私の愛した召喚獣

字無兎

第1話 プロローグ

2018/09/02:誤字&脱字を修正

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【プロローグ】


 ここは中央大陸、中南部にあるイルメニア王国、イルメニア王国は人族を中心とした国で国王を頂点に、王族貴族による支配が行われている国家だが、多種族への差別は少ない。


 私はのアズガルト辺境領、アズガルド辺境伯の次女で私の父がアズガルドの辺境伯として納めている。


 気候は割と温暖で四季もあり、冬季でも比較的過ごしやすい気候だ、戦争はここ100年ほど起こって折らず安定していたがここ最近、隣国ダルタニアの様子が少しおかしく国境沿いで怪しい動きがあるが山脈に阻まれているために国境を越えるには至っていない。


 この国では15歳で成人となる、成人の時に貴族の子弟は召喚獣を召喚し自分の従者として従える、召喚獣のランクによって評価されるため、高評価の召喚獣を召喚した場合は将来が約束される。


 女性であればより高位な所へも嫁ぐ事が可能になり男子であれば高級官僚の地位が約束されると言っても良いほど召喚獣と密着した関係を持つ国だ。

 その訳は300年ほど遡るのだが、また別の機会に語ろう。


 召喚獣は召喚士に忠誠を誓っているので召喚者が死ぬと召喚獣も主の死から1ヶ月以内に死ぬ、つまり一生を供に過ごす事になる。

召喚出来ないもしくはあまり程度が低い召喚獣だと廃嫡される事もある、つまり召喚獣のいない者は貴族と見なされない。と、ただ、現在は召喚獣に対する認識は時代と供に変わり、まあ、貴族としての一つの通過儀礼と化している部分もあった。


 そんな事情もあって自分、我が子の将来の決まる、成人の召喚イベントは本人ならず家族にとっても一大事なのだ。


 一生を供にする召喚獣の召喚の方法は通常の召喚獣を召喚する方法と事なり教会が用意した召喚獣の核を受け取って、その核に血の盟約を結んでから召喚を行う事により他人に譲渡したり、他の召喚獣と入れ替える事が出来ない様に工夫されている。


 つまり、一度呼び出した召喚獣は例えカスでも一生、付き合って行かなければ成らない。

 もちろん、召喚獣が死ぬか本人が死ねばそこで契約は解除となる。

故意に召喚獣を殺したり、死ぬ様な状況に追い込んだ者は爵位、私財没収の上、追放となる。


 まれに神獣クラスを呼び出せたりすると王家への嫁入り、や婿入りの話も出てくる位、貴重である。ここ100年以上皆無である、神獣が召喚された実例は無い。


 今回、召喚の儀式を行う辺境伯の次女、アメリアも期待とプレッシャーで心が潰されそうであった。

 (ゴブリンやスライムだったらどうしよう。あぁぁ、、変な事は考えない方が良いわ、何時も碌な結果にならないから・・・シルバーウルフなんかが良いわねぇかっこいいし・・・あぁ、でも契約出来ないと困るからエレメンタルフォックスでも良いなぁ・・・)


 彼女は新米召喚士にシルバーウルフを呼び出せる可能性は砂浜に落ちた砂粒を探すぐらい大変な事とは分かっていなかった。


 エレメンタルフォックスにしても高位の魔力の持ち主で無いと契約は難しい、脳筋の剣士には無理な相談である。

 仮に呼び出されても行為になれば成る程、契約の条件は厳しくなる事も考えていないのだった。


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□■□ その頃、日本では・・・ □■□


 篠崎久志 34歳、商社マン、妻は美恵子32歳、商業デザイン関係の会社で働いている、最近すれ違いが多く食事すら一緒に食べたのが何時だったか分からない。


 ある金曜日の深夜23:00、某商社ビル内で彼は残業規制の為、消灯されたフロアのディスクでスタンドライトを点けて立替経費精算書を書いていた。これを月曜の朝一に出しておかないと今月の給与に反映されない為、ひとり領収書の束と格闘していた。


 疲れてふと、天井を見上げた時意識が遠のいた。


 意識を取り戻すとそこはお約束の何もない空間に女神がいた。

 見た感じでは20代後半、ちょっとお肌の曲がり角を曲がった感じか?、よく言えばスレンダー、ストレートに言えば出てる所は出てないしくびれもない文字通りストレートな女性だ。


 「あぁ、俺は死んだのかぁ、きっと過労死ってやつだなぁ・・・」

 「いわゆるテンプレで異世界転移って奴かなぁ・・・・」


 「残念ですが、あなたはまだ、死んでませんよ。

 お願いがあったのでちょっとこっちへ来て頂いただけです。」


 「ん、死んでない?」

 「はい、ぴんぴん、いえ、お疲れのようですが、死んではいません。」


 「では、そのお願いとはなんですか?」

 「お気づきの様に異世界に行って頂きたいのです。」

 「えっ、生きたまま転移ですか?、それはちょっと困ります、仕事もありますし、勝手に抜けたら首になっちゃますし・・・」


 「取り敢えずずっとって事では無いのでその辺は先方とご相談して下さい」

 「帰れるんですか?」

 「はい、割と頻繁に帰れますので週末だけとか可能ですよ。」

 「いや、いや、それでも週末ぐらいゆっくり休みたいのでお断りします」


 「はぁ・・・・残念です。」

 女神はいかにも残念そうに下を向いて考えていた、明らかに何か不都合な事を言いたそうな雰囲気がぷんぷんしている。


 「何か不都合があるのでしょうか?」

 俺は女神の顔を伺いながらおそるおそる聞いて見た。なんとそこには驚愕の事実が隠されていた。


 「もちろん、断るのも自由です、ちゃんと元にお返ししますけど・・・」

 「そ、その、奥歯に物が挟まった言い方は止めて下さい。」


 「わかりました、では、はっきりとお伝えしましょう。本当は本人に伝えたりする事は禁止なんですが、今回は事情がありますので特別という事にします。」


 「・・・はぁ・・・」


 「ずばりあなたはこれから亡くなります。」

 「えーっ、マジっすか?、やっぱ過労死ですよね。」

 (あぁ、労災で両親は喜ぶだろうなぁ・・・)


 「違います、事務所荒らしに遭遇して刺されて翌朝、掃除の方に発見される直前まで苦しんで死亡します。

 そういった不遇の死を遂げた場合、恨み辛みと言った念が災いして次の転生は虫です。それもGと言うゴミ虫に転生する事になってます。」


 「お、俺、どんだけ不遇なんですか?、まだ30前半なのに嫁には邪険にされ、次は虫なんて可哀想すぎます。」

 (マジかよ、いくら何でもGはないだろう、あんまりだよ、俺の人生なんだったんだ。)


 「あっ、今聞いたら、直ぐに帰れば刺されずに済みますよね。」

 (先が分かってれば回避すれば良いだけの事じゃんか。)


 「残念ながら無理です。あなたが生き延びるすべは私の提案を受け入れるしか道はありません、なんて言っても女神が言うのですから間違いはありません。」


 「その提案とはなんですか?、さっきの転生?」

 (今一、信用した訳では無いけど、取り敢えず聞くだけは聞いて見るしかないか?、案外、悪くない話かも知れないし・・・)


 「あなたには異世界のある騎士の召喚獣になって従者として心身共に助けてあげて欲しいのです。現在、魔力もそう、大きくないので最長でも24時間が限界です、次の呼び出しも24時間以上のインターバルが必要になります。」


 「召喚獣って、俺人間ですけど・・・」

 「その点はご心配なく、向こうに行ったらちゃんとケモノに変身します、もちろん、戻ってきた時には人に戻ります。」


 「はぁ・・・ケモノかよぅ・・・・」

 (け、ケモノって一体何だ、どうなるんだろう、このまま苦しんで死ぬのもイヤだ、だからってケモノになってこき使われるのか?、でも戻ってこれるならまだチャンスはあるかも)


 「分かりました。その、召喚獣とやらになります。」


 「良いでしょう、やっと私の善意を分かって頂けた様で嬉しいです。」

 「では、ご説明します。今回は初回なのでここから転移して頂きますが、次回からは先方と相談して召喚の日時を決めておいて下さい、その際は人気の無いところから召喚されないと大変な事になってしまいますので特に注意して下さいね。」

 「召喚から戻る時は一度行った事がある場所なら何処へでも戻る事は可能です。」


「デフォのスキルとしてマルチ言語理解、形態変化(小型化)、咆吼のスキルを与えます。これは経験によってのびる物とのびない物があります、言語理解はカントスしてますのでのびる事は有りません。スキルは次の通りです。」


 マルチ言語理解

  全ての言語の会話、読み書きが可能になります、このスキルはこちらの世界に戻ってきていても有効です。


 形状変化 (小型化)

   体型を小さくする事が出来ます。召喚獣は中には大きい場合もありますのでその際は便宜上、小型化出来た方が都合が良いためです。こちらに戻って人化している時は基本無効になりますがレベルが上がってくると色々と便利になりますよ。


 咆吼

   吠える事で相手を威圧する事が出来ます、格下の相手の場合は気絶させる事も可能です、逆に上位格差があれば通用しない場合もあります、これはレベルを上げるとより強力になります。こちらは、人化している時も有効なスキルです。


 「ふむぅ・・・・・」

 言語理解なんかはこっちの仕事では便利だよなぁ、正直語学が堪能になるのは助かるが、咆吼ってなんだよ、こっちで人が吠えたらおかしいだろ?、へたすりゃ檻付の病院に送られる可能性もある。

 魔法は使えないのかぁ?、異世界だったらやっぱり魔法だよなぁ」


 「あのう・・・魔法は使えないんですか?」

 「向こうは魔法がある世界なので可能性はありますよ、ただ、向こうの世界で魔法が使える人は数%位ですけどね。」


 「これは特別サービスなんですが、最初のうちは召喚される度にスキルをランダムで一つ与えます、これは召喚されて全く使い物にならないではどうしようもないですから、限定の処置なんで途中からは自力で取得してください。

運良く魔法のスキルを得る事が出来れば魔法が使える様になりますよ。


 あたしの加護を与えてますので本人の努力次第ではランダムスキルの他に自力でスキルを得る事が出来るかも知れません。あくまでも可能性ですが・・・」


 「何か、質問がありますか、無ければそろそろ行って貰いたいのですが・・・」


 「あっ、最後に一つだけ、こちらの世界の物は持って行けますか?」

 「はい、可能ですよ、魔方陣の中の物は一緒に転移されます。魔方陣の大きさはあなたを中心に1.5mです。そこから出た分は転移されません。足なんか出してると切れちゃいますので注意して下さいね。」


 「では、お願いします。」

 「・・・・・・・」

 

 「あのうどうすれば良いんですか?」

 「ちょっと待って下さいね。、あっ、向こうで召喚に戸惑ってるようです、そのまま、転送されるまで暫くお待ち下さい。」

 「あっ、私に用がある時は、『女神様、女神様、お話が有ります』と頭の中で念じて下さい。」

 「私が美人だからって頻繁に呼んだら駄目ですよ。」


暫く何もない空間でぼーっと立っているtからだが薄くなるのを感じると同時に意識も薄くなってきた・・


 どうやら転送が開始された様だ・・・


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閑話

 「あなた、きちんと伝えるべき事を伝えなければ駄目じゃない」

 久志が召喚されていった後、やって来た女神の指導官は女神を叱責していた。


 「えーっ、何の事ですかぁ?」

 女神は不満げに口を開いた・・・


 「まず、本人の体の事、それに召喚者の使命をきちんとサポートする事を伝えないといけないでしょ。」


 「体の事は本人も回りも気がつかないので知らない方が良いと思いますよ。、召喚者の使命は、ちゃんと召喚者を心身共に支える事と伝えましたから大丈夫ですよー」


 「ぼこっ、イターィ」

 「なんで、殴るんですかぁ?」


 「あなたが勝手に判断する事ではありません、新人なんだからきちんとマニュアルに沿って説明しないさい、わかった?、ねぇーっ、わかったの?」

 指導神は女神の顳?《こめかみ》をぐりぐりとしている。


 「はい、分かりました、分かりましたから許して下さい。」

 「じゃ、今後もちゃんと見て、サポートする事、見忘れてポカやったら1000年ぐらい下界に落とすわよ」


 「ヒーィ、それだけは許して下さい。ちゃんとやりますよー」


篠崎久志は召喚によって死ぬ事からのがれた様に見えたが実は、その日のその時間に死ぬという運命からは逃れていなかった。

 実際の所は久志は死んだのだ・・・

 魂と記憶だけの残して元の体と寸分変わらぬ体に新しく作られたのだった。

 久志は正確には人間ではなくなった。本人はまだ、知らないが実は不老不死になってしまっていたのだった・・・

 本人がこの事を知るのはまだ、先の話だ。

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