INTERLUDE 01
時の扉と茨の鎖
【時の扉】を開ける鍵は手の中にある。
でも、その鍵は【茨の鎖】で繋がれていた。
鎖はぼくの体に巻き付き、自由を奪う。未来と引き換えに入手するものは『過去の記録』、つまりは”情報”だ。
ここに来る前、管理責任者である担当教員から鍵を預かる際にこう告げられた。
「文化祭の準備のために以前の企画書を参照するとは研究熱心だね。ただまあ、保管庫は新生徒会が組織された後、最初に数年前のファイルを準備室から移動したきりなんだ。あまり整理されているとは言えないぞ」
申し訳なさそうな先生の声。だが、ぼくはその言葉にひとつの希望を見出した。
彼女は手の届く範囲でしか情報を精査していない。
それを怠慢と責めるのは流石に厳しいだろう。なぜなら先輩は副会長の身分でありながら、その役割以上の仕事と職責を背負わされているからだ。
すべてはこの学校の生徒たちのためである。
そして、ぼくはただひとりの友達のために彼女を裏切るのだ。
もはや後戻りは出来ない。地獄へと通じる道を自らの善意で突き進むのは自分の意志だ。
「仕方がないさ。こうまでしなければ、あの人には勝てない……」
自嘲気味につぶやいた後、鍵穴にキーを差し込む。
シリンダーを回し、ロックが解除されたのを確かめ、静かにドアを開いた。
視界に雑然とファイルが収められた、たくさんの書架が映る。
求めるものはただひとつ。ぼくらが生まれる、ずっとずっと前の記録。原初の物語だ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます