第一章 召喚

第2話 召喚1

【召喚1】


 朝、目が覚めると窓辺から差し込む朝日はいつもと違って柔らかく、暖かく感じた。

 今日は待ちに待った生涯一度の従者の召喚の日がやって来た。

 身支度して家族へ教会へ向かうのがもどかしい・・・


 ぐずぐずして居る妹を蹴り倒したくなるのを押さえて家族とともに教会に向かう。

 教会は馬車で10分ほどの所にある、教会に着くと今年成人を迎える者達が5名集まっていた。もちろん、領内で今年成人を迎える者が5名という訳ではない、皆それぞれ近くの教会で成人の義を行うので、この教会で今年成人の儀を行うのが私を含めて6名ってことになる。

 成人の儀は毎年、その年に成人になる者を対象に春節に行われている。


 長い司祭の話の後にやっと待ちに待った召喚球を渡す儀式が始まる

 一番は領主の娘である私だった。基本、貴族の爵位の応じて順番が決まるが、この面子では私しか貴族はいなかった為、1番とは言っても一人しか居ないのは笑えない・・・

 平民は召喚球を貰う事は出来ない。


 司祭から恭しく召喚球を受け取り、いよいよ召喚の式に入る。召喚自体は教会の庭で行う事になっているので庭に移動して召喚を行う

 召喚の呪文を唱えると足下からオレンジ色の線が走って行き魔方陣を描いていく・・・


 「んんん・・・」


 まだ、魔方陣が完成しない・・・・

 「アメリア!、もっと魔力を流して!」

 母親の声援が遠くに聞こえる

 (流してるつもりなんだけどなぁ・・・もっと、もっと、もっとなの?、)


 限界に近いと思った時、魔方陣が完成して魔方陣内に霧が立ちこめてきた・・・風が舞い始める・・・・


 霧の中から何か影が現れてきた・・・

 ・・・4本足・・・オオカミ?


 「ヒッ、ヒェーーッ、フェンリル・・・フェンリルだ・」

 現れたのは体高が2m、体長に至っては5mは有るかと思えるフェンリルだった。

 普通のフェンリルは白っぽい灰色の毛並みなのに目の前にいるのはパールホワイトのフェンリルだ。


 フェンリルの上位種は黒い毛並みと言われてるがそのさらに上位種の神獣フェンリルになると毛並みがパール状に輝いていると伝説には記されていたが誰も実際に見た者はいなかった。


 「ど、どうしよう、フェンリル呼んじゃったよ。」

 「おまけに神獣ぽいよ。」


 (あ、漏れちゃった・・・)

 (取り繕うにも足が震えて動かない・・・だ、誰か、助けて・・・)


 『我を呼び出したる者はそなたか?、他かが小娘ごときが、契約出来ぬ時はお主を喰うてやる』

 フェンリルの発する威圧はもの凄くてとうとう立っていられずに尻餅を付いてしまった。

 (あぁーーっ、もう駄目、食べらちゃう。お母様ごめんなさい)


 「えっ、し、喋った・・・」

 (召喚獣とは召喚主は意思疎通は出来るとは言われているが通常、召喚獣は人語を話す事は無いはずなのにこの子は特別なの?。)


 『契約の方法を述べよ、戦いか?、それとも条件の提示か?。』


 「えっ、まだ、チャンスはあるの?」

 戦って勝てる訳は無いわね、条件、条件って、どんな条件を出せば良いの?、受け入れられなかったら食べられちゃうのよね。


 「条件を提示するわ!」

 もう、破れかぶれで取り敢えずは答えた。


 『よし、では、お主の条件を述べよ、気に入らなくば食ってやる。』


 どうしよう,どうしよう、何も思い浮かばないわ・・・

 「契約してくれたら沢山、可愛がってあげます。」

 とっさに出た言葉だった。


 『良いだろう、さぁ、我に名前を付けるが良い』


 えっ、いいの?、こんな条件で良い訳?、もしかしてフェンリルって案外チョロいの?

 取り敢えずは一安心だわ、名前、名前ねぇ・・・


 「じゃ、シロ、シロでいいかしら?」

 『ウム、まあいいだろう』

 (カーッ、俺は犬かよ、参ったなぁ、女神の事が無けりゃ絶対拒否だな。)


 「我、汝に命ずる、魔召喚の掟を持って生涯、従者として仕えよ」

 『主よ、心得た』

 

 辺りをまばゆいほどの光がフェンリルとアメリアを包み込み暫くすると光が消え去った後には、太陽の日を浴びてパールカラーに輝くフェンリルとアメリアが現れた。


 ちょっとしたサプライズもあったけど何とか召喚獣と契約出来て良かったわ。」



「ふぅ、何とか終わったわ。」

 正直なところかなりビビったし、契約出来るとは思わなかったけどほんとに良かった。食べられなくて・・・


 ふと、周りを見ると家族は固まっていた・・・


 「・・・・」

 「オーーッ、アメリア凄いぞ、フェンリルを召喚するなんて・・・おまけに神獣とはな、ロッシーニ家、初の偉業だ」


 「ほんと、凄いわ、アメリアちゃん、ロッシーニ家の娘として何処に出しても恥ずかしくないわ。」


 家族からは賞賛の嵐だ・・・だが、何故か近寄ってこない。


 「もう、契約したから近づいても大丈夫よ。」

 「そ、そうか?」

 父親のネルソンがフェンリルに付かずいてきた・・・


 「グルルル・・」

 「主よ、此奴食って良い?」


 「オワーッ、」、ネルソンが慌てて後ろへ後すざりする

 「駄目、人間を勝手に食べちゃ駄目よ、帰ったらちゃんとご飯をあげるからそれまで我慢してね。」


 「分かった、早く帰るのだ、腹減った。」

 「じゃ、帰りましょ、とは言ってもその体じゃ馬車には乗れないし、おうちにも入れないわね。」

 「どうしようかしら?」


 「主、心配は要らない。」

 「ポン!!」

 フェンリルは小型化のスキルを使って柴犬ぐらいのサイズに小型化した。


 「きゃっ、可愛いーー、」

 辺境伯夫人のリネーネがしゃがみ込んでシロの頭を撫でている・・・

 「シロちゃん可愛いわね。」

 シロはブンブンとしっぽを振っている


 (ブハッ、パ、パンツが目の前に丸見えだ・・・な、なんとも言えないパンツが描く曲線が堪らない・・・)


 シロは実は人間なのだ、伯爵夫人のパンツを目の前にして興奮して動転していた・・・ムフッ・し・あ・わ・せ!

 (俺、幸せ!!、フェンリルも案外良いかもな)


 伯爵夫人はしゃがみ込んでシロの頭を撫でているため小型犬になっているシロの目の前には・・・そう言う状況なのだった。


 「きゃ、シロちゃん大丈夫、ねぇ、アメリア、シロちゃん鼻血、流してるわよ。どっか具合が悪いんじゃない?」


 (実は興奮して鼻血を出したなんて言える訳も無いぞ、ここはごまかせねば、しかしパンツ見たぐらいで鼻血とは我ながら情けない、度アップだったす、相当溜まってるから仕方ないか、うん、うん)


 「大丈夫、リネーネ様、小型化した時になれなくて地面に鼻ぶつけちゃいました。ハハハッ」

 シロは笑って誤魔化すのだった。

本人はそのつもりだがフェンリルが笑えるのかどうかはわからない。


 リネーネは疑う様子も無く「シロちゃん、気を付けないと駄目よ。」と気遣ってくれている。


 その様子を見て妹のメルルもシロを頭をなで回している。

 (俺はロリコンじゃ無いぞって言い聞かせながらもガン見して居る自分が情けなかった。)

 (最近、ごぶたさだからなぁ・・・仕方ないよなぁ・・・この世界は白が主流なのか・・・検討の余地はあるなぁ、これも今後の課題だ・・・)

 

 「わたし、メルル、シロちゃん仲良くしてね。」

 「メルルちゃんかぁ、可愛い名前だね、こちらこそ宜しく!」


 「私はリネーネよ、私とも仲良くしてね。」

 「はい、奥様、宜しくお願いします。」


 「やだぁ、リネーネって名で前呼んで頂戴」

 「では、失礼してリネーネ様、シロとしてアメリア様と契約しました、これからお世話になります。」

 「うーん、シロちゃんは礼儀正しくて立派ねえ、頭も良さそう」


 「もう、私の召喚獣なんだから、皆、勝手に触らないで」

 「ケチ、いいじゃない」

 妹のメルルが文句を言っている。


 「そうよ、あなたの召喚獣って事はうちの家族と同じだから私達が可愛がってあげなきゃ」

 辺境伯夫人のリネーネは白を抱きている。。。

(うぅっ、く、苦しい、爆乳に圧迫されて息が出来ない、でも、気持ちいい・・)


 「もう、都合の良い事、言ってるんだからぁ・・・」

 「ほら、お母様、シロが苦しがってるでしょ,離してあげて」

 (そんなこんなで俺は死の淵から生還した。あぁ、でも死ぬ時はこんな死に方がいいよなぁ・・とおもうシロだった。)


 「遅ればせながら儂がロッシーニ家当主のネルソンだ、シロよ、忠誠を誓い、誠意を持って仕えるのだぞ!!」

 ネルソンは当主としての威厳を持ってシロに対応した。

 (何事も最初が肝心だからな・・・甘い顔を見せると畜生はつけあがるからな)


 「俺はネルソンを睨み、威圧を掛けて返した。」

すると、ネルソンは尻餅を付いてちびっていた。。。

「フン!!」


♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*゚♪

2018/09/02:誤字&脱字を修正しました。

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