手紙

裕の母親はずっと目を瞑ったまま話して目を開けると三人は泣きすぎた顔をしていた。腫れあがった目も真っ赤な鼻水もしゃくりあげた呼吸も全部息子の為だと思うと母親は少し微笑んだ。


「失うってわかっていても失ってからも気づくものは同じね。そうだ手紙。裕が残した手紙があるんだけど…」


泣いているうえに渡していいのだろうかと裕の母親は考えたが正樹が早かった。


「ください。俺たちに残してくれた裕の思い全部知りたいんです。」

「私も!裕のせいで泣いたんだから手紙くらい読まないと気が済まない!」


二人は前のめりになって答えたが翠は何も言えなかった。


「翠ちゃん。いつでもいいのいつかあなたの気持ちが整理したら開いて読んで?」

「…はい。」

「取ってくるわね。」


立ち上がった裕の母親に三人は軽く会釈して涙をこすった。


「俺さ、裕と友達のせいですげー大事なことに気づかされた気がする。」

「せいでって。あんたね。ねえ翠。裕の事忘れないから。翠がなんて言おうと。」


翠はうなずいた。


「はいこれ。それぞれ三人の。」


裕の母親がそれぞれ三枚の手紙を持ってきた。

一つは正樹のですごく薄く青い車の便せん。

もう一つはピンクの柄で動物のシールが貼ってある。美玖ので少し小学生っぽい。

最後の一枚は茶色い普通の便せんだったそれはすごく厚みがあって重たかった。


それぞれ手紙を受け取った三人は裕の母親に会釈して「また来ます」と帰っていった。

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