吉田正樹
高校三年の夏に裕と二人で屋上で話したことがあった。
「正樹、美玖と付き合えた?」
美玖の事はずっと好きでいつか告白しようとした時だった。
美玖から告白を受けて付き合って。その次の日に裕に言われてびっくりした。
知ってたのか聞いたら何となく、とかそんなあやふやな答えで感が鋭い奴だって言ったんだ。そしたら急に裕が言い出したんだ。
「美玖の事も大切にしてほしいけど、翠の事もよろしくね。」
「はあ?お前、幼馴染なんだから,つーか中学の時から付き合ってるんだからそんなのお前が大切にしろよー。」
「うん。でもずっと一緒にいられる訳じゃないから。」
一瞬驚いたけどそん時は変なのって終わらせた。
「もー、戻るぞ。」
屋上のドアを開けた時だった。
「俺、死ぬんだ。翠を置いて。」
太陽の光の陰になった裕の表情は見えなかったから俺も聞き間違えかと思って聞き返したら俺を追い抜かして笑ったんだ。
「なんでもない。ほら、戻るんだろ?美玖のところに。」
「おい、やめろよからかうのは。」
いつの間に仏壇の写真を手にしていた正樹は話続けた。
「それでさ、卒業式の日にお前が走って行ってからしばらくふと思い出して慌てて美玖と走っていったんだ。そしたらもう裕はこの世にいなかった。」
さっきまでためていた涙を写真の上にパタパタと落とした。
「ばかだよな。ほんと。もっとあの時裕の言葉に耳を傾けて置けば。もっと聞いておけばよかったのに。」
翠は目を泳がせて正樹に言った。
「じゃあ、裕は、自分が卒業式の日に死ぬことを知っていたって事?」
「そうだよ。俺はそれを知っていたんだよ。」
「じゃ、なんで、私に何も言わなかったの。なんで一人で死んだの!」
「わっかんねえよ俺だって!」
二人が荒々しく言い合っているのを美玖が静かに遮った。
「…未来は簡単に変えちゃいけない。変えたらその分大きな代償が自分に返ってくるから。だから裕は死を選んだんだよ。翠を守るために。」
「美玖?それどういう事?」
「翠、ごめん。私も裕が死ぬ事、裕に言われていたの。」
美玖は眉毛をひそめて真っ赤になっていった。
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