第17話 セリスティアの覚悟

  つい先日仲間が増えた。プリーストレベル15の少女セリスティア

 だ。壮健で美人に育つようにと街の名前の由来である聖女セリステ

 ィアの名前が付けられたのだ。


  そして、彼女は我々の中でも新入りで下っ端14歳。雑務を次から

 次へと押しつけられるのである。主に俺に。


「なかなか、似合ってるじゃ無いか。そのメイド服」

「・・・何ですかコレは。おかしくないですか? 私の知っているメイド

 服はもっと袖が長くて全身覆うような形だったはずですが・・・」


  金貨1000枚も払ったのだ。多少サービスしてくれてもいいだろう。

 寄付金を支払う代わりに彼女を引き取ることになったのだ。どの道

 彼女を託せる人間が現れたら引き取って貰うつもりだったのだろうが。


  秋葉で売っているコスプレ用のメイド服を何着か購入して彼女に着

 用させている。なかなか似合うじゃ無いか。メイドキャラ居なかった

 から欲しかったんだよね。


「女神ミレイア様、哀れな子羊をお助け下さい! どうかお助け下さい!」

「あ、ミレイア」


「ミレイア様! どうかこの男に天罰を! 私に雑用を押しつけ、更には

 この肉体を我が物とせんと欲しているのです!」


  ミレイア様の定期巡回である。今日は使いのゴンザレスも一緒だ。


「ゴンザレス。立派になったね・・・ぐす・・・」

「泣かないでリザリー私は大丈夫。立派な戦神になってみせるからね」

「うん。頑張って」


  ゴンザレスはマッチョな肉体と対照的におねぇ言葉の戦士だ。グレ

 ゴリウスに殺されて、神様の見習いとしてミレイアの使いをやっている。


「何で私に使いを寄越さないのよ~。ミレイアばっかりひいきされすぎー」

「お前どの口で言ってんの?」

「ぶ~~~~」


  メサイアは娘のセシリアには甘い。激甘だ。だからこいつがどれだけ

 わがまま法題しても基本放置なのだ。余り酷いときはミレイアがやって

 くるが。


「そう、あなたがセリスティアなのね」

「はい!」

「いずれ、あなたも勇者悟の子供を身ごもる事となりましょう。自発的に」


「はぁああああ――――――――――――――――!!!?」


  まさに、有り得ないといいたげな反応だ。


「あのさ、ミレイアは未来視ができんの。そうじゃない未来もあるみたい

 だからそれに賭けるんだな」

「ちなみに、結ばれない未来の場合は例外なくあなたは死んでいます」


「そんなぁ・・・」


  まさか・・・頼りの綱のミレイアに死を宣告されるとは・・・。

 それにどんだけ、俺のこと嫌いなんだよ。まだちょっぴりHなメイド

 服を着て貰っただけだからね!?


  意気消沈のセリスティアは台所へ行き、紅茶の用意を始めた。


「ミレイア、それで今日はどうかしたの?」

「あなた方の様子を見に来ただけよ。それにゴンザレスもリザリーと

 会いたかったでしょう」


「ありがとう、ミレイア」


「あれ、ミレイア来てたの」

「おはよう、クレア。それにしてもその格好はどうにかならないの?」


「ああ・・・昨日は夜遅くまで悟と頑張ったから・・・」


  そう言うことを堂々と言わない! 例のセクシーランジェリーを

 惜しげも無く披露しているクレア。部長は一瞥しただけでまた本を

 読み出すし。俺、知ってるんだからな! 部長がたまにエロ本読んで

 るの!


「悟さんに甘えるのはいいのですが、くれぐれもほどほどに」

「うん、分かってるよ」

 

  最近ではクレアが俺を刃物で脅すことは無くなった。刃物で脅す

 ことはな!


「それに、これセシリア達が買って来た奴なんだぜ?」


  ミレイアにちくるクレア。


「あら、可愛い。あなた本来の姿はそんな姿だったのね」

「お前は・・・ゴンザレス・・・」


「紹介するわ、クレア。神見習いとして今度から私の下で働く事になり

 ました」

「ふ~ん・・・」    


「気にすることは無いわ、一時期は恨みもしたけど。こうやってミレイ

 ア様と同じ神様になるための修行が出来るんだから」

「気になんかしてねーし・・・」


  クレアは口調がごちゃまぜになる。魔王時代とクレア時代とで別の

 性を生きてきたせいだ。


  そして、間の悪いことにセリスティアがやってきてクレアの格好を

 まじまじと見つめる。


「ミレイア様・・・ゴンザレス様、お茶をどうぞ」

「ありがとう」

「頂くわね、可愛いメイドさん」


「私はシスターですぅ・・・」

「あら、そうなの? そんな格好してるからてっきり」

「そこの変態に脅されて着せられてるんですぅ」


「そう・・・でも可愛いし似合ってるわよ」

「いつか・・・私もあんなHな下着を着せられて欲望のままに蹂躙され

 るのでしょうか・・・」


「これ? これは悟を誘惑するのに自発的に着てる奴よ?」

「人前でそれを見せるのもどうかと思いますが・・・」


  ミレイアに説教されるクレア。


「分かったよ~着替えてくる~」


  そう言うとクレアは自室へと戻っていった。幾ら身内しかいない

 とは言えそれ着て出てくるのもどうかと思うぞ!?


「私が一体・・・何をしたって言うんですか・・・うう・・・」


  ちょっと調子に乗りすぎたかな。


「もう休んで良いぞセリスティア後は俺達でやるからさ」

「はい・・・」


  そう言うと、セリスティアは自室に引き籠もってしまった。

 頼りのミレイアにも止め刺されちゃったもんな。やさぐれないよな?


  ミレイア達が去った後何事も無く、日は暮れ夕食の時間になった

 セリスティアは部屋にいるようでなかなか出てこない。しょうがない

 ので俺が直々に呼びに行く。未来の旦那様だよ~。


  ドアは鍵が掛かっており開かない。ノックをするが反応が無い。

 しょうがないので鍵を取りに戻る。そしてもう一度ノックして

 扉を開ける。


  ベッドをみると気持ちよさそうに寝ているセリスティアがいた。

 何か、起こすのも悪いな。髪を優しく撫で辺りを見渡すと・・・。

 服と下着が散乱していた・・・。


  まるで事後だな。いや・・・これは・・・。オナって疲れて寝た

 と推測される・・・。この子も思春期ちゃんなのね。おれはそーっと

 部屋を出ようとすると、間の悪い事にセリスティアが目を開ける。


「何をしてるんですか・・・まさか・・・私に乱暴な事を・・・」

「お前、オナって寝たろ」

「!!!?」


「別に、誰だってそう言うの位あるけどさ」

「・・・私をそうやって脅す気ですか? 叫びますよ?」

「それより、飯だ、飯。そもそもその為に来たのにノックしても起きな

 いし」


「ああ、もうそんな時間ですか・・・」

「だから、鍵持ってきて開けたら気持ちよさそうに寝ててさ、何か起

 こすのも悪いなって部屋の周りみてたら下着と服が下に脱ぎ散らかし

 てあるし。バレバレだっつーの」


「うう・・・それで私をどうするつもりですか?」

「別に何も・・・ああ・・・やっぱそう言うのに興味あるお年頃なのねって」


「クレアさん・・・声大きすぎですよ・・・」

「うわ・・・あれみられちゃった?」


  どうやら俺とクレアのドッキングシーンをバッチリ見られていたよ

 うだ。確かに年頃の少年少女の情操教育の場としては良くなさげ。


「お互い、見なかった。気づかなかったことにしよう、な?」

「はい・・・誰にも言わないでくださいね・・・」

「多分、セシリアやロザリア、リザリーもオナニーくらいしてると思うぞ?」


「うわ・・・そう言うこと言いますかね?」

「セシリアのオナニー現場に一度出くわしたことがある。声だけだけど」

「・・・」


「それじゃ、俺行くから早く着替えて来いよ」

「はい・・・」


  多感な年頃のお嬢さんを預かるって言うのはどうも面倒くさいな。

 ロザリアやリザリーが特殊だっただけか・・・。部長も色々あったん

 だろうなぁ・・・。子供の居ない俺にはよく分からん。


  ここは浴場がセシリアの自室に備え付けてあるだけで後は、大浴場

 のみだ。だから何度かバッティングしたことがある。家族でもそう言う

 事あるんだから余計だわな。


  皆が入浴したのを確認して入浴したはずなのだが・・・。


「キャ――――! おにぃちゃんのエッチぃ・・・」

「うるせぇよ!」


  誰かと思ったわ!


「お前、何でいんだよ」

「ああ、何かちょっと気分的がだるかったんで」

「セリスティアが来たのかとびっくりしたわ」


「彼女先輩の事毛嫌いしてますねぇ」

「まぁ・・・実際嫌われるようなことしかしてないかもな」

「自覚あるならやめましょうよ」


「あれくらいの歳の女の子って難しいな」

「今更」


「よっこいしょ」

「何、人に腰掛けてんだよ」

「いいじゃないっすか定位置っすよ」


  嫌な予感がする・・・。ガラッ!


「あわわわ・・・悟さん・・・幼女にまで・・・」

「これは・・・おっさんだから! 見た目が幼女なだけで中身おっさん

 だから!」

「言い訳苦しいっすよ。人の体散々いじくっといて」


「・・・もういいです・・・ちゃんと確認しなかった私も悪いから」


  セリスティアは俺達を無視して体を洗い始めた。一旦戻っちゃう

 かと思ったんだが。

  

「お二人は結構年齢行ってたんですね」

「まぁなぁ・・・もし子供が居たとしたら君くらいの娘いたかもね」

「私は親なし子なので両親と言われてもピンときません」


「うちは両親仲いいのかわかんないっすねぇ。喧嘩したと思えば、いつ

 の間にか何事も無かったかのように」

「俺の家の両親はどうだろう? 喧嘩というか親父かいつも一方的に

 ギャーギャー言ってて母さんははいはい言って受け流す感じ」


「私も誰かを愛して子供を産む日が来るんでしょうか・・・」

「きっと来るよ」

「投げやりですね」


「未だに未婚で子なしのおっさんずに言われても困るねぇ」

「そう言えば、お二人のこと全然知りませんでしたね」

「俺も君のことよく知らない」


  俺が、こちらに来たいきさつやら、井岡の事やら浴槽に浸かり

 ながら色々話をした。セリスティアが今までどういう風に過ごして

 来たかとか。


「人に歴史あり・・・ですね・・・」

「例え、英雄になっても、大金を得たとしても別に中身が変わる事は

 ないんだよなぁ・・・」


「でも、毎日面白おかしく過ごしてけるってのはでかいですよ~」

「もう少し欲しがってもいいんですね・・・」

「セシリアやクレアみたいにわがまま放題も困るけどな」


「悟さん、私もちょっと甘えていいですか?」

「まぁ、ほどほどにはな」

「私、決めました。悟さんに着いて行くって」


「それはどうも」

「私も面白おかしく生きたいです。それにミレイア様も言ってたじゃな

 いですか。悟さんが私の運命の人だって。結ばれなければ死ぬとも。

 だから、身も心も捧げます」


「まだ人生始まったばっかりだ、そうすぐに結論付けなくていい」

「こうやって出会ったのも神の思し召しですから」


  こうしてセリスティアとの距離が少しだけ縮まった。まぁでもメイド

 服は着て貰うし、雑用もやってもらうけどね!

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