第26話 ソフィーの意思
【ソフィーの意思】
オレリーはルーカスの部屋に来ていた。
「この度は、当家の娘が多大なるお世話になるばかりか、大変身に余るものまで・・・」
オレリーはお礼と一応、形式上の挨拶からは入ろうとした。なんと言っても半神である、不敬は出来ないと考えた為だった。
「オレリー様、形式的な挨拶は不要です。ご用件をお話し下さい。」
オレリーの挨拶を遮ったのは単に面倒臭かっただけで早く話を聞きたかった。こうやって夫人が来たと言うことは諸手を挙げて賛成した訳では無いと踏んでいたからだ・・・
「はい、まず、様は不要です。オレリーと呼び捨てで呼んで下さい。」
「ソフィーのお母様に呼び捨ては出来ません、では、オレリーさんと呼ばせて頂きますので、ご用件をどうぞ!」
「はい、単刀直入に申しあげます、眷属はどうしてもソフィーで無いと駄目でしょうか?」
「反対ですか?、宜しければ理由をお聞かせ下さい。」
やっぱりそう言うことか、雰囲気からすると恐らく夫人の独断専行だろう。
「ソフィーはまだ、13です、幼すぎてお役に立てず、ご迷惑を掛けるのではと思います。」
「役に立つか立たないかは判りませんが、幼すぎるという点では同じ考えです。」
「では・・・」
オレリーの表情が明るくなった、もしかすると俺がソフィーをその気にさせて要求していると思っていたのかも知れない。
「はい、侯爵家とは何も無かったことにして構いませんよ。」
「そうですか、安心しました。」
「私はソフィーから希望があったので仕方なく、ご両親の承諾があれば考えると言っただけです。実を言えば例え何歳であろうとも親の承諾は必要ないんです、この国の法律と眷属の約定は関係有りませんから・・・」
「ただ、ひとつだけ、無かったことにするのは構いません、ただし、眷属の盟約は既に発動していますので誰かに私の事を含め少しでも人に喋れば死が訪れますので沈黙の掟を守って下さい。」
「はい、判りました。しかと心に焼き付けておきます、侯爵にきちんと伝えておきます。」
オレリーは安心して出て行った。
どうやら断る理由はそれだけでは無さそうだが、他家の事情に踏み込む必要は無いだろう。
「久志、あのお母さん何か隠してるよ」
「奈津もそう思ったか?、うん、俺もそう感じたよ、でも、俺たちが立ち入る問題では無さそうだ、正直、ソフィーがあそこまで一生懸命だったから眷属にしても良いかと思っただけで、年齢の点は気になっていたんだ・・・出来れば最低でも成人していて欲しいからね。」
「それでも15じゃないロリコン」
「お、おまえそれを言うならお前はショタじゃないか?、今の俺は16だぞ!」
「うぅ、元の久志に戻りなさいよ!!」
「奈津、そろそろ送っていこうか?」
「何処に?」
「向こうの世界に決まってるだろう?、明日から会社だろ、夜帰るより早めに帰っていた方が良いぞ」
「あたしも王都に一緒に行くよ」
「会社はどうするんだ・・・」
「うん、もう会社は辞めた・・・」
「えぇーーっ、眷属にならなかったらどうするつもりだ?」
「あら、久志は私を眷属にしない訳?」
「いや、お前が良ければするけどある程度、こっちを見てから決めた方が良いと思って・・・」
「もう決めたわ、魔法使いにも成れたし、最悪、眷属にならなくても食べていけるし・・・帰る気は無いわよ。もちろん、一時的なら別だけど・・・」
「お前がそう決めたのならそれで良いけど、良く会社を直ぐに辞めれたな?」
「うん、調度、派遣の店舗の契約が終わった所だったからね、連休明けたら研修を受けて次の店舗に派遣されるからどうせなら区切りの良いところが迷惑を掛けないから・・・」
「そうなのかぁ・・・ん、それを言うなら俺もそうだなぁ・・・丁度プロジェクト終わって連休明けから次のプロジェクトが始まるらしいからその前に辞めるか・・・生活資金に困ってる訳でも無いしな。」
「うん、そうしましょうよ、王都から帰ってきたら二人の家を見付けましょう。」
「二人の家で無くて俺たちの家でしょう。」
「同じ様なもんよ。」
「話変わるけど、ソフィーの件、一波乱有ると思うわよ。」
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ソフィーの部屋
オレリーが戻ってきた。
「眷属化の件は断ってきたわ、まだ、幼いからと言ったら了承してくれたわ」
「いやよ、あたし、ルーカスの眷属になるんだから・・・」
「馬鹿な、ソフィが嫌がってるならまだしも、ソフィーが自分で望んだことを親が断ったりして大丈夫だと思うのか?」
侯爵は本人が嫌なら向こうからの要望であっても断って問題ないと思っていた、しかし今回は向こうの強い要望だった訳ではないが本人の強い意志で有りそれを向こう側も了承していたのだから親が断ればただでは済まないと考えていた。
「大丈夫よ、彼は約束してくれた物、侯爵家とは何も何かなかった事にしてくれるってはっきり言ったわ」
「ばかな、それが当家との決別を意味するともわからんのか?」
「えっ?」
「当たり前だろう何もなかったって事はもう、一切関係ないって事だ、彼が今後もたらしてくれる利益も一切なくなる、そればかりか彼の力も宛てには出来ない。最悪な事に神の使徒の意向に背いた家としてうちは外様になるだろう。」
「俺はソフィーを説得してでも輿入れさせたかったんだが、本人が乗り気なのをなんで止める必要がある」
「これは俺の感だが恐らく彼はこの国で大きな影響力を持つ存在になるのは間違いない、そうなってからソフィーに良縁があると思うのか?」
「嫁入り先なんてソフィーの器量ならいくらでもあるわ別に上位貴族である必要はないわ」
「私嫌よ、お母様が反対しても絶対に嫌、ルーカスの眷属になるんだから、それが私の使命なの、私はルーカス様以外の所に嫁ぐ気はないわ。」
ソフィー:私はルーカス様の所以外は考えられない。一目会った時から決めていたの、例えお母様の言う事でも聞けないわ。
「訳のわからないことを言うんじゃ有りません、ソフィーにはソフィーに似合ったお婿さんを見付けてあげます。」
「いや、いやよ、いや、いや・・・」
「我が儘は許しません。」
「まて、まて、ソフィーの話も聞こう・・」
侯爵はオレリーをなだめようとしているが聞く気配はない。
「そう、じゃ、生きてて成れないなら死んで女神様に頼むわ。」
「ガシャーン」
ソフィーはそう言い残すと一切、躊躇うことなく窓を突き破って飛び降りた・・・
「ソフィーーーィ」
驚いたオレリーの声が屋敷に響き渡った。
ソフィーの部屋は3階の来客用に用意してあった。
侯爵は慌てて下を見る、そこには手足が変な方向に曲がって血だまりの中で倒れているソフィーがいた・・・
侯爵は急いで下へ降りていった・・・
オレリーはその場で座り込んで動けずに呆然としていた・・・
奈津と話をしていたらアメリアが部屋から落ちたと知らせに来たので部屋へと向かう。
ソフィーの部屋は3階だったがとても3階まで運べる状態では無かったので1階の来客用の待機部屋に臨時にベッドを持ち込み寝かされていた。
皆がソフィーのべっどのまわりを囲んでいる。
庭にあった石柱に落ちたらしく顔面はくぼみ、肋骨は折れ内蔵を損傷している様子で持っても後、数分の瀕死の状態だった。
「奈津以外は皆外に出てくれ・・・」
皆は察した様で、出ていきだした。。侯爵はオレリー夫人の手を引いた・・
「何をいってるの?」
オレリーは出て行く様子が無かった。
時間が無い・・・そう感じた俺は威圧を掛けて静かに叫んだ。
「出て行け!」
オレリーは尻餅を付き、黄色い水たまりを作って口をぱくぱくとさせているのを侯爵が引きずって連れ出した。
「奈津、大至急、ソフィーを裸にしてくれ、下着も全てだ・・・」
「ハイ」
奈津は状況を判っている、普段なら茶化すところだが短く返事をすると同時に手際よくソフィーの来ている服をはさみで裁ち切って脱がせて行った。
俺はフェンリルに変化した。
人化のままではここまで酷い怪我にはまだ、対応出来ない為だ・・・
フェンリルに変化した俺はソフィーの全身を舐めた。
舐めた後は全ての傷が修復されていった。
「えっ、スゴ!!」
奈津が思わず声をあげた・・
怪我が治ったのを確認すると、人化した俺は奈津に公爵達を入れる様に促した・・・
「うわーっ、治ってる?」
アメリアが声を上げて驚いている。
「そ、ソフィーは大丈夫なのか?」
侯爵が心配そうにソフィーの顔をのぞき込みながら聞いてきた。
「もう、大丈夫です、目は直ぐに覚ますと思いますが、暫くは休ませて下さい。」
ベッド脇に切り裂かれた服や下着をみたオレリーは何を勘違いしたのか?
「は、裸?、娘を裸にして何をしたの?」
オレリーは俺を睨む様に見ている。
「バシッ!」
「侯爵がオレリーの頬を思いきり叩いた。」
叩かれたオレリーは呆然と、なぜ、自分が侯爵から叩かれたのか全く理解していなかった。
「ルーカス殿、申し訳ない、」
侯爵は申し訳なさそうに深く頭を下げている。
「いえ、大丈夫ですよ、気にしないで今はソフィーに付いていてあげて下さい。」
俺は奈津を連れて部屋へ戻った。
部屋へ帰るとアメリアがやって来た。
アメリアがメイドから聞いた話によると事故ではどうやら自分で飛び降りたみたいだと言うことらしいと
俺と奈津は顔を見合わせた。..
なにも言わなくても何となく事態の展開は想像が付いていた。
「でも、ここまでなるとは思わなかったわ~」
「あぁ、俺も流石にここまでとはな。」
「なに、なに、ルーカス達は原因を知ってるの?」
「大人の話だ・・・」
「えーーっ、ずるーい」
そう言ってアメリアは頬を膨らませている。
「あ、でも、ルーカスって回復魔法が使えるんだね、スゴーーィ!」
「正確には俺は擦り傷ぐらいしか使えない、使えるのはシロだね」
「ふーーーん・・そうなんだぁ・・」
(多分こいつは何も分かってないだろう・・・ま、別にそれはそれでアメリアらしいと言得るんだが・・)
「アメリアこれをやるよ。」
おれはそう言って召喚球を手渡した・・・
「えっ、これってもしかして召喚球?、どういう事なの?」
アメリアは突然渡された召喚球に驚いていた、なぜなら召喚は基本的に1度きりだからだ。
「こういう事情になった以上、召喚獣の契約は続けられないだろう、だから解除しようと思う、 アメリアが新しい召喚を行えば自動的に俺との契約は解除される。今回はアメリアの所為ではなく俺の自己都合だからペナルティは無しだ・・・召喚獣の契約は解除されても従者というのはお前が俺を首にしない限り変わらない。」
「でも、契約って解除出来ないんじゃ無いの?」
「あぁ、普通はな、だが俺は普通の召喚獣ではないし、それに今回は特例だ・・・このまま、一緒に寝ない、風呂にも入らない状態が続けば、お前、あと数日で死ぬぞ!」
「まだ、死ぬのは嫌だわ。」
「ルーカスが一緒にお風呂に入りたいのなら入ってもいいよ、眷属だってルーカスがしたいのならしても良いのよ」
「それを決めるのはお前だ、今のままだと、どっちを選んでも無理矢理感が残る、無理矢理にしても意味は無いからな・・・」
「こっちの世界の眷属には人数制限が無いから慌てる必要もないし、なるもならないもお前の意思でよく考えて決めるんだな。」
「うん、ありがとう、私、どうしたいのかよく考えてみるよ。獣魔契約を解約してもあたしの従者は変わらないのよね。」
「あぁ、そうだ、だけど召喚だけはして契約を解除しないと死ぬぞ、それとも体中、隅々まで 洗って欲しいか?」
「ガツ!」
「ルーカスのスケベ・・・」
奈津が本の角で思いっきり殴ってきた。、こちらの本の角には金属が使ってある
「イテーッ、」、なんで奈津が殴るんだよ!
「久志が変態みたいな顔で言うからでしょう。この変態、エロ親父」
奈津が俺の頭をスリッパの角で殴った、わざわざ角でだ・・・軽い冗談なのに・・・
(茶目っ気が理解出来ない朴念仁はほんとうに難儀だと思った。)
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2018/09/09:誤字脱字の修正と改編を行いました。
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