第12話二日前

 木曜日、そして金曜日とバスケットボール大会が続き、朴のチームは優勝した。幸い朴に怪我はなかった。

「さんざん心配させといて、優勝かよ。」

和馬が悪態をついたのだった。

 そして、金曜日の部活の時、桜田先生が入ってきて、またもや深刻な、いや、陰鬱な表情でみんなの前に立った。

「皆さん、残念なお知らせです。沢口先生、一向に熱が下がらないそうで、明後日の演奏会に出ることは不可能だそうです。」

部員一同、今度は声も出ない。

「仕方ないわ。沢口先生のパートをみんなで分けましょう。」

「うそ、今から?」

和馬は顔面から血の気が引くのが分かった。

「フルートはそれほど忙しくないから、フルートを増やしてみるわ。朴くん、いいわね?」

朴はいつのものさわやかな笑顔、ではなく、愕然とした顔で頷いた。


 それから猛練習。それでも学校は7時に完全下校である。先生方さえも残ることはできない。次の日は朝錬をして、学校が昼まであったので、その後はずっと夜まで練習をした。

「渡辺君、そこもっと強く、しっかりと!」

「はい!」

「佐々木君、ここはもっと滑らかに!」

「はい!」

「朴くん、出だし遅れないで!」

「はい!」

と、桜田先生の指示は白熱した。それでも本番は明日である。とにかく何とか形にしなければ。沢口先生の分も頑張らねば。吹奏楽部のみんなは、力を合わせ、心を一つにして頑張った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る