19.雪辱を果たせ五十嵐戦(特攻編)


【港倉庫街―正門―】



 斬り込み隊指揮官の役目を任されたヨウは、まず正門に見張り等がいないかどうか目配りで確かめる。

 どうやら敵柄は港倉庫街奥に潜んでいるらしく、正門付近にはいないようだ。とはいうものの、港の倉庫街はとにもかくにもだだっ広い。並列に佇んでいる倉庫だけでなく流石は港というだけあって、金属製の組立式容器つまりコンテナが積み上げられており道を阻んでいる。

 更に時刻は夜、攻め込むに当たって奇襲を掛けるには打ってつけの刻ではあるものの、視界が悪いという点では此方にも不利。地形もあまり把握できておらず、向こうの戦力もどのように配置されているのか見当もつかない。

 まさしく特攻を仕掛ける自分達のやることは、良く言えば奇襲であるが、悪く言えばやけっぱち行為である。


 だからと言ってもう後には引けぬ状況下だ。  

 ヨウは面子が揃ったことを確認すると、携帯を取り出して連絡を取る。相手はインテリ不良であり連絡係りのハジメ。今すぐ乗り込みたいところだが、なにぶんまだ協定チームが揃っていない。少人数の自分達が乗り込んでも向こうの協定に阻まれて泣きを見るであろう。

 「ハジメ、俺だ」コールが繋がったヨウは早速協定チーム達に動いてもらうよう頼む。なるべくは二チームと共に乗り込みたいのだから。


 するとハジメ、自分達の連絡を待っていたのだとばかりに返事をしてきた。


『ヨウ達よりも後に乗り込んでも意味が無いからね。君が連絡をしてくると同時に、僕は向こうチームに弥生に借りた携帯で連絡を入れた。待機してある場所からして三分も掛からない。すぐに準備をして』


「オーケー。さすがハジメだぜ、感謝するよ。その手回しの速さ」


『一時離脱組の僕に出来ることはこれくらいだからね。くれぐれも油断はしないように』


 「分かっているよ」素早く携帯の電源を押して電話を切る。

 次に仲間内にこのことを伝達。すぐに協定二チームが乗り込んでくるから、その旨を口頭で伝えると玉城双子兄弟がワクワクするとばかりに口を揃えた。ケイが紅白饅頭不良と胸内で呼んでるあの双子不良である。


「やーっぱ喧嘩しないとね、ゆっちゃん! 話し合いバッカじゃだれる!」


「だよなぁ、あっちゃん! んでもって喧嘩する時は二人揃ってやらないとなぁ! あっちゃんとオレがいれば、オトモダチフレーズが成立だし!」


 忘れられているかもしれないが、紅頭不良が玉城 愛海(たましろ あいみ)、白頭不良が玉城 勇気(たましろ ゆうき)という名を持っている。

 この二人、名前を取って愛と勇気だけがお友達……と空飛ぶあんぱんヒーローのオトモダチフレーズを口ずさんでいるわけなのだが、まったくもって悪ノリをかましている。

 テンションアゲアゲにして、「あっちゃん!」バイクを運転する勇気が後ろに乗っている愛海に対しハイタッチ。「ゆっちゃん!」ハイタッチした愛海が僕達最強兄弟だと満面の笑顔で綻んだ。


「「僕(オレ)達、愛と勇気だけがお友達な孤独不良戦士! 最強だふー!」」


 この新手の悪ノリ……ついていけねぇんだけど。

 ポカンとしていたヨウは勘弁してくれとばかりに溜息をつく。なんなんだ、この双子不良。妙に疲れるというか、この悪ノリはワタルやアキラに近いものを感じるのだが。「おいテメェ等。ちったぁ緊張感を持て」双子不良に言えば揃ってイーッと舌を出してきた。


「「僕(オレ)達最強なのだ!」」


 ピキッのカッチン、である。


「なんか分かんねぇけどぶっ飛ばしてイイか? イイよな? うざってぇこいつ等を殴り飛ばしても……罰当たらねぇよな」


「ふぁ~…ねむ。ヨウ、お前が取り乱してどーする。落ち着け」


「そりゃそうだけどシズッ。こいつ等うぜぇっ、ヤマトが仲間に引き込んだだけあってマージうっぜぇんだけどっ」


「「そういう荒川の仲間ってみーんなアタマ悪そう! ギャハハハッ、バーカバーカ!」」


 カッチンのブッチン、である。

 「奴等に焼きを入れてやる」パキパキッと両手の関節を鳴らすヨウに落ち着けとシズは溜息。なんで此処まできて仲間割れをしなければならないのだ。これでは計画もヘッタクレもないではないか。子供の戯言だと思えばいい、副の助言にヨウは舌を鳴らして頷く。

 余所でぶふっと噴き出し、バイクのハンドルに寄り掛かって笑いを堪えていたのは向こうチームの副頭ススムだ。


「馬鹿にされてるっ。ククッ……馬鹿……ククッ……アタマ悪そう……ククッ確かに皆、アタマ悪そう。どっかの誰かさんは……食い意地を張ってロールケーキ如きで怒れていたしな」


 するとシズの眠気が何処かへ吹っ飛び、わなわなと彼は震え始める。

 どうしたとヨウは運転手に声を掛けた。我等は副リーダーは握り拳をグッと作って燃えた。怒りに燃えた。


「ロールケーキ如き、だと? ロールケーキを何だと思っている!」


「おい……シズ」


「ふんわりとした生地の中に滑らかなクリームが入っている。 口に入れると二重の美味さを奏でるロールケーキを馬鹿に、よくも馬鹿にッ。ロールケーキに謝れ、今すぐ謝れ、作っている職人さんにも謝れ! 第一食い物を蹴り飛ばす意味が分からない。あの時、キャツが蹴り飛ばしたロールケーキはコンビニでプレミアムだと称された一個150円のロールケーキだぞ。自分へのご褒美として買うのに打ってつけのデザートだぞ。意味不明だ。蹴り飛ばすのにイミフだ、イミフ」


「……テメェはOLか」


「ヨウ、悪いが自分は向こうの副頭と此処で決着をつけなければならないようだ。後のことは頼む」 


「はあ?! おまっ、ちょ、待て待て待て! 馬鹿っ、降りようとするんじゃねえよ、運転手!」


 自分はまだロールケーキの仇を取っていない。此処でケリをつけてくる。

 そう言い張るシズを押さえつけて、「落ち着けてって!」ロールケーキの仇は五十嵐との決着を終えてからでいいではないか。ヨウは怒れるシズにそう愛想笑いを浮かべた。間違っても“たかがロールケーキ如きで”なんて口にしてはいけない。矛先がこちらに向けられるだろうから。


 一方で笑いの発作を押し殺しているのはススム。

 「いっそ笑い飛ばしたい」必死に笑いを抑えている笑い上戸な不良を見たシズが、「焼きを入れたい……」と先ほどヨウが口にした台詞をまんま吐露。子供の戯言だと思えばいいじゃないか、ヨウの助言にシズはそういう問題じゃないと怒りに震えていた。状況があべこべである。


「ねえねえ、この調子で大丈夫なわけ? 僕、心配になってきたんだけどリーダー」


「まったくだな。チームワークばらばらじゃねえか」


 斬り込み隊唯一のチャリ組、タコ沢とホシが心境を口にした。

 チームワークがばらばらと言われても、仕方が無いではないか。自分と双子不良は置いておいて(これを自分のことは棚に上げると言うのだろう)、いつも冷静沈着なシズに何があったかは知らないが(どーせ食い物の恨みだろうけれど)、ススムに怒りを抱き憤っているのだから。自分が仲裁される分には慣れているからいいものの、まさか仲裁役を買う羽目になるとは。

 しかもいつも自分を宥めてくれる副リーダーが相手。妙な気分になる。どうどうとシズを宥めるが食い物の恨みは何とやら。彼はしきりにロールケーキの無念をブツブツと唱えている。それを見て笑いを押し殺すススム、シズのボルテージがワンランクアップ、悪循環なこと極まりない。


 そうこうしている内にも、無数のエンジン音が鼓膜を微かに振動した。

 ヨウは顔を上げると振り返って目を眇める。夕月夜の空一杯にホーンを鳴らして合図を送ってくる不良達。ハジメが寄越した不良達だ。先頭を走っているのは向こうの頭であろう不良と、協定を組んでいるチーム頭の浅倉。彼はヨウの姿に気付くと向こう側を指差し、先に突っ込むぞとばかりジェスチャーで合図。

 頷く間もなくヨウ達の脇をすり抜け、協定不良達が突っ込んで行く。甲高く唸るエンジン音を空に舞わせながら、風を切って突っ込んで行く彼等の頼もしい背を見送ったヨウは喧嘩している場合ではないと微苦笑を零し、指笛を吹いて仲間達に挙手。

 自分達も斬り込み隊として役目を果たす。その意味合いを込めて片手を挙げた後、ヨウは運転手に出すよう指示した。


 ロールケーキにブツクサ言っていた我等が副リーダーだが、一変して険しい顔を作るとアクセルを回して発進。

 先頭を走り始める自分達に続いて仲間達もバイクやチャリで風を切った。目を眇めつつ、ヨウはまず背後を確認。仲間達がついて来ていることを確かめた後、敵が追って来ていないかどうか目で探す。背後には敵の姿が見えない。どうやら背後を取られることは今のところ無さそうだ。

 敵の姿等を見つけるのは主にチャリ組の仕事だが、必ず死角というものが存在する。確実に向こうの動きを把握するためにも、手が余れば自分達も仕事に加担するというのが約束事として入っている。持ち前の金髪と赤メッシュを向かい風に靡かせ、ヨウは前方を睨んだ。コンテナの山を通り過ぎると三つに道が分かれている。


 協定チーム達は三手に分かれて行くが、なるべく自分達は固まっていた方がいい。


「(右か左か正面か。チッ……取り敢えず俺の性格に従ってみっか)シズ、このまま真っ直ぐ突っ切れ。左右は協定たちに任せる」


 バイクのライトで照らし出す直線の道を指差して、ヨウは声音を張った。真っ直ぐ進むと。

 フッと表情を崩すシズは了解だとばかりに頷いた。


「お前らしい判断だ。掴まってろ、スピードを上げる」


 アクセルを回し、バイクはますますスピードに乗る。

 風の強さを肌で感じながら、ヨウは五十嵐達の姿はないかと目で探す。

 自分や仲間達、そしてチームに屈辱を味わわせただけでなく、大事な仲間を人質に取るあの狡い男は何処だ。ヤマト以上に狡く意地汚い思考を持つ男は一体全体、“港倉庫街”の何処にいる。そして仲間は……人質は……ココロと帆奈美は。


(人質は救出隊に任せれば大丈夫だろうけど……無事でいてくれよ。ココロ。ケイがマジで心配しているんだからな、思い詰めているんだからな。テメェを守れなかったことに後悔してもし切れないほど、あいつは悔いているんだ)

  

 願わずにはいられない。大事な仲間の安否を。

 舎弟のためにも、彼女にはどうか無事でいて欲しい。

 不思議なもので舎弟の顔を見るだけで、ある程度自分は彼の気持ちを察するようになった。舎弟との付き合いは浅い方だと言える。けれど月日以上に、これまで自分達は喧嘩や事件を通して絆を深めていった。小学時代の旧友など下手に長い付き合いを送った輩よりも絆は深いと思う。

 だからこそ願うのだ。助け出されたら真っ先に舎弟に笑顔を向けて欲しい。それだけできっと舎弟は救われるに違いないのだから。


 それから、もう一人の人質のことは――。


 ヨウは軽くかぶりを振り、一呼吸。

 早く助け出して戻してやろう、彼女を大事にしている彼のもとに。

 それが元セフレにできる元セフレへの精一杯の行為であり、今表せる好意だ。非常に悔しいが臍(ほぞ)を固めるしかない。ヤマトの彼女を想う気持ちを目の当たりにしたら、これまでなあなあにして曖昧にしてきた気持ちを固めるしかないではないか。

 その前に少しだけ彼女と言葉を交わしておきたい。なんて思うのは自分の我が儘だろうか。


 大体向こうは狡いのだ。

 キザ紛いに彼女の気持ちを優先にして、己の気持ちを隠す。

 何よりも彼女の意思に委ねて自分の気持ちを吐露することもせず、常に見守る立ち位置をキープ。彼女が“とある男”の下に戻りたいと言い易いように環境を作っておく。強い好意を寄せているくせに、オンナの気持ちを何よりも優先にしているなんてカッコつけ過ぎであり、カッコ良過ぎではないか。自分の立場はガタ落ちではないか。

 嗚呼、本当に狡い。彼女を引き込んだなら強引に自分のオンナにしてしまえばいいのに。


 そうしてくれたら、自分はもっと二人をストレートに憎めただろう。それをしなかったのは向こうの配慮なのか、それともヤマトのオンナに対する心遣いなのか。


 しかし、おおもとの原因は自分だとヨウは自嘲を零した。


 あの日あの時あの瞬間、過ごしていた幼い中学時代の日々の中で、ちゃんと彼女に気持ちを伝えていなかったのが悪いのだから。言わなくても分かるだろう、では駄目だったのだ。結局のところ彼女は大きな不安を抱き、グループ分裂にも顔を渋めていた。陰で何度も泣かせていたのかもしれない。


 過去の自分を叱咤しつつ、ヨウは首を捻って追っ手を確認。お出でましのようだ。

 コンテナとコンテナの細い左右の道から、軍隊蟻のようにわんさか出てくる不良達を見て舌打ち。見るからに向こうの協定チーム。ヨウは挙手をして仲間内に注意を呼び掛ける。

 するとチャリ組のホシが片手を挙げて注意を促してきた。片手には故意的に曲げられた古く太い釘たち。なるほど、さすがはヤマトチームだけあって狡い手を使うようだ。事前に打ち合わせていたこともあり、了解だとヨウは頷くとバイク組に指笛で注意を指示。

 その間、タコ沢は一旦集団から離れて細い道に身を隠す。並列に佇むコンテナや倉庫を大きく回って前に現れるつもりだろう。チャリとバイクでは速度が違う。待ち伏せしなければ、向こうお得意の狡い戦法も使えない。待ち伏せまで時間が掛かる。


 さてと、此方も少し追っ手の数を減らしておかなければ。

 なるべくは五十嵐達の時まで体力を残しておきたいが、ヤラれてしまっては元も子もない。

 ススムが挙手をして自分達に何かを指示してくる。その指示、気を付けろという意味なのだが一体全体何が気を付けろなのか。ホシが起こそうとしている行動以外にも気を付けなければいけないこととは……一体。

 首を傾げるヨウやシズに対し、「「了解!」」玉城不良兄弟が敬礼をして後ろに乗っている勇気が振り返った。


「へへっ、オレとあっちゃんのお得意武器。とくと受けてみろ!」


「おう、やっちゃえ。ゆっちゃん!」


「「これは僕(オレ)達の怒りだ!」」


 土曜の決戦以来、絶対復讐してやろうと誓っていた。

 ニヤッとシニカルに笑う玉城勇気(紅白の白)はポケットから紐で連なる赤い筒状のものを取り出すと、百円ライターで導火線を焙り、そのままポイ。目を点にするヨウとシズに対し、パンッ―! パンッ―! パンッ―!!


 放ったそれは激しい音を鳴らして相手をかく乱、否、一抹の恐怖心を植えつけていた。まるで悲鳴のように大きな音を鳴らすそれは花火、簡単に言えば爆竹である。道には勿論、運転手の方にも投げる鬼畜行為に荒川チーム唖然である。

 惑う追っ手はブレーキを掛けたり、爆竹を必要以上に避けたり、驚きのあまり別の方向へとハンドルを取られてしまったり。

 白煙が上がる頃合、前に回ってきたチャリ組が自分達に脇に逸れるよう指示。左右に分かれてバイクをかっ飛ばすヨウ達を確認した後、ホシが道の真ん中にまきびしならぬ釘びしを投げて相手のタイヤを狙う。見事にタイヤに刺さったバイク達の運命は謂わずも、だろう。

 追って来られなくなる追っ手達を見て安堵半分、そして半分は冷汗だったりする。


「……改めて思う。こいつ等はヤマトの仲間だよなぁ。やることなすこと狡いのなんのって……爆竹とかどっから仕入れてきているんだよ。マージ怖ぇ奴等」


「……まったくだな」


「けど、あれもあいつ等のやり方なんだろうな。昔だったら反感を抱いているけど、今なら何となく受け入れられる。仲間を守るためのやり口なら仕方ねぇってな。ま、死んでもマネなんざしねぇだろうけど」


「それも、まったくだ」


 苦笑を漏らすシズに苦笑を返し、ヨウは合流した仲間達が全員無事な事を確認。

 後尾を走るチャリ組の安否も見定めた後、改めて敵を把握する。今、協定チームと共に乗り込んだため些少ながらも向こうで混乱が起こっている筈。須垣が義兄に連絡していなければ、自分達が手を結んだことも知らぬ筈だ。

 無知は隙を突けるチャンス。ヨウは急いで五十嵐達の姿を探すことに専念した。敵を少しずつ減らしながら。

 古びた倉庫たちをバイクで駆け抜け、キャツたちがたむろってそうな場所を目で探す。


 しかし“港倉庫街”はだだっぴろい。見当がまるでつかないのが現状だ。

 「そうだ!」ヨウはブレザーのポケットに手を突っ込み、携帯を取り出すと手早くインターネットを起動。開くサイトはツイッター。キャツはツイッター中毒だそうだから、何か情報を漏らしているかもしれない。何かあった時のためにブックマークをしていたのだ。我ながら閃いたもんだと自画自賛しつつ、ツイッターを開く。

 どうやら少し見ない間に更新されているらしくツイート数が増えている。


「あー……最後の更新が」



>>@×g●×g● いがらし

外が騒がしいようだが、取り敢えず人質の移動は完了w

(15秒前)



「ケッ、なあにが『完了w』だ。ざけやがって。これじゃあ場所を把握するのは難しいな」


「ヨウ……向こうの協定チームの厚い層を狙ってみないか? 五十嵐のことだ……高みの見物をするために……偏った力を配分をしている可能性がある」



 素敵に無敵・素晴らしいご意見だ。

 「うっしゃ。それでいこう」ヨウは頷き、携帯を閉じてポケットに放り込んだ。まさしく特攻する自分達に相応しい行動を起こしてみせようではないか! お得意分野だ、こういう無茶振り特攻。荒川チームのお得意戦法とも言える。

 ヨウは指笛を吹いて仲間内に移動の指示。先頭を走る自分達について来いとジェスチャーで伝え、シズにハンドルを切らせた。


 走る大型機械を方向転換し、向かう先は敵方の協定チームが集う層。何処らへんに集っているのか見当もつかないため、予測して走るしかない。

 ヨウは後尾を走るチャリ組に携帯で連絡を取る。エンジン音で掻き消されるため、声音を張っても聞き取り難いのだ。一度で此方の意図を聞いて欲しいために、タコ沢の携帯に電話を掛ける。


『はぁーい、ホシです!』


 電話に出たのはホシ。ヨウは彼に簡潔な伝達をする。バイクでは見落としてしまう景色一つひとつに目を配り、五十嵐がいそうな倉庫やコンテナの山麓に注意を配るよう指示。またバイクの速度について来られなくなり、自分達を見失ったら一旦こっちに連絡を寄越すよう告げた。了解だとばかりにホシは電話を切る。

 ヨウも携帯をブレザーに仕舞い、「キタキタキタ!」シニカルに笑みを浮かべた。

 目前には待ち伏せていたであろう敵方の協定チーム。普通であれば避ける、もしくはUターン戦法を取るが、自分達のお得意戦法は特攻であるゆえ避けることなどはしない。ヨウは振り返って声音を張った。


「速度を上げろ! 突っ込むぞ!」


 混乱を招くのが自分達の役目。

 だったらとことん混乱を招いてやろうではないか。狡い戦法を打ってくると思っている親玉に、直球勝負を挑んで混乱も混乱にさせてやろう。混乱してくれるであろうキャツの表情を想像するだけで心が弾む。なんて思うヨウも大概ワルである。

 「「無茶苦茶だ!」」突っ込むという指示を送り出してきた指揮官に玉城不良兄弟は口を揃え、ススムはふーっと意味深に溜息。


「ヤマトの言ったとおりだな……戦法とも言えない戦法で相手に攻め込んでいく」


 直球勝負といえばそれまで。単純シンプル戦法といえば、まさしくご尤も。

 シンプル過ぎる単純戦法に呆れるしかないが、今の指揮官は荒川庸一である。従うしかない。

 どうなるかは置いておいて、責任は向こうに取ってもらおうではないか。でなければやってられるか。この不慣れ単純戦法。成功することを願いつつ、ススムは言われたとおりバイクの速度を上げた。ススムが速度を上げたおかげで、玉城不良兄弟も観念したのか速度を上げて来る。


 しっかりと自分達について来てることを確認したヨウは口角をつり上げ、シズの肩に手を置いた。


「頼むぞ。運転手」


「了解……リーダー」


 珍しくも楽しそうに笑みを零すシズは前を見据え密度の高い敵の集団に突っ込み、文字通り“特攻戦法”を実施した。

 器用に向こうのバイクを避けつつ、敵の運転手に妨害。軽く向こうの腕や角材に当たりつつも、怯むことなく集団を突き抜けていく。走り去る際、敵の持っていた角材を強奪したヨウは「最近の喧嘩は武器を使うが主流なのか?」と、苦笑い。

 拳には拳で勝負、なんて考えを持つ自分は果たして古い人間なのだろうか。取り敢えず防具として持っておこう。眺めの角材を脇に挟み、背後を振り返って仲間達がついて来ているか再確認。

 どうにかこうにか特攻戦法について来ているようだが、無鉄砲作戦に不慣れなのかゲンナリした表情が窺える。思わずヨウは苦笑する。


「やーっぱこの戦法は俺達のチームならでは、だな。さてと本隊が待っている。早く五十嵐達の所在を掴まないと。挟み撃ち作戦もクソもねぇしな。シズ、五十嵐の姿は?」


「見えないな。まったく……何処に息を潜めているんだか。手当たり次第、敵に突っ込んではみるが」


 「ああ。たのむ……」ヨウは途中で口を閉ざした。

 「どうした?」シズの問い掛けに、「ちょい待て」取り敢えず手当たり次第、敵に突っ込んでおいてくれと頼み、自分は思案を巡らせる。

 五十嵐はわざわざ因縁の場所でもある“港倉庫街”を血祭りの場所として選んだ。因縁の戦法、『漁夫の利』作戦を決行し自分達に勝利。それだけでは足らず、忌まわしき“港倉庫街”を選択する。ということは五十嵐は何らかの形で因縁に固執している。あの時の敗北を浄化するように、因縁の場所や戦法で自分達に勝負を仕掛けてくる。


 考えろ、考えることが苦手でも今はよーく考えろ。

 五十嵐の性格上、奴はどデカく高いプライドを持つ男。自分に逆らうものはすべて屈するよう、強弱者関係無しに追い詰める男。その男が自分達に大敗をした。大敗を浄化したい筈。何も無かったことにしたい筈。


 だったら――ヨウは瞠目し、そうかと呟いた。



「俺達が五十嵐を伸した倉庫の場所。五十嵐はあそこにいるに違いねぇ…、シズ。テメェ憶えているか。確かトタン壁っぽい古い倉庫だった筈だったんだが」



 シズは間を置いて相槌を打った。


「ああ。この港倉庫街で一番古く大きい……クレーンやドラム缶、沢山の機材類が詰め込まれていた場所だったことを憶えている。ヤマトが立てた『漁夫の利』作戦にも適していたしな。あの作戦は自分達の存在をギリギリまで気付かれないよう……尚且つ、相手の様子を窺う必要性があった。極端に物が多く、身を隠しやすかったあの倉庫のことは、よく記憶に残っているが……」


「そこだ! 頼む、そこに行ってくれ! きっと五十嵐はそこにいる! あいつは自分のヤラれた場所で俺達をヤたいんだ! すべてを白紙にするためにケリをつけたいんだ!」


 必ずそこにいるという確証は無いが、長年培ってきた喧嘩への勘が騒いでいる。奴はそこにいるのではないかと。

 闇雲に混乱を起こしてキャツを探すよりも当てがある限り、一抹の可能性でも信じてみようではないか。自分を信じてヨウはシズに“あの時”の戦場に向かって欲しいと頼み込む。間髪容れずシズは了解だと綻び、ハンドルを切りながら仲間達に指示するよう促す。

 一点の曇りもなく自分の勘を信じてくれている副頭に、ひとつ自信を持ったヨウは早速後尾を走る仲間達に指笛を鳴らして指示。自分達に迷う事無くついて来いの意味合いを込めて指笛を鳴らした。

 次いでヨウは先ほどと同様にチャリ組に連絡を取り、その旨を話す。


「あの時の倉庫場所分かるか?」


 分かるなら、確認の意味を込めて先に向こうへ乗り込んで欲しいのだが。

 きっとバイク組は途中で妨害に遭うだろう。チャリ組の方が持ち前の乗り物を駆使して倉庫に到達出来る筈。


「すぐ追いつくから。一足先に向こうに行ってくれ」ヨウの命令に、


『マージョーで? 場所は薄っすらボンヤリ憶えているけど二人で乗り込むのは無謀過ぎない? もし敵がいたらお陀仏じゃんか』


なんて文句垂れてくる。

 刹那、仕方が無さそうにホシは承諾し、もしも親玉がいたら一報寄越すからと告げて電話を切った。遅れたら承知しないと、しっかり釘を刺して。

 おーっと、こんな風に催促されたら急がないわけにもいかない。自分達も早く“例の倉庫”に向かわなければ。


「急げ、シズ。タコ沢とホシを先に向かわせた。見てあの時の倉庫がどれだったか分かるか?」


「この“港倉庫街”の倉庫には各々アルファベットと数字がペンキで記されている。自分達がどんちゃん……起こしたのは“S-4”倉庫だ。ドデカイ倉庫だったから……そんな一目で分かるだろ……」


 頼もしい発言に安心だとヨウは一笑し、運転の一切を副頭に任せた。


 半月の空の下、夜風を切りながらバイク達は前方を裂くように走り続ける。

 点々と前方に光をチラつかせる正体を瞳に捉え、ヨウは再び舌を鳴らした。暗くて視界が悪いが、どうやら味方ではないようだ。角材やら鉄パイプやらがチラチラッと目に付く。何処に行っても敵が道を阻む。一体全体、五十嵐はどれほどの人数を舞台に用意したのだろうか。

 幾ら協定チームを引き連れてきたとはいえ、こうも行く先々に敵が待ち構えていると嫌気が差す。


「仲間達のためにも突破口を作るぞ」


 言うや否やヨウは軽く腰を上げ、持っていた角材を軽く回した。

 加速する風に乗り、振り下ろされる鉄パイプを角材で受け止め弾き飛ばし、先端で敵達の小手を狙う。速度と抵抗に遭い、軽く向こうが怯む。後退するバイク達の隙を逃さず、「飛ばせ!」ヨウは手を挙げて仲間達に指示。

 玉城兄弟は更に相手を怯ませるために持参している爆竹に火を点し、地面、運転席に狙って投げる。


 「人数が多い」ススムは顔を顰め、バイクのスピードを上げた。相手にぶつからぬよう器用にハンドルを切りながら、ヨウとシズが作る突破口をゴリ押しで進んで行く。

 だが人数は一向に減らない。向こうの用意周到さには舌を巻く勢いだ。突破しては待ち伏せ、突破しては待ち伏せ、突破しては敵さんいらっしゃい。冗談ではない状況だ。まるで前に一歩たりとも進ませぬようにしている構えだ。


 先に五十嵐がいる可能性が大になってきた。

 傷付いた角材を敵に向かって投げ付け、ヨウは眉根を寄せた。このままでは埒が明かない上に時間ばかりが過ぎていく。幾ら特攻が得意だといっても、これでは本隊に出動合図も送れないではないか。どうする、もっと効率の良いやり方は……。


 と、待ち伏せしていた敵側に異変が。

 横道から別のバイクに乗った不良達が現れたのだ。あれは、自分達に味方付いている協定チーム。しかも自分達の協定チームではないか! なんてグッドタイミングだ。てっきり出入り口付近で協定チーム同士衝突していると思っていたのに。


「構わず行け、荒川! 此処は俺達が受け持つ! 何人かはそっちにつかせる! 安心しろ、再結成した俺達はパワーも人数も劣ることなかれだ」


 エンジン音に負けぬよう喝破してくる浅倉は、ニヤッと笑って今度こそ負けるなと片手を挙げてきた。エリア戦争のような勇士を見せてくれ、なんて小生意気な口を叩く協定の頭に一笑し、ヨウは必ず勝ってくると握り拳を振り上げた。

 援護するように自分達の脇についたバイク達にはダブル舎弟や方言丸出しの副頭・涼が乗っている。

 待ち伏せしている集団には、蹴散らすように率先して相手へと突っ込む。ヤマトチームの協定も援護してきてくれたため、先程よりもスムーズに前へ進むことが出来た。


 嗚呼、この先に五十嵐がいるかもしれない。

 浅倉達に感謝しつつ、ヨウは妙に鼓動を高鳴らせ緊張感を募らせていた。五十嵐がこの先にいたら、いたら、今度こそケリをつけてやる。仲間を攫い、チームに屈辱を味わわせ、自分達をせせら笑ってきたあのいけ好かない不良を、今度こそ自分の手で。

 チームのリーダーとして親玉を討ち取ろう。それがリーダーの役目だと、未だにヨウは思っている。無論、これはチーム同士の喧嘩であり、チーム一丸となって戦う喧嘩だ。


 しかしリーダーとしての役目・役割というものが確かに存在している。仲間達は自分をいつも支えてくれた。

 間違いを犯そうとしたら正し、時に演技をしてまで大切な事を教えてくれた。そんな仲間達を守るため、チームを守るため、自分はリーダーとしてヤラなければならないことがある。きっとその念はヤマトも同じだろう。頭として一旗挙げるために、チームのために、親玉を討ち取りたい……と。


 グッと体の筋肉を強張らせ、ヨウは因縁の因縁とも言える倉庫を目前にガンを飛ばす。

 並列に並べられた倉庫たちの何処よりも古く、そして広さを誇る“S-4”倉庫。向こう先に見えるのは既に到着したであろうチャリ組、乗り物に乗っていないこそ集団に追い駆け回されている。それを目にしたのと同時にヨウの携帯が鳴り響いた。


 出ると、『いる!』矢継ぎ早に喋るホシが倉庫内に五十嵐がいると一報を寄越す。


「ビンゴじゃねえか。俺って冴えてらぁ」


 自身を褒め称えつつホシに了解だと返して電話を切った。

 チャリ組を襲っている私服姿の不良、というよりヤンキー達は自分達の姿を捉え、数人倉庫内に飛び込む。ボス猿に報告に行ったというところだろう。

 更に自分達がホシとタコ沢を援護するように戦場に参戦した頃、倉庫からのっそりと一人の男が現れた。半月の光を浴びて、やや青く染まっている紫髪にニヒルな笑い。相変わらず片手には携帯、ツイッターでもしているのだろうか。捜し求めていた親玉の登場にヨウはにやっと口角をつり上げた。

 向こうも負けじと嫌味ったらし笑みを浮かべ、「よっ」と片手を挙げてくる。


「よく此処まで辿り着いたな、ゲームは楽しんでいるか荒川」


 目を細め、冷笑してくる五十嵐にヨウも冷笑を返す。


「ああ。マージ楽し過ぎてワクワクしてるぜ。五十嵐、超会いたかった。会いたかったぜ!」


「なっ、馬鹿、ヨウ! お前ナニを!」


 シズの制止をろくすっぽう聞かず、誰よりも早くキャツの下に行くため走っているバイクから飛び降りる。

 「あの阿呆」カッコつけてどーするのだ、一歩間違えれば怪我を負っていたというのに……と悪態ついている副頭の呆れ声など耳に入らない。勢いづいた飛躍も見事に着地してみせ、不良達の集団挟んで向こうの親玉に睨みを飛ばす。

 「仲間は何処だ!」一変して喝破するヨウに、「さあな」探し出してみせるのもゲームの余興ではないかと五十嵐は鼻を鳴らす。


 一々癪に障る奴だ。

 舌を鳴らし、上等だとばかりに上唇を一舐め。ヨウは自分の力で探し出してみせると挑発を買った。


「テメェをぶっ倒した後にゆっくり探してやる。覚悟しろよ、五十嵐……たっぷり礼を返してやる。俺や仲間、チームに浴びせた屈辱は此処で晴らしてやる!」


「よく吠える男だ。奇妙な面子と一緒だしな。数人、日賀野の仲間が紛れている。ということは、お前等、手を組んで何か目論んでいるな」


 やや五十嵐の表情が険しくなる。

 自分達がどんな狡い手を使って攻めてくるのか必要以上に懸念しているようだ。

 『漁夫の利』作戦を凌ぐ湖水手を使ってくるのではないか、と思案しているのかもしれない。残念、今回は狡い手というより頭脳戦。正々堂々とした立派な戦略を立てさせてもらった。 単純且つシンプルで両チームのお得意分野がふんだんに生かされた戦法で攻めさせてもらう。

 まあ時機が来るまで戦法のことは明かしてやらないが。


「目論み? ッハ、そんなまどろっこしいことしねぇよ。俺はヤマトと違うからな、真正面から挑ませてもらうぜ」


 嘘は言っていない。

 自分達の役割は真正面からキャツに挑み、混乱を引き起こすことなのだから。説明不足ではあるけれども、嘘は一点も言っていない。真正面から挑む、これはまさしく本当のことであり本音、そして現実になるのだ。

 にやにやっと余裕綽々に笑みを浮かべ、ヨウは地を蹴って不良達の集団に突っ込む。否、五十嵐に向かって駆け出した。



 一方でヨウを援護するために、バイク組が集団を散らそうと機械を乗り回す。

 だがバイクでは散らすのに限度がある。その上、敵は頭を使ってバイクが来られないようドラム缶を踏み台に伝ってコンテナにのぼってしまう始末。寧ろのぼられたことにより、上から襲い掛かってくる危険性も出てきた。降りて戦うのが無難だろう。

 「此処からは持久戦か」ヤレヤレとばかりに肩を竦めるススムは、バイクの速度を落としつつ隣を走る向こうの副頭に声を掛けた。


「お前のところのリーダーは本当に無鉄砲だな。敬服に値する」


「否定はできない……だが、そんなヨウに……救われているところもある。ヨウも良くも悪くも真っ直ぐ……なんだ」


 だから手を焼いたりするんだけどな。

 苦笑を零し、シズはヨウに向かって指笛を吹いた。不良の集団に阻まれ、なかなか思うように前に進めないヨウが苛立ちながら振り向いてくる。

 しかし彼は指笛の意味をすぐに理解し、指笛を返して大きく頷いてきた。合図を送れということだろう。大ボスを目の前に完全に合図のことを忘れていたらしく指笛を吹いた後、片手を出して謝罪してくる。まったく頼れるリーダーなんだか、不甲斐ないリーダーなんだか、分からない奴だ。


「ヤマトが知れば、怒る光景だろうな」


 ススムのぼやきに、「まったくだ」まさか本隊の存在を忘れているとは、シズは苦笑いを零した。一点のことに集中すると周りが見えない。揺るぎない気持ちで一点に集中してしまう。それは今も昔も変わらない短所であり、彼の長所だ。


 さてと雑談もここまでにしようではないか。

 これからは自分達もバイクから降りて不良達を相手取らないとならないのだから。メッチャクチャに暴れてやろうではないか、勝利のために。


「第二幕の始まりだ……」


 シズはバイクのホーンを鳴らし始める。

 倣うようにススムが、玉城不良兄弟が、そしてバイクに乗っている協定達がバイクのホーンを鳴らす。夜空に舞い上がる音は音を上塗りし、また音を重ね塗りして、一つの音を奏でる。巨大な音は数秒しか作り出すことが出来なかったが、数秒で十二分に第二幕の合図が伝わるだろう。


 そう、これから本幕が上がるのだ。




「なあに目論んでやがるんだろうな」


 倉庫の出入り口付近に突っ立って様子を見つめている五十嵐は、鼓膜が破れそうなほどのドデカイバイクのホーンを耳にし眉間に皺を寄せていた。馬鹿みたいにホーンを鳴らしているわけではないだろう。奴等は馬鹿であるが、考え無しに動くような輩ではない。きっとあのホーンには何か意味があるのだ、意味が。

 まあ、いずれ分かるだろう。ふうっと息を吐き、五十嵐は倉庫の中に足を踏み入れながら携帯で連絡を取る。相手は古渡。



「俺だ。荒川達がこっちに来た。……ああ……ああ。こっちの人質は任せとけ。お前はもう一人の人質を逃がさないよう見張っとけよ」



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