第11話波乱尽くし
本番まであと一週間になった。1月21日月曜日。この日は凌駕高校の推薦入試の日で、学校はお休みだった。なので部活も休みだった。都内では珍しく、雨から雪に変わり、午後にはだいぶ積もった。さすがに高校生になると、雪遊びをしに外へ出たりはしない。毎日朝練で土日も部活だったので、この日はそれぞれのんびりと過ごした4人だった。家では楽器の練習もできない。もうだいたい仕上がっているし、リラックスした休日を過ごせたのだった。
翌日、学校では授業があったが、沢口先生が朝から元気がなく、
「すみません。昨日子供と雪でかまくらを作ったので、どうやら風邪を引いたみたいです。今日は早退しますので、後はお願いします。」
そう言って、帰ってしまった。本番まで日がないのに大丈夫かな、と和馬たちは心配したのだった。
翌日はバスケットボール大会で、ほとんど授業もなかった。和馬と角谷と佐々木は、一試合も出ずに応援のみ。それも風邪をひいてはいけないので、声もあまり出さない。独りでも欠けたら、の恐怖。それでも朴がバスケをしているところを何となく見たくて、自分のクラスそっちのけで6組の朴を3人で探した。
「あ、いたぞ、ヒョンス。」
佐々木が見つけた。やはりひときわ背が高い。
「おー、やってるやってる。さすがに上手いな。」
角谷が腕組みして頷く。3人でしばらく朴の試合を見ていた。だが、試合を見ているうちにだんだん前へ乗り出していく。
「ああ、危ないって。」
「今の、反則だろ!」
つい、朴の指を気にしてしまう。ハラハラして、つい応援に熱がこもる。
試合が終わって、朴が3人の見ているところへ来た。
「なに、俺の応援に来てくれたわけ?」
朴がにこやかに言う。試合は楽勝だったようだ。はっきり言って、3人とも点数など気にしていなかった。
「ヒョンス、指痛めてないか?」
佐々木が開口一番、そう言った。
「え?指?大丈夫だよ。」
キョトンとして朴が答えたので、3人は一斉に怒った顔になった。
「お前な、こっちは心配したんだからな。」
「そうだぞ、転ばされそうになったりしたし。」
和馬、角谷もそう言った。朴はただ笑って3人の肩をポン、ポン、ポンと順番に叩き、他のチームメイトの所へ戻って行った。3人は憤懣やる方なき様子でふーっと息を吐いた。
放課後、部活の練習をしていると、桜田先生が入ってきて、
「みなさん、大変なことになりました。」
と、真剣な顔で言った。部員が顔を上げて先生を見ると、桜田先生は更に続けた。
「今日連絡があって、沢口先生はインフルエンザだそうです。」
「はー!?」
みんなで一斉にそう言ってしまった。
「インフルってことは、本番は?」
遠野先輩が聞くと、
「ギリギリだわね。火曜日に熱が出たわけだから、日曜日には出て来られるかも。」
「うわー。ギリギリすぎ。先生、何やってんだよ。」
「当日まで練習できないんだな。」
和馬、佐々木もそう言った。
「とにかく、それぞれ自分の練習をしましょう。そして、インフルにかからないように、頼むわよ。」
「はい。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます