チキン
過剰供給となったチキンは、多くの場合、猫のおやつに加工される。これらは念入りにミキサーにかけられ、寒天などと混合した上で、細長くパウチされるらしい。
猫のおやつ製造所は、機内食製造所とは別のセクションに属するため、私達の仕分け所から出るトラックも正門を出てすぐ、真逆の方向へと進む。
東へ行けば機内食となって空の上へ、西へ行けば猫のおやつとなってお茶の間へ。
空の上へ行けた機内食も、余って廃棄処分されることは多い。チキンの場合は特にだ。それらディスポーザル・チキンは、また私達の仕分け所に戻り、裏手の焼却炉で処分される。だから夜になると、匂いに惹かれた野生のコヨーテが集まって、大いに吠え声を上げる。
チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……ビーフ……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……ビーフ……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……ビーフ……チキン……チキン……ビーフ……ビーフ……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……チキン……ビーフ……チキン……ビーフ……チキン……チキン……チキン……ビーフ……チキン……。
この仕事に就いてから一度だけ、空港をフェンスの外から覗いたことがあった。カメラを構えた親子連れが、飛び立つ飛行機に歓声を上げる中、私はただ、私の仕分けたビーフとチキンの行く末を見守っていた。
国内線の黒い飛行機には、国際線のカラフルな飛行機よりも、搭乗しているヒンドゥー教徒の割合が少ない。
あの日に私を置いて何処かへ飛んで行ったチキンの多くは、とっくに私達の仕分け所に戻って、焼却されたのだろう。
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