episode1~ビデオテープ3
黒い長方形の物体が汚いちゃぶ台に鎮座している。
異質な存在であるかのように感じるのはこれを手に入れた状況にあるのだろう。
俺は冷やしたビールを持ってくるとテレビの前にある座椅子に座り、ビデオテープを手に取った。
しっかりと拭ったために土や葉の汚れは見当たらない。
表面は傷もなく綺麗なものだ。
咄嗟に隠したのには半々な訳がある。
もしも…もしもこのビデオテープに「ヤバい何か」が映っていれば、もしかするとこれ一本で企画ものが作れるかもしれない。
それもゴールデンで。
そうなったら…デカい仕事だ。ここ最近はつまらないグルメものばかり撮らされてきた。
心霊だってなんだっていい。
うちの会社が企画して出せれば実績になる。
俺はビデオテープをためつすがめつひっくり返しながらニヤリとした。
まぁ、残り半分は単なる好奇心だ。
なぜか、見つけた瞬間に心奪われてしまった。
黒光りする過去の遺物。DVDに取って変わられて久しい。
仕事上、ビデオテープはまだまだ扱ってはいるが普通の家庭ならデッキも無いだろう。
見てみるか…。
シールもなにも貼られていない。
剥がしたあともない。
それゆえに多大な興味がつきない。
どうかなにか映っていてくれよ、と祈るような気持ちでデッキに差し込んだ。
ビデオテープは静かに飲み込まれた。
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