第22話 9つのソーマ

「実はあなた方に他にもお願いがあります。黄金のソーマ、白銀のソーマ、

 赤色のソーマ、橙色のソーマ、緑色のソーマ、青色のソーマ、藍色の

 ソーマ、紫色のソーマの合計9つのソーマを手に入れて欲しいのです。」


「それは・・・クレアを蘇らせる為に必要なものか? もしかして」

「そうです」


  全ては俺達次第と言っていたな。確か。クレアのことだけは少しだけ

 引っかかっていた。任せて欲しいと言ってたから。しかし、それだけで

 は足りないという事か。納得。


「それは、アレルカンティアで集まる物なのか?」


「いいえ・・・。そうですね。この世界のことをきちんと説明しておか

 なければなりませんね。この世界はエルフォリアとアレルカンティア

 だけではありません。天上界ヴァルグランド、魔界ヘルグラント、


  地上界アレルカンティア、エルフォリア、アヴァロニア、シグニア、

 この6つの世界で構成されています」


  薄々そうなんじゃないかと思ってたけど6つか・・・。そして、

 その6つの世界に散らばっているであろうソーマ9種類を集めろと。

 なかなか、ハードルが高いな・・・。


「その6つの世界に各色のソーマが散らばって存在しているのです。

 クレアを蘇らせるにはどうしても、それが必要です」


「なぁ、他の世界にはどうやって向かえば良いんだ?」

「アレルカンティアのローラン大陸北部の『神々が住まう山』の頂上

 辺りにヴァルグランドへ繋がる門が存在しています。ただ、今向かう

 事は難しいでしょう。今のあなた方には荷が重い。そして、エルフォ

 

 リアへと続く門はアレルカンティアのイスタリア大陸の南部に存在

 しています。イスタリア大陸はローラン大陸の遙か東に位置し、大きく

 海を隔てて存在しており、現状は海路を使うほかありません。この魔法


 の地図をお渡ししておきましょう」


  そう言ってミレイアは地図を机の上に広げる。


「真っ白・・・」

「現状じゃ使い物にならないな、やはり地図屋をアスティアで探して買

 う他なさそうだ」

「門の位置を赤い点で記しておきましょう」


  すると赤い点が地図上に浮かび上がる。この2カ所が異世界へと続

 く門の存在する位置と言う事になる。しかも行ったことが無い場所

 なので近くに行って探さないといけない。


「井岡は行ったことがあるか?」

「いいえ、ローラン大陸周辺をうろついてた位ですね」

「俺達精々隣町のセリスティアへ行った程度だからな」


「一度首都ローラン位には行っておいた方が良さそうだな」

「蔵書がたくさんありそうな所片っ端から探して調べ物した方がいいっすね」

「ああ、分からないことが多すぎる」


  出発する前に決めなければいけないことがたくさんある。旅の目的

 地はエルフォリアへと抜ける門だ。そしてその前に近辺エリアの地図

 の購入や調べ物と馬車の購入。屋敷には馬小屋はあったな。あれを使

 えるように準備が必要だ。


  部長と井岡はそれぞれレベル40と45あるが、俺は未だに12で

 セリスティアのレベルは18とまだまだ低い。旅をするにはレベル

 が低い俺達のレベルを大分上げないといけない。幾ら強力なスキル

 があろうとも、発動する前に死んでたら意味が無い。


  先は長そうだ・・・。


「それとこれはセシリアや私からの贈り物です。どうか受け取って頂戴。

 悟さんには『勇者の紋章』を。かつて勇者アストリアが神々から授かり、

 魔王の討伐に大いに貢献した力です。右手を差し出して下さい」


  俺は言われたとおり右手をミレイアに差し出す。ミレイアは中に紋

 章が浮かび合った球上の物体を右手で掲げる。するとその球の紋章が

 大きく浮かび上がり俺の右手に紋章が刻まれたのだった。そして、その

 紋章は鈍い光を放っていた。


「これは・・・?」

「あなたの願い、想いは勿論、仲間や人々の想いや祈りを力に変換する

 事ができます。あなたが所持する二つのスキルと合わさって更に強力

 な力を発揮してくれることでしょう」


  チートオブチート! ワオ! 但し、レベル上げの時は効果なしと!

 コツコツと努力しろってことだわな・・・。


「次に桂山さん、あなたにはこの『皇帝の冠』を」


  ミレイアは小さな冠を厚手のローブから取り出し、ぽんと指で弾くと

 ゆっくり部長の頭の上へと向かい。一瞬止まってすっと消えた。


「何の変化も感じないが?」

「究極の職業『エンペラー』が選べるようになっていませんか?」

「ああ、確かに。キングが最強と聞いていたのだが・・・」


「勇者と同じ万能職で攻撃も防御もこなせる王の中の王のみが成れる

 職業です。あなたなら必ずその力を使いこなせることでしょう」


「分かった。ありがとう」


  そう言うと部長はすぐさまエンペラーにクラスチェンジする。


「ステータスが上がっているな。さすが究極の職業と言ったところか」

「次は、井岡さん、あなたには『賢人の書』をお渡ししましょう」


  次はやたら分厚い本が出てくる。ミレイアのローブは四次元ポケット

 の如く何でも入るんだな。


「別に何でも入るという事はありませんよ?」


  思考を読まれてた!


「随分分厚い・・・これ何も書いてないっすね」

「それは賢者と呼ばれる賢人達の英知が詰まった書物」


  ミレイアが軽く横に手を振ると本がパラパラと一気に捲れ続け消える。


「あなたはこれで賢者となることが可能です。賢者は特殊な魔法を除き

 全ての攻撃魔法、回復魔法お呼び補助魔法を使用することが可能です。

 これもまた究極の職業の一つ。魔道士が辿り着くべき究極の職業」   


「ふむ。クラスチェンジ終了っす。ヒールやらが使えますねぇ。その代

 わり・・・。next値がべらぼうにやべぇ・・・」

「エンペラーもそうだな・・・レベル1に戻されないのは有り難いが・・・」

「それは仕様です」


「セリスティア、あなたにはこの『聖女の涙』を授けましょう。ただ、

 あなたのレベルではまだ聖女にクラスチェンジすることはできません。

 もう少し修行をお積みなさい」


「はい、ミレイア様。頑張って名前負けしないよう立派にお勤めを果た

 してみせます!」


  『聖女の涙』と呼ばれる中央にダイアに似た涙型の宝石をあしらった

 ネックレスをミレイアに掛けて貰うセリスティア。レベルがあがれば

 このネックレスも消え、彼女は究極職『聖女』へと昇格できるのだろう。


「勇敢なる勇者達に幸あらんことを・・・」

「有り難う、ミレイア」

「それでは、頼みましたよ」



  とりあえずはレベルを上げていかないといけない。周辺の地図も手に

 入れる必要がある。旅に必要なものを揃えないと。馬と馬車の調達も

 必要だ。馬小屋と倉庫に飼料を運び込む必要がある。俺達は今日一日

 街をあちらこちら巡り、聞き、情報を集め、必要な物を選別していく。


  地図は地図屋があったので売っているもの一通り購入した。所々歯

 抜けになってはいるが、しばらくはこれで大丈夫だろう。ローランに

 行けばもっとちゃんとそろうそうだ。一旦は首都ローランを目指した

 方が良さそうだな。


  ロザリア姫達が今何をしているか気になるし、何か分かったことが

 あるかもしれない。そして、晩は久々に冒険者ギルドへ集まって食事だ。


「旅に出るんだってね」

「テレポートがあるからちょくちょく帰ってこれるけどな」

「でも長く屋敷を空ける事もあるんでしょ?」


「場合によってはな」

「お屋敷は、私達が管理する事になってるから大丈夫よ」

「休みの時手伝いに行こうか?」


「助かるわ」

「ただ、これからミックは大変だな」

「うーん、日本への異界門が閉じてしまったからな。大パニックだった」


「手間賃は払うよ、屋敷の管理を頼みたい」

「すまん、助かる。嫁さんの稼ぎと蓄えだけだと少し心許なくてね」

「でかいからな、二人じゃどうしようもない。マリカちっちゃいし」


「マリカもやんのかよ!」

「何もしないつもり?」

「うぎっ・・・そりゃぁ・・・手伝うけどさ・・・」


「ちゃんと帰ってきてね」

「ああ。当然だ」


「それにしても、勇者、エンペラー、賢者、に聖女(予定)か中々豪華な

 顔ぶれだな」

「私は力及ばずまだプリーストですけどね・・・」


「といは言うものの、しばらくは周辺で情報を集めつつ、レベル上げだ」

「首都ローランには王立図書館があるらしいな」

「ああ、聞いた。ここにも小規模ながら図書館はあったよ」


  友人達と会話を交わしながらのエールと食事。こうやって落ち着いて

 食事をとる機会はこれからはぐっと減るかもしれない。だからだ、わざ

 わざギルドへやってきて食事をしているのだ。須藤夫妻と桂山夫妻を呼んで。


「アストリアって由緒ある名前だったんだな」

「英雄アストリアかい?」


「数百年前ローラン王国の始祖アスティア=ローランと聖女セリスティア

 大賢者ラムダと共に魔王と戦ったアレルカンティアの救世主」

「バルバトスとアストリアはその勇者アストリアの子孫なんだってな」


「らしいね、両名とも子孫でありながら勇者の力を授からず苦悩して

 いたと言う話だよね」

「初めて知った」


「というか、興味すらなかったろ? 勇者様」

「うん、こっちのこと全然知らなかったよ。最近思い知った」

「少し寂しくなるなぁ」


「とは言っても一段落つく毎に戻って来れるとは思うけどな」

「一週間ないし、一ヶ月空けることもあるかと思う」


「ヒロ君は幾つになった?」

「4歳だよ」

「そうか・・・雪緒ちゃんは?」


「1歳半かな。まだ歩いたり、はいはいしたりだよ」

「ちなみにマリカは25歳児」

「6歳にされちゃったんだって? 懐かしいなぁ」


「若返るにしたってこれは若返りすぎだよぉ、何も出来ないもん」

「でも、お母さん昔を思い出すわ~。ただ、中身が25歳だから小憎

 たらしいのがたまにきずよね」


「マリカは大人なんだから当たり前だよ!」

「でも、親にとって子供はいつまで経っても子供だよ」

「パパ・・・ちゃんと帰ってきてね」


「勿論さ」


  俺達は、一時の安らぎの時間を過ごした。



===異界エリシオンにて===


「クレア、良い子にしてましたか?」

「ミレイア様、お帰りなさいませ」

「よく、顔を見せて・・・」


「あんまり、見つめられると恥ずかしいです・・・ミレイア様」

「もう、離さないわ・・・私のクレア・・・」

「はい、ミレイア様・・・私は身も心もあなたのものです・・・」

  

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