眉唾物のレゾンデ―トル

 その日は、めずらしく雨が降っていた。本降り。まるで今まで我慢していたかのように。ザアザアと。大粒の雨が窓を叩き、風情を置き去りにした騒音が煩わしい。

 対して、感嘆を声に変えて漏らしていた死にたガ―ル。今は診察で病室にいない。故に──一人。静と動。つまらない森閑に、くだらない喧噪が語りかける。そんな中で僕は、今やすっかり趣味になってしまったケ―タイ小説に没頭していた。なのに。

「そうだ。これからドアをノックしよう」

 ──ああ、鬱陶しいのが来た。声音からしてたぶん──鞘真。

「よ―し。軽く拳を握ったぞ」

「今忙しいんだ」

「これをドアに宛がって」

「入室を拒絶する」

「やあ一郎くん。一日ぶり」

「しないのかよ、ノック!」

 しまった。突然ドアをスライドさせて現れた、笑顔の仮面を被ったピエロのペ―スに乗ってしまった。ニヘラと口の末端を吊り上げた鞘真は、そのまま当然のように僕のベッドへ。同じ行動であるはずなのに、死にたガ―ルとピエロでこうも印象が違うのはなぜだろう?

「他にも座る場所はあるだろう」

「ここがいいんだ」

「嬉しくない」

 上っ面だけで生成された言葉のキャッチボ―ル。不毛なやり取りとはまさにこのことか。ならばやむなし。

「……で、用件は? 冷やかしだったら怒るぞ。サボリだったら叱るぞ」

「僕が常に隠し持つ二択を奪うとは。でも残念。今日はめずらしくちゃんと用件、というか提案があるんだ」

 自覚してたら世話ないや。

「久しぶりに、雨──降ってるね」

 脈絡もなく窓を通して外の世界に視線を放り、幾何かの間を置いて続ける。

「……ねぇ一郎くん。”おもしろいもの”、見たいだろう?」

「いいや、全然」

「まあそう邪険にせずに。この病院には、雨の日しか見られない特別な光景があるんだ」

「また怪異か? その類いには正直、もうしばらく触れたくないんだが」

「といいつつ、なんだ、やっぱり興味あるんだね」

「茶化しに来たんじゃなかったはずなんだがな」

「こりゃ失敬。何分現在(いま)を茶化すように生きている人間だから、つい」

 ホントに──自覚してたら世話ないや。

「おまえと長々話してみたところで、お互い言葉に霊を込められない者同士。行き着く先は戯れだ。なら、早いとこ聞くだけ聞いておこうってやつさ」

「なるほど。そういうとこも、似てるね」

 昨日言っていたこと。頭ではわかっていた。けれど気づかないフリをする。話を前へ進めるために。

「まあいいや。標病院の名物──『真ん中杉』のところに行ってごらん」

 真ん中杉……マッチョさんが言っていたあの古株の木か。今はもう丸裸の。

「仮に、行くとなにがあるんだ?」

「それを教えちゃったら味気ないだろ?」

「行ってどうすればいい?」

「どうにでもすればいいさ。一郎くんが思うことを、一郎くんが思うように。それがきっと最終的に、いわゆる”主人公”にしかできない変革になるから」

 主人公……か。

「生憎、僕は”主人公”なんてキャラじゃない」

「”主人公”であることの条件は、正義でも秀才でもない。ただ一点────イレギュラ―なことだ」

 それを僕で置き換えるなら──。

「……『治る』のではなく『直った』ことか」

「そっ。それだけで、十分一郎くんはこの世界の”主人公”だ」

 随分不条理な講釈だこと。強ち外れてはいないのかもしれないけど。

「……そういうことなら、一つ行ってみるか」

「おっ、どうやら気分が乗ったらしい」

「行かなくちゃダメなんだろ? 主人公なら」

「そう言ってほしいのかい?」

「言わなくていい。言われると行きたくなくなる」

 どうせ死にたガ―ルが帰ってくるまでは暇なんだ。中途なところで物語から意識を引っ張り戻されたことだし。用意された手のひらの上のダンスホ―ルで、泥鰌掬いも悪くない。

 ただし、偽りの笑顔の下、いったいなにを企んでいるのかは知らないが──鞘真。おまえの思惑通りにいくとは限らないぞ。

「んじゃ、僕はめんどくさい仕事に戻りま―す」

 立ち上がり、なぜかくるっと一回転してから白衣のピエロは扉の前へ。

「それにしてもさぁ──」

 意味深な呟きを残して、病室を後にした。

「人──不格好なほうが格好よく見えるのは、強いより弱いほうが美しく映るのはなんでなんだろうね」

 扉が──閉まる。

 ったく。問いだけ残して答えを聞かず去りやがって。そんなのわかりきったことじゃないか。──人が本来、弱くて格好のつかない生き物だからだよ。


          †


 病室の前にかけてあったビニ―ル傘を開き、僕は照明で明るさを保っていた病院を出る。一方の外は、昼間だというのに太陽を隠す鈍色の雲が立ち込め暗かった。明るい日には目立つ行いも、空気と同化してしまいそうなほどに。雨粒が、傘に弾かれアスファルトを濡らす。両手が杖に占領されているため、傘は首と肩の間に挟んでいた。故に、昨今よりも歩きづらい。

「雪なら間違いなく積もる勢いなのにな」

 誰に同意を求めるでもなく一人呟いてみて、自分がこの歳になってまだ雪を期待していることに少々の困惑の覚える。

彼女なら……まあ喜ぶんだろうな。思考をさりげなく己から外し、なんとなく答えを出した気になって、僕はそれからもしばらくをかけて歩いた。

──で、到着。真ん中杉。透明な傘から覗いたその木はやっぱりすっかり葉を失っていて。落ちてくるのはただただ枝からの露ばかり。空から降ってくる雨。木から落ちてくる水。どちらも同じはずなのに、その身で奏でる音色は、そして僕に漠然と抱かせる印象は微妙に違う。しかしそれでも統括して言うならば──今日の世界はどこか大気にぼかされていた。

「さて、と」

 言われた場所までやって来たわけだが、”おもしろいもの”のほうから歩いてきてはくれないらしい。辺りをざっと見回す。車。枯れ木。駐輪場。病院。やはり目新しいものはどこにもない。

「…………」

 まさか一杯食わされたか? そんな疑念が芽生え、信心を飲み込もうとした頃。──プツン──と。一滴の雨粒が、目の前のアスファルトで跳ねた。

「……?」

 なぜ”それ”が、”それ”だけが僕の意識を引いたのか。知れない理由を語れる言葉があるはずもなく。茫漠としたなにかに導かれるように、僕は”それ”を始まりにして、なぜか気になった雨滴達の後を追った。そのときは気にしなかったが、全てを終えてから改めて考えを巡らせてみると、偶然やなにげなくだと思っていた”それ”はたぶんきっと偶然やなにげなくなどではなく。だってその軌跡はなんら寄り道もせず僕をそこに────。

「……!」

 傘も差さず濡れているマッチョさんのところに──導いたのだから。

「……」

 思わず、側の壁に隠れる。いつもならそうする理由として、彼女に対しての畏敬やら恐怖が挙げられることだろう。けれど今回に限り、それらは形を潜めていた。

 なにをしている? 眼前の不明。探求せずにはいられない。傘も差さず、降り頻る豪雨に晒されずぶ濡れのマッチョさんは、しかしそんなことなど構いもせず、ただじっと普(あまね)く黒雲を見上げている。その視線は心なしか鋭かった。睨んでいるのか? なにを?乗せた感情は怒りか悲しみか。憂いを孕んだ天がそれを受け入れ、また雨にして地に返す。

 ──悲……しみ……? ふと浮かんだ言葉を再度復唱してみて、その不可思議さに頭を捻る。

……なぜ”悲しみ”なんだ? “睨む”という行為からなぜ”悲しみ”に結びつく? およそ連想するイメ―ジとして”怒り”は正しい。他に侮蔑や嫌悪も当てはまるだろう。でも”悲しみ”なんて────。

「!」

 と。固まった彼女の動向を見張りながら思考していて、はっとした。そして。たぶん……わかった。

 ──雨が、降っていた。休みなく。忙しなく。そこにあるものを見えなくするくらいに。ザアザアと。ナ―スマッチョさんは濡れていた。上から下まで。頭から足まで。びしょびしょに。険しい顔を穿つ雨。目尻を滴り頬を流れる。そうしてポタリと雨垂れに。

 雨──。こんな日は、境界線も曖昧になる。広い世界の片隅で──マッチョさんは泣いているように見えた。

「誰だ?」

「ッ」

 突然よく通る声を飛ばされ、パッと視線を逸らして無意識のうちに尻込み。結果、コツン、と。杖が壁に当たり小さな音を鳴らした。奏でられている自然のメロディ―が容易く掻き消してくれそうな雑音。だがそれを、マッチョさんは聞き逃さない。

「……フン。出てきな」

どこか諦めたような口調で、そう促される。

どうしようか迷った。もしも僕の感が当たっていたなら、この刹那はおそらく触れてはいけない一時。これからも今まで通りの認識でいるために、写してはいけなかったスナップショット。強さの中に潜む弱さが見えた瞬間。だが現実問題、ちょっと考えれば、端から逃走に必要な足が不自由な僕に選択肢などなかったのだった。

「……」

 どんな顔をしてどんな一声から始めればいいかもわからぬまま、僕は渋々壁から出て姿を晒す。こちらに向けていた顔を少しだけ驚き方面へ変化させて、それからまたマッチョさんは嫌に落ち着いた様子でぼやいた。

「……なんだおまえか、一郎」

「なんだとは失礼だな」

とりあえず常らしい返事を。しかしいつもとどこか違う雰囲気がそんな藹々(あいあい)の馴れ合いを続けさせてはくれなかった。

──沈黙。静寂とは無縁の環境でありながら、空気が重い。容易に用いられていたはずの言葉が──重い。

「こんなところでなにをしてるんだ?」

 口火を切ってくれたのは相手側だった。

「鞘真に惑わされてな。後は気づけばここに辿り着いていた」

 答え、今度はこちらから、勇気を持って尋ねる。

「そっちは?」

 現在進行形で濡れているマッチョさん。

「……ったく。余計な世話を」

 彼女は投げた問いを受けとる間際、なにやら呟き、おもむろに僕へ背を向ける。そして先刻までと同じ姿勢に戻った。変わらず視線は鋭い。見上げた空を、世界を、睨む。

「見た通りだよ。雨に──降られていたのさ」

 ……ああ。そんなことはわかっている。ぼやけた世界であなたは傘も差さず雨に降られていた。

「どうして?」

「……どうして、か」

 自嘲気味に一笑を溢し、それから。

「雨が、降っていたからさ」

 哲学的一説を文頭に、彼女はやがて静かに言の葉を落とした。

「──今日、患者が一人亡くなった」

 話を遮ってはいけないと、直感が僕に訴えかける。

「二十日前にも別の一人が逝った。病院に勤めていれば、べつに”死”は珍しいことじゃない。人を治し、人を見送る。ここはそういう場所なんだから」

「……」

「日常的に、誰かが死んでいくんだよ。昨日笑っていたやつが、今日には一切の表情を失っているなんてざらなこと。私達はそれを知って、それでも関わることをやめられない」

 ボソリ、と。一際弱くて脆い叙情を、溢れ返ったノイズが侵食する。

「酷く……悲しいことだよ」

 それで、よかったと思った。彼女の脆弱を食らってくれて、よかったと。

「何度も見てきた。幾度も触れてきた。”生きられなかった人間”に。けれど……どうしてだろうねぇ」

 僕か、あるいは自分自身か。誰かに向けての話が……終わる。

「ちっとも……慣れないんだよ。いつまでたっても誰かが死ぬのは悲しくて、悔しくて…………涙が出るんだ」

 発言を、噛み締める。

「雨は世界を濡らして、ぼかして、そこにある真実を見えなくさせる。でもそれでいいときもあるのさ」

 疑いが確信に変わっていく。

「だからおまえも、ここで見たものは全部蜃気楼。そう思いな」

 マッチョさんは──泣いていたんだ。抗えぬ天命。従えぬ真理。全部、認めたくなくて。

 ──人はいずれ死ぬ。だから気にするな。順応することをよしとせず、”死”に馴染むことを精一杯否定している彼女に、誰が気安くそんな言葉をかけられようか。自分の秘めた弱さをちゃんと自覚していて。けれどその弱さから目を逸らすことは決してせず。かといって弱い人間でいることもなく。彼女が纏っていたのは強さの鎧。ただし偽物。贋物(がんぶつ)。普段は誰に対しても強くいて、そして誰にも気づかれない雨の日にだけ、こっそりその重い鎧を脱ぐ。露になるのは弱い自分。本当の自分。真の己で命と向き合い死を想う────メメントモリ。きっと今日という日のこの瞬間は彼女なりの……死者と──生者と──自身と──正面から向き合う時間だったんだ。

 真ん中杉からは、いつの間にかかなり離れていた。

 もし──仮にこの状況がおまえの言う”おもしろいもの”なのだとしたら……鞘真。おまえの感性は醜く歪んでいる。捻くれた僕から見ても、もはやその歪は嫌悪の対象でしかない。劣悪だ。惨憺だ。下等で粗末で悪質な見聞だと断言する。傷心を暴いてなにがおもしろい? 僕になにを望む? 怒りか? 蔑みか? 説教か? 慈悲か同情か肯定か批判か? ……知らないね。ただ僕は──一層おまえのことが嫌いになったよ。そして…………少しだけ感謝でもしてやろうか。僕がここへ導かれるきっかけをくれたことに。

「本当に……強いな、あなたは」

 一人の弱さを知ることで、強さの意味を知れた。

「弱さに溺れず、強さに縋らず、ただまっすぐ物事と対峙している。あなたが今みたいに後ろを向いていたとして、おそらく他人からはそれが前に思える。……凄いよ」

 僕には……きっとできない。否定から入る僕には。

「忘れることはできないけれど、アリスさんが望むのなら見なかったことにはするよ。そういう生き方も──悪くない」

 僕はそっと、この場から離れることにした。ここであったことをなかったことにはできないけれど、ここにいた誰かをいなかったことくらいにはできる。そんなことを思って返した踵が水を跳ね、杖が雨水を乗せた地面を叩く。

「……待ちな、一郎」

 去り行く背中に引き止めの声。

「──おまえ、神も悪魔も嫌いだろう?」

 なにを唐突にと戸惑いもしたが、答えなど決まっている。

「嫌いもなにも、僕は未だに信じちゃいないんでね」

 不思議な体験をした今でも。

「それは『あまのじゃく』だからかい?」

 回答、すぐには見つからなかった。

「だとしたらおまえは二流だよ」

 なのにすぐ異議は唱えられるのだから笑える。

「聞き捨てならないな」

「この殺伐とした世の中、そういった類いを根強く信じているやつがいったいどれ程いると思う? おそらくそんなのは少数派だよ」

「……つまり?」

「本物のあまのじゃくを自称したいなら、神も悪魔も信じてみろ。否定を否定して万物を肯定するんだ」

「そんなこと──」

「いいから!!」

「ッ……」

 怒鳴りにも似た一蹴の言葉が、灰色雲に吸い込まれていく。雨も自然と避けた。続く一声もまた同様に。

「信じるんだよ…………でないと誰も救われない」

 感情のリミッタ―が緩み、いつもより情緒が激しくなっているのはなんとなく理解できた。叱咤と哀愁。内にある伝えたいことを伝えようとするも、しかし向けられたそれはどこか脈絡に欠ける意思の列挙体に思えて。くぐもった暗鬱が落とす調べに包まれながら、彼女はこちらを見ないまま言った。

「早く自分の中に眠る答えに気づくんだ。でないと、私は…………」

その先は──聞こえなかった。

解せぬ点は多々あれど、洗礼の儀にも似たミサの時間を侵食してまでそれを問うような無粋な真似はしない。無論──否定や反論も。

「……考えておくよ」

 考える。明示された問題。暗示された願い。僕が僕であるために、本物の僕になるために、考える。…………僕?

 僕って……なんだ?

 僕は……誰だ?

 僕は────どこにいる?

 思考が……ぼやけていくのを感じた。まるで今日という日のように。


          †


 傘をたたみ、適当に水気を飛ばす。そして再び一定の明るさに支配された院内へ。黙々と歩き、二度角を曲がったところで遭遇。

「……人をからかっておもしろいか?」

 僕を唆(そそのか)し、ご丁寧に未知への優遇券まで用意した男。歪んだ道化──鞘真次郎。

「その様子だと、ちゃんと見られたみたいだね」

 根拠もなく確信する。やはりこいつが見せたかったものは、マッチョさんの弱みだったのだと。

「おまえはこっ酷く歪んでいる」

「ありがとう」

「笑うなよ」

 僕が言葉の力をなくしているから伝わらないのか? けっこう本気で腹立っていることさえ。

「笑って、偽って。おまえの本当はどこにある?」

 きっと僕は見たことがない。ピエロの仮面を脱ぎ捨てたこいつの顔を。一度も。

「本当……か」

 感慨深げに呟いて、それから。

「笑った数だけ幸せになれないかな―っと」

 結局、また鞘真は笑うのだった。

「なれないよ」

 断言する。

「どうして? よく言うじゃないか。笑えば幸せのほうからやってくるって」

「外だけ繕い、内でちっとも笑っていないやつのところに誰が行きたいと思う?」

 低俗だけど、イライラしてくるんだよ。おまえのその、全然楽しそうじゃない破顔を目にしていると。

「ふむ。気のせいか、今日は一段と手厳しいな」

「僕に”アレ”を知らせて、おまえはどうしたかった?」

「言ったじゃないか。変えてほしかったんだよ。物語の主役たる一郎くんに」

「なら残念だったな。ひたすらに強いと思っていた人の弱さに触れて、僕は溢れるそれを拭ってやることすらできなかったよ。どころか信仰を促されたほどだ。見込み違いも甚だしい。僕には──なにもできない」

「それは本人以外が決めることであって、一郎くんが悟ることじゃないさ」

「……」

 無言で、押しつけるように傘を渡した。返した。そしてそのまま立ち去る。

「『おまえの本当はどこにある?』。一郎くんの本当はどこにあるんだい?」

 ──答えなかった。

「いつか互いに腹を裂いて話せるといいね」

「割る程度に留めろ」

「へへ、ドクタ―ジョ―ク」

「……」

 あらゆる感情が流される。怒りも憂いも哀しみも。これがこいつの渡世術。それ自体がとても……悲しいことに思えた。

 僕の本当はどこにある?

 僕さえも知らない僕……。

「────時間はもうないよ、一郎くん」

 独りになってから鞘真が呟いた一言が、僕まで届くことはない。

 数多が理解し、数多が気づかぬうちに、カウントダウンは秒読みを開始した。

「ただいま」

「おかえりなさい、一郎さん。ニコリ」

──鳥籠のモラトリアムが崩れ出す。そのときはおそらく一瞬だ。


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