第7話冬の金管楽器
とうとうテスト期間に入り、部活は一週間休みになった。一応、一通り曲を通せるようになっていた。そして、みんな頑張ってテストを乗り切り、12月の初旬にテストが終わった。後は本番までほとんど休みなく部活に励む。
そろそろ季節は冬。東京の冬は暖かいとは言え、12月の下旬にもなると暖房をつけていない部屋は寒い。今年の冬は早くから寒い。そして、和馬は初めて、金管楽器がこんなにも冷たい事を知ったのだった。
「うへえ!何これ、冷たすぎ。カイロ持ってくればよかった。」
和馬はトロンボーンを手に取った途端悲鳴を上げた。遠野先輩はカイロを持ってきていて、
「まずは楽器を少し温めてから握るといいよ。」
と言った。
「さすが先輩。」
和馬はそう言ってトロンボーンを置いて手をポケットに突っ込んだ。
「だいぶ形になってきたわね。角谷君、完璧。」
桜田先生がみんなで合わせた後、角谷に向かって親指を立てた。角谷はあまり体が大きくないにも関わらず、全身でドラムやらティンパニやらシンバルやらを操り、演奏中はすごく大きく見える。
それにしても、各楽器が一つずつなので、間違えたり音が消えたりすればすぐにわかってしまう。自分にもよくわかってしまうので、常に緊張する。が、緊張することに慣れているとも言える。
「ここはもうちょっと強弱をつけよう。」
指摘された箇所をもう一度演奏する。指揮をする桜田先生もパワフルである。人数が、というか楽器の数が少なくても、強弱をつけることでメリハリをつけ、フォルテのところでは迫力を持たせようという事になっている。歌もそうだが、楽器というのは小さい音できれいな音を出すというのが一番難しい。これもまた自主練が必要である。
「今日も疲れたな。」
苦笑いで佐々木が和馬のところへ来た。部活が終わって、みんなで帰ろうというところだった。普段土日は部活が休みだが、今は土日も休みがない。冬休みは年末年始の4日間以外は毎日練習である。
「冬休み、風邪ひくなよ。」
遠野先輩に言われて、みなへへっと笑った。高校生男子、自分が風邪をひくとはあまり思っていない。それでいて実際はひくものだが。
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