Chapter 5 ~学級委員長・礎清歌~ 辱めの学級会
委員長をイかせれば俺の勝ち…イかせられなければ、死。
童貞の俺に突きつけられた最悪の勝利条件。皮膚の上を無数の虫が這い回るような緊張感が身体を支配し、火照る身体に冷や汗が流れ、指先が震える。
眼前には浮遊する巨大なカッターナイフと、粘液まみれの少女。
…どうすればいいんだ?
普通に考えて、巨大な刃物を相手に触手なんかで勝てるはずはないのだが…。
……ちくしょう!思いつかねぇ!何でだ、普段あれこれ考えてるだろ!ひとつくらいあるはずだ、委員長に勝てる
「床入くん…さっきから面倒なのよ、早く死んでくれないかしら?じゃないと私が死ねないもの」
「冗談じゃねぇ…!何で俺が委員長と心中しなくちゃならねぇんだよ!」
「私の裸を見たのだから万死に値すると思うのだけれど」
「勝手に見せといて何言ってんだ!」
「別にいいでしょう?一般的な男子高校生なら、このまま死んでもいいと思えるイベントだと思うわよ?何ならあの時そのまま昇天してくれれば楽で良かったかもしれないわね」
「ものの例えだろ!そんなの…!」
「鬱陶しいわね!面倒だからさっさと肉片になってくれないかしら!?」
言動が理不尽極まりない…。
現実の委員長はとても物静かで言葉遣いも丁寧なのに、夢の中じゃ言葉遣いこそ丁寧だが、粗暴そのものだ。
暴言、暴力、暴走、なんでもありかよ。
…いや、ちょっと待て。
確か、夢は見ている人の深層心理が反映されるんだよな…?
ということは、夢の中で言ってることは、
委員長の
委員長は今までずっと、完璧な優等生として過ごしてきた…。
周囲の人間のイメージを壊さないように。
周囲の人間が思い描いているイメージ通りに振る舞ってきた。
丁寧なのに異常で、理不尽で無茶苦茶な言葉のひとつひとつが、委員長が抱え込んできた、優等生という勝手なイメージを押し付けられて、積もり積もったストレスの結晶…。
なんだ。簡単じゃないか。
目には目を。歯には歯を。
そうだよ。夢だもん。何してもいいんだよな。じゃなきゃ俺が死ぬ。こんなところで死ねるか。ヤる。
「…委員長。優等生を演じるのはもう、疲れたんだよな?」
「…ええ。もううんざりよ。いっそ誰かにこの席を譲りたいくらいね」
「そうかよ、なら……学級会の進行役くらいは代わってやるぜ!」
教室を復元する。月明かりの差す夜を明転させ、西日が差し込んで騒がしい、いつもの教室へと変える。
委員長の身体に付着していた粘液を消し去り、制服を復元する。
机を教室の中心にかき集め、委員長の手足を頑丈な鎖で縛り付け、集めた机の上に強引に拘束する。
「起立…礼…着席!」
「痛ッ…!何をするの!?床入くん!?」
「何ってそりゃあ…学級…会だよ…」
「学級会!?」
「本日の議題は…学級委員長の服装検査について…」
「何を言っているの!?」
「多数決を取ります…委員長のブレザーを脱がせたい人は挙手してください…」
可決。
「はい…それじゃまずはブレザー」
「きゃっ!?ちょっと!返してよ!」
「次に委員長のブラウスを脱がせたい人は挙手して下さい」
「床入くん!?床入くん!?」
可決。
「はい次はブラウス…」
「何するのよ!!殺されたいの!?」
「次にスカート…」
「さっきからあなた変よ、床入くん!」
「変なのは委員長じゃないか…優等生の自分のイメージを壊したいんだろ?ん?」
「ええ、そうよ…だからってこんなこと…」
「悪いな、手段はこれしかなさそうなんだ」
「こんなことして、あなた楽しいの!?」
「楽しいさ、品行方正、文武両道、秀麗寡黙、成績優秀な完璧優等生の委員長を脱がすなんて、この世で最高の快感だからな…」
「…ッ…変態…!」
「いいな、その表情と震えた声。そそるぜ、もっと罵って貰おうじゃねぇか。さてみんな、学級会を続けようか」
「まさか…!これ以上脱がすの!?」
「当たり前だろ?」
「嫌…やめて…」
「はい、スカートも没収…の前に」
「これ以上…何するのよ…」
「委員長のパンツが何色か予想して投票してもらいたいと思います。ちなみに見事的中した人は没収したパンツを貰う権利を得られます。黒だと思う人は挙手してください」
三票。
「白だと思う人ー?」
十一票。
「…その他?」
赤・青・ピンクで合計二十票。
はいてないに一票。
泣き叫ぶ委員長から無慈悲にプリーツスカートを奪い去る。
「…イイ趣味してるじゃねぇか、委員長。
テンプレ通りに穢れ無き純白パンツかと思ったが黒レースとはな。制服は復元したけど、下着まで復元した覚えは無いぜ?おいおい、さっきまでは、「もうちょっと見てもらおうかしら」とか言ってたくせによ…何だ?何とか言ってみろよ…」
「……。」
答えはなかった。
代わりに微かな嗚咽が聞こえた。
「チッ、無視かよ…。まぁいいや…。次に下着です。下着も脱がしたい人は挙手して下さい」
「…もうやめて!私が悪かったわ!お願いだからやめてっ!」
「ダメだ」
もちろん満場一致で可決だった。
「おめでとう…委員長。これで晴れて完璧優等生のイメージとはおさらばだ。これからは皆の
「嫌…嫌ぁ…お願い…お願いだから…やめてぇ…!」
「これにて…学級会を終了します。お疲れ様でした、学級委員長。」
「らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
夕暮れの教室に、少女の叫び声が響いた。
それは皮肉にも、彼女が「
「やったじゃない雄真!まさか童貞のアンタに鬼畜ドS野郎の素質があったなんて思いもよらなかったわ!見ててゾクゾクしたわよ」
いつもよりハイテンションなルージュ。
「そりゃどうもな…でも委員長を…」
「いーのいーのそんなの!どうせ夢だもん、童貞卒業とはいかなかったけど、大きな進歩よ!パンツ見せてあげるわ!」
「見たくねぇよ…」
朝日が出てくるはずの東の空はまだ暗いままだったが、俺たちは帰路につく。
「最低だ…」
満足げなルージュを尻目に、後悔と罪悪感に苛まれながら俺はそう呟いた。
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