三人
あの日から数日経った日。葬式も終わりもう裕が影もなく人の思い出としか存在しなくなってしまった。三人は裕の家に来ていた。
もともと母子家庭で裕福ではない裕だったが優しく温厚だった。
よく裕の家に押しかけては四人で夜更かしをして家に帰ってそれぞれ怒られた。
「毎日手を合わせに来てくれてありがとう。裕も喜んでいるわ。」
裕の母親は体があまり丈夫ではないが看護師をやって家庭を支えていた。
家事は大体裕がこなしていたのを翠は手伝いもしていたのでよく知っている。
そんな裕の母親は葬式の時も裕の顔を見た時も一度も泣かなかった。
家に帰って一人仏壇の前で泣いているのかもしれないが、三人の前では決して泣かなかった。
「裕もよく大切な人守ったわ。私ね、息子が誇らしいの。なんて。お茶持ってくるわね。」
三人がうなだれているのを見て裕の母親はにっこり笑った。
「強いな。裕の母さん。」
最初に声を出したのは正樹だった。
「俺、裕を助けてやれなかった。」
「そんなの正樹が言ったら、翠がもっとつらくなる。」
「美玖…。違うんだ。俺は裕が死ぬってこと知ってたんだ。」
正樹は涙を堪えながら言った。
翠は思わず前のめりになって聞き返した。
「それ、どういう事?ねえ、正樹。詳しく教えてよ。」
正樹は翠の顔を見て、仏壇の裕の写真を見て話し始めた。
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