?
鏡の中にいるアザミ様を見つめ、理解した。私は、「ドラゴンと騎士」の世界のアザミ様に転生してしまったのだと。
繰り返すようだが、やっぱりヒロインに攻略されるイケメンキャラとかになりたかった。破滅フラグ関係なさそうだし…何よりヒロインちゃんを愛でられる。
やましい気持ちじゃないよ!?純粋に可愛い女の子を愛でたいのです!
でも残念ながら私は悪役。
…………あ、これ破滅フラグへし折らなきゃいけないやつですかね?
よし、アザミ様の為にも私の残りの人生の為にも、その破滅フラグ、バッキバキにしてくれよう!!
目指せアザミ様(私)救世ルート!
鏡に映るアザミ様の姿から見てゲームはまだ始まってないのだと思う。ゲームで最初に出てきたアザミ様は、もう少し大人っぽくて…美少女というよりは美人という感じだった。と言うことは前世でパッとしなかった私も美人になれる!?よっしゃ、気合いいれて頑張らねば!
まだゲームが始まるまで時間があるはず!とにかく出来ることから始めよう。
まずは情報収集からだ。私は自分のいる部屋をくるりと見回した。
木製の椅子、机、ベッド。クローゼットにドレッサーもある。
机にはノートが何冊か置いてある。
アザミ様、日記でもつけてたのかな?
開いてみると、歴史の勉強でもしていたのか一族の歴史、近隣国の歴史等が記されている。これはとても助かる。
ゲーム知識との擦り合わせが出来るからね
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