第21話 電鋼鉄火作戦(8)

Stiyl Art 1982年 5月9日 13時26分23秒 魔天 騎士学校演習場


 そもそもの発端は、俺が自分で招いた失敗だったんだ。努力を怠った結果、俺は周りの奴らに置いていかれた。偶然その場にいたアザトスを不満の捌け口にしてやろうと思ったんだ。衝動に身を任せた俺は止まらなかった。


「アニキ!」


 駆け寄るアザトスに俺は水筒の水を浴びせた。アザトスは眉間に皺を寄せて「バカ野郎この野郎」と言っていたが、きっとその瞬間までは悪戯か何か、冗談の類だと思いこんでいたのだろう。だが俺は、その時初めて自分の魔核を認識した。Cs'Wの、水の魔力の奔流を体のあらゆる場所で感じることができた。


「……!!」


 次にアザトスの姿を見たとき、俺はもう一つ新たな感覚に気づいた。手を伸ばしてさえいないにも関わらず、アザトスの体に触れているような感触を手の中に感じたのだ。水が俺の手に代わったと直感的に理解した。そして次の瞬間にその水は弟の肉体を容赦なく切り刻んでいった。爪でひっかくようなイメージで、俺はじっくり痛めつけてやった。コンプレックスが憎悪に変わったのだ。


 無論、俺はすぐさま取り押さえられ、その後すぐに退学処分となった――――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る