機内食工場で牛肉と鶏肉を仕分けするだけの簡単なお仕事(現代ファンタジー)
ビーフ
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この数時間で、私が発した単語は、ビーフと、チキン。その二つだけだ。
ベルトコンベアまで白い部屋、色があるのはビーフとチキンにヒューマンだけの、七時間五十五分労働。
私達の仕事は、数多のエアラインが空の上でサーヴする機内食に使われる、ビーフとチキンを仕分けすること。
流れてくる生鮮肉の内訳は、ビーフよりもチキンの方が圧倒的に多い。鳥インフルのパンデミックでもあれば、ビーフの提供量が上回る場合もあるけれど、そう滅多にあることじゃない。
にも拘わらず、実際に空の上で消費されるのは、チキンよりビーフの方が圧倒的に多い。地球人類の七人に一人とされるヒンドゥー教徒はビーフを食べないことが多いけれど、逆に言えば、七人に六人はビーフを食べるわけだから。
飛行機にはそれほど余剰のスペースがあるわけじゃないから、食糧庫に積まれる機内食だって、ビーフの方がチキンより多くなる。
飛べない鳥は、機内食になってからさえ飛ぶことを許されない。
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