02.お騒がせ舎弟問題勃発(俺は完全にとばっちり!)
俺はハジメと一緒に声のする方へと視線を投げる。
そこには倉庫裏から表に続く道、そして爛々と目を輝かせているヨウ信者のモト。
んでもってモトと同じ制服を着た不良さんらしき人物が一匹。髪の色がこれまた白っていうド派手っぷり。年取って老化していったら自然に髪も白になっていくんだから、わっざわざ若いうちから白に染めなくてもなぁ。
……また不良が増えたよ。
しかも見るからにヨウ信者っぽいんだけど。なんか面倒なことになりそうなんだけど。
清々しくタコ沢を伸したヨウはモトの存在に気付いたのか、まずモトに声を掛ける。そして隣にいるヤツは誰かと疑問を口にした。「俺の一番のダチなんです」モトは白髪頭の不良を小突き尊敬するヨウに友達を紹介、しようとする前にその不良は大音声で言った。
「俺っち、貴方のすべてに一目惚れしたっス! ヨウさんの噂、よく聞いてるっスけど、ぜーんぶがカッコイイっス! 男の自分から見てもめっちゃ惚れるっス!」
「お……おお、そうか。そりゃサンキュ」
「気安くヨウさんって呼んですみませんっ。でも俺っち、貴方に会えただけで胸の鼓動がッ、あぁあああやばいっスよぉおおおお! 本物は超カッコイイっス!」
………。
うわぁーを。これまた熱の入った告白なことで。ちょっと見方を変えれば大変誤解を招く発言に違いない。
ヨウは突然の告白に面食らってるし、モトはモトで「あったり前だろ!」何を今更とばかりに鼻を鳴らしている。普通はもっと別の言い方があるだろって友達にツッコむところなのに、モト、お前、当たり前だろって……。
「ヨウさんはなヨウさんはな! 誰よりも一番カッコイイ不良なんだぞ! 地元じゃ一番なんだぞ! 分かってるのか、キヨタ!」
地元じゃ一番かどうかは分からないけど、ヨウはイケメンだしな。俺等のチームの中じゃ飛び抜けてる超イケメン。
(自分で言ってて虚しいけど)舎弟の俺が霞むほどのイケメン……チックショウ、惚れるかどうかは置いておいて凡人の俺からしたら羨ましい限りだぜ! 妬んでも仕方が無いよな?! 妬みは生理現象だよな!
「分かってるってモト! 地元の枠を越えてもヨウさんはカッコイイ不良なんだろ!」
いやぁ、さすがのヨウも地元の枠を越えるかどうかは分からないけど。実際に枠を越えたらモデルも夢じゃないぜ。さすがに大袈裟だよなぁ。ヨウがイケメンってのは認めるけどさ。
「おうよ! 日本一だ! 日本中の不良が束になってもヨウさんには敵わない!」
「いや世界一だろ! 外国の不良にだってヨウさんは負けない!」
……駄目だこりゃ。こいつ等は根っからのヨウ信者だ。
崇拝っぷりが凄まじくてこっちが引くっつーの。ヨウも引いてるみたいだ。体を引いて困惑している。
二人してカッコイイと騒ぐもんだから、蚊帳の外にいるヨウが俺達に救いの眼差しを送ってきた。
俺とハジメはアイコンタクトを一つ取って愛想笑い。見捨てるわけじゃないけど、あれをどう救えと? ヨウ信者を止められるのはヨウしかいねぇって。無闇に俺等が入っていったら逆ギレされそうで恐いしな。ヨウ信者は恐い。めっちゃ恐いぞ。現に俺はヨウ信者のモトに初対面で蹴られそうになったしな! 悪いけど俺じゃお前は救えないぞ、ヨウ!
ゲラゲラと笑うワタルさんは目尻に溜まった涙を拭きながら「男女にモテモテ」と茶化している。
響子さんはまた煩いのが増えたと呆れているし、弥生とココロはまだ自分達の会話に浸っているし、シズなんかまだうたた寝。タコ沢はまだ伸びている。誰一人、ヨウを助けようとする奴はいない。ヨウは自力で状況を打破しようと思ったんだろう。「おい」騒いでいる二人に嫌々声を掛けていた。
途端にピタって騒ぎ声は止まり、モトが改めて白髪頭不良を紹介する。キヨタと呼ばれている不良の本名は村井 清隆(むらい きよたか)。愛称キヨタだそうな。
前々からヨウのファンだったらしく、どうしても会いたいと言うから此処に連れて来たそうな。
日賀野の件があるから安易に人を連れて来るのもどうかって思うけど(ヨウはタコ沢を考え無しに連れて来たけどさ)、キヨタはモトの一番の友達みたいだし、あの様子じゃヨウ側の味方。モトも此処に連れて来ても大丈夫って判断したんだろうな。
もしかしてモトはキヨタをチームに入れるつもりなのかな? 見てる限り、そういう素振りはないけど。
思った瞬間、モトがヨウにキヨタがチームに手を貸してくれることを告げていた。きっとキヨタはチームの糧になる。そう付け足して。
「キヨタは凄いんですよ。少し前まで合気道習ってたんで喧嘩がめっちゃできるんです」
「合気道を? キヨタ、ちっせぇからそういう風には見えねぇけどな」
確かに。
目分だけどキヨタの背丈は165ちょいあるかないか程度。俺でも170あるし、チームの男子は大体170越えてるからキヨタが小さく見える。
「小さいと馬鹿にもできないんですよ、ヨウさん。キヨタは合気道で全国に行ったことがあるんです。キヨタ、表彰されたんだよな?」
「ちょっとな……そんなに凄くは無いんだけど」
「凄いじゃんかよ! 準優勝しているんだから!」
モトの紹介にヨウは勿論、俺達もすげぇって感心しちまった。
だって合気道で全国だぜ? 準優勝で表彰されたりもしたんだぜ? そりゃ喧嘩も強いわなぁ。
「なら俺より強いな」ヨウの褒め言葉に、「そんなことないっス!」滅相もないとキヨタはかぶりを振った。
「俺っちなんてヨウさんの足元にも及ばないっス! ヨウさんは強さは勿論、容姿も頭脳も性格もパーフェクトだってモトから聞いてますから! 実際、何度か喧嘩している姿を見かけているんっスけど、ヨウさんはやっぱ憧れの不良っス! 俺っちはそんなヨウさんに会えただけで幸せっス!」
「いや……、そう言われるとなんっつーか。俺、考える方は苦手っつーか」
「またまた謙遜しちゃって! 軽やかに喧嘩するあの身のこなし。ヨウさんはスッゲェカッコイイっスよ。俺っちが女なら絶対抱かれたいって思うっス! いやきっと男でも世の中には……、俺っちもそっちだったらなぁ! 残念なことに、俺っち、女が好きなんっス! すみません、心身共に尊敬尽くせなくて。けどヨウさんのこと大尊敬してることは胸張れますから!」
それは尊敬と言わない。言わないからキヨタさん。間違った方向に話が流れていってるから。
親指立てて爽やかに笑顔を作るキヨタにヨウの表情は引き攣っている。
そりゃそうだろうな。あんな風に言われちゃ誰だって引くって。イケメンってのも大変だな。女は勿論、男にもモテるんだから。初めて俺、凡人男子で良かったって思えたよ。でもイケメンか平凡顔か、どっちになりたいか選べって言われたら、やっぱり前者を選ぶけどな!
「そういえば……」キヨタが不意に肩を落とし、ヨウにポツリと質問を投げる。
「ヨウさん。舎弟を作ったそうっスね。俺っち、モトからその話を聞いて大ショックだったっス。ヨウさんが自分の後継者を作るなんて。しかも相手は不良じゃない……ただの地味っ子だなんて!」
ギクッ―。
心なしか冷汗が流れてきた。
ヨウ信者だから舎弟の話が出るんじゃないかな、とは片隅では思っていたけど、やっぱり来るとヤーな汗が噴き出てくる。そりゃ俺、舎兄に比べたらイケメンじゃないし? 不良でもないし? イケている奴でもない上に地味だし? 喧嘩もできなけりゃ不良をド突く勇気もねぇ日陰男子。
うん、何となく俺がヨウの舎弟だって知った瞬間の顔が想像できる。
ヨウ達不良の間じゃ舎弟を作るイコール自分の後継者を作るというシステムになっているみたいで、ヨウの舎弟の俺は必然的にヨウの後継者ってことになっているけど、俺もヨウも後継者とかそんなの考えちゃないぜ! これっぽっちもな!
俺はヨウの思い付きで舎弟になっただけだもんな! ヨウ信者にとっては妬まれる存在かもしんねぇけど、実は超可哀想なんだぜ。苦労人なんだぜ。とばっちり受けているんだぜ、俺って!
「どの人っスか?」キヨタがヨウの舎弟を探し始めた。
身の危険を感じた俺はイソイソと移動を開始(だって見つかったらめっちゃ面倒な事になりそうじゃんかよ!)。でも開始する間もなく、モトがあれだと俺を指差してきた。
モトおま……先輩に向かってアレ呼ばわりとは。俺が一端の不良だったらシメているところだぞ! 勿論俺は不良じゃないから出来ないけどさ! 胸張って不良は恐いと言えるぞ。
「ええええっ、あれ?! もうまんま想像通りの地味ちゃんじゃないかよ、モトー!」
うっるせぇ! 悪かったな、想像通りの地味ちゃんで! 地味なりに精一杯毎日を生きてるんだぞ、お前と同じ人間だぞ、コンチクショウ! お前も先輩の俺をアレ呼ばわりか、シメるぞ阿呆!
俺は心中で大反論。
うん、あくまで心の中でな。この悪態が口に出せる勇気があるかっていったら、皆無。まーったくないんだな。
だって相手は不良なんですもの。恐いじゃあーりませんか! 喧嘩の出来ない俺が合気道で全国に行った(しかも準優勝している)後輩をシメられる筈ないじゃないですか! シメようとしたら最後、返り討ちは確実!
「あれがヨウさんの後継者っスか」落胆を含むキヨタの声に、「あれが一応後継者」モトも便乗して落胆。
ヨウ信者に揃って落胆されちまったぜ、嬉しいな、チックショウ。すっげぇあいつ等の顔を殴ってやりたいぜ、ドチックショウ。
「うわぁあー……大ショックにショックが重なったっス。あのヨウさんがこんな……でももしかして、ああ見えて実はスゲェ喧嘩の腕の持ち主とか。だったらお手合わせ願いたいっス!」
ははっ、残念。俺は習字と塾しか習ったこと無いぜ!
だからお手合わせなんて無理だぜ! 勝負が数秒で決まっちまう! あ、習字なら任せろ、お前に勝てる自信はある! 習字ならな! ちなみに喧嘩の腕が無かったから日賀野にフルボッコされましたが、何か?
「実は至近距離で見ると隠れ美形だとか」
だったら今頃、俺はイケているナリで此処にいると思います! 彼女もいると思います! 彼女いない歴16年ですが、何か?
「実は実はー……分からないっス! なんであれがヨウさんの後継者なのか、俺っちには分からないっス! ヨウさんって地味が好みだったんすか?! だったら俺っちも明日から黒髪にしてダサ眼鏡掛けてみようかな。けどあいつみたいに地味オーラが出るかどうか分からないっス!」
「努力はしてみますけどできるかどうか」頭を抱えてしゃがみ込むキヨタ。
お前、地味が好みって発言、おっかしいだろ。ちょっと見方を変えればとんでもない誤解を招く発言だからな? な? しかも地味オーラ……好きで地味していると思ったら大間違いだぞバッカ野郎! ったくもう、ヨウ信者って揃いも揃って面倒な奴等バッカだな。
どーせこの後、ヨウ信者はこういうに違いない。お前なんてヨウの舎弟に不釣合いだ! ってな。分かってるんだよ、そういうこと言われるの。ヨウ信者のモトで十二分にそれは分かったんだし。
きっとあいつも、
「地味だけどヨウさんが認めた舎弟。ヨウさんの後継者。うーん……ヨウさん、俺っち、貴方の舎弟さんと勝負してみたいっス」
そうそう。勝負を申し込んでくるんだよな。
ヨウ信者ってこういうところがあるから面倒――はい? へい、ボーイ。今なんて言った? 今、俺と勝負してみたいとかほざいたような。
「ケイと勝負?」
「はいヨウさん、是非舎弟さんと勝負してみたいっス。ヨウさんが認めた舎弟さんってどれほどものなのか、自分の目で見てみたいんっス!」
キヨタは元気よく頷いて構えを取った。
え、マジで? マジで言っているのそれ? 無理だぞ。俺ぁは無理だぞ。勝負が始まった瞬間、勝負が決まっちまうじゃないか! 瞬殺されるって! 俺を病院送りにでもしたいのか? あいつ。
目を点にする俺に対し、「ガンバ」ハジメは同情を込めて肩に手を置いてきた。俺はその手を掴んでハジメに縋る。
「ハジメー! 俺を見捨てないでくれよー! 俺達、喧嘩できない同盟の同士だろ! 俺だけ先に逝っちまってもいいのか?!」
「あー……僕達、いつ同盟を組んだっけ。いや喧嘩できないのは認めるけど…、ほら、ケイ。ヨウが呼んでる」
ハジメが前方を指差す。
ぎこちなく振り返れば、ヨウがちょいちょいと手招き。隣でキヨタが爛々目を輝かせて俺を待ち構えている。ははっ、やる気満々だな、おい。
「ケイ早く来いって」舎兄が急かすから、俺は泣く泣く重い腰を上げる。勿論喧嘩をするつもりはないよ。取り敢えず、向こうに行くだけで喧嘩なんて真っ平ごめんだ。あーあ、モトも面倒なヤツを引っ張ってきたな。
キヨタは散々人のことを貶していたわりに一応、目上に対して礼儀を弁えているのか、「どもっス」俺に会釈してきた。
会釈を返した俺は、開口一番に喧嘩は無理だと答えた。「へ?」間の抜けた顔を作るキヨタは、何を言っているんだとばかりに目を丸くする。ポリポリと頬を掻いて俺は正直に、喧嘩ができないことを告白した。寧ろ喧嘩の場面では足手纏いになってることも説明。
ヨウも俺の説明に加担した。
「ケイは喧嘩からっきしなんだ。ワリィけど手合わせは遠慮してくれねぇか?」
「エエっ?! 喧嘩できないっスか! じゃあ何で、ヨウさんの舎弟なんっスかぁあああ! 俺っち、ヨウさんの舎弟は絶対、モトだって思っていましたよ! モト、それなりに喧嘩できますし! ヨウさんをいっつも追い駆けてるじゃないっスか!」
「お、おい……キヨタ」
別にいいんだとモトはキヨタを宥める、けど、興奮が増す一方なのかキヨタの喚きは止まらない。
「だってそうじゃないか! お前の方が舎弟っぽいのにっ、こんな取り得もなさそうな男に座を取られちまって! 悔しくないのかよ!」
なんでこんな地味男がヨウの舎弟なのだと、キヨタはヤンヤンギャンギャン喚く。
呆気に取られているのは俺とヨウ。別に俺自身は舎弟に相応しくないと言われ慣れ続けてるからいいけど……、ここまで露骨にヤンギャンと言われるのも初めてで。落ち込みや怒りを通り越して呆気に取られる。すげぇなキヨタ。
モトは友達の言葉に言葉を詰まらせている様子だ。「ヨウさんが決めたことだし」何処となく悔しそうな、寂しそうな、そんな顔を作るモトにキヨタはすかさず言う。モトが舎弟になれよ、候補しろよ、と。
「な、なんてこと言うんだよ!」
キヨタの大問題発言に、モトは首を横に振って無理だと断言。「俺っち知っているんだぞ」キヨタは真顔でモトを見据えていた。
「お前が陰で努力していることを。俺っち、お前のそんな姿知っているからお前を推すんだ。まだ会って間もないけど、俺っち、お前の方が相応しいと思う。確かケイさんでしたっスよね。部外者の俺っちが言うのもなんですけど、悪いとも思いますっスけど、俺っち、貴方をヨウさんの舎弟だなんて認めません。モトを全力で推しますっス!」
なんか、キヨタって嵐のように人間関係を掻き乱すヤツだけど、友達想いだし、それなりに的も射ているよな。
俺自身も思っている。喧嘩のできない俺より、喧嘩ができている上にヨウを尊敬しているモトの方が相応しいことを。俺には大層な力がない。ヨウだって分かっていると思う。はっきり言って足手纏いだ。それも自覚はしている。しているんだけど。
俺とヨウは約束を交わしているんだ。いけるところまでいこうって。成り行きで舎兄弟になった俺等だけど、このままでいくって約束しちまったから。
「き、キヨタ」
モトは、別にいいんだとしきりに首を横に振っていた。
これはヨウが決めたことだから自分はどうこう言うつもりはない。確かに不満その他諸々はあるけど、自分が口を出すことじゃないからって。そう言うモトの顔はすんげぇ暗かった。
モト……やっぱお前、ヨウの舎弟になりたかったんじゃ。
お前、何だかんだ言ってもヨウのことを尊敬しているもんな。初対面なんて俺を試すかの如く喧嘩を売ってきたしな。あれ以降から、喧嘩は売られていないし、それなりに仲良く(って言っていいのか?)もしてくれているけど、モトの心の何処かでは……キヨタはモトの態度に憮然とした。
「なんでモトはそんなに尻込みするんだ? 俺っちなら、努力してでも舎弟の座を狙うのに。モト、ワケ分かんねぇって」
「だ、だからオレは!」
「――分かった、モトにその気がないなら、俺っちが立候補する。俺っち、ヨウさんの舎弟になりたいっス!」
また突拍子もない宣言だな!
キヨタのハチャメチャ宣言に俺達三人揃って絶句。
「候補ってテメェ」ヨウはキヨタを指差し、「あははっ……」俺は空笑い、「キヨタ……」モトは親友の傍若無人っぷりに頭を抱えていた。こんなことになるなら連れて来るんじゃなかったって嘆いている。
うん、今回だけはお前に同情してやるよ、モト。
頑張って認めてもらえるよう努力すると意気込むキヨタは、俺の前に立ってビシッと指差してきた。
「てことでケイさん! 俺っち、貴方に宣戦布告するっス! 舌洗っておいて下さいっス!」
舌じゃなくて首な。首。
心中で丁寧に訂正してやりながら、表の俺は小さく溜息。なんでこーなっちまうんだ。
だいったい元を辿れば、ヨウが皆の気持ちを考えないで俺を成り行き舎弟にしちまったのが原因だよな。俺って完全なとばっちりだよな。あーあ、田山圭太ってなんて不運な男なんだろう。
「おいおいおい」ヨウは勘弁してくれよ、と荒っぽく頭部を掻いた。
ただでさえ日賀野チームに宣戦布告したばっかりなのに内輪で揉め事が起こるなんて。そんな愚痴を零しているヨウに声を掛けてきたのは、それまで傍観していた響子さん。それにうたた寝していた筈のシズも立っていた。俺等の騒動にやや呆れてる様子。
「ヨウ……これはお前の責任だ。チームに支障が出ないよう、お前が解決しろ」
「なんで俺の責任ッ、イッデ!」
「アンタが考えもせず舎弟を作ったからこうなったんだろ」
響子さんはヨウの脇腹に肘を軽く入れる。
「加減しろって」ヨウは軽く小突かれた脇腹を擦っていたけど、響子さんはどこ吹く風で煙草をふかしていた。
「手前の立場も考えず、面白がってケイを舎弟にしちまったから、こんなことが起きるんだろ。ったく、手前のことだからって口は出さなかったけどよ。うち等不良の間での“舎弟”がどういう意味を指すか、ヨウ、分かってンだろ? アンタの“舎弟”になった奴は、本人達がそう思って無くても舎弟の後継者って認識される。
ヨウ、現時点でのアンタの後継者は必然的にケイになっちまっているんだよ。アンタ等がどう思っているか、うちには知るよしもねぇけど、少なくとも周囲の不良達はケイがヨウの後継人として見ている。不良ならまだしも、まずケイのナリがこれだ。なんで地味で喧嘩もできなさそうな奴が……度々噂も立ってンだよ。アンタがこういう事態を頭に入れてねぇからこうなる。特にアンタはここらじゃ有名過ぎる不良なんだ。いずれこんなことが起きるんじゃないかって思ってたけど……やっぱきやがったな。
ヨウ、この際だから決めちまえ。アンタの相応しい舎弟ってヤツを。
チームのリーダーでもあるアンタのその目で見極めて、相応しい舎弟を決めるんだ。しかも周りが納得するような意見を添えてな。うち等は誰でもいいけど、納得しない奴等だって現にいるわけだ。今までどおりケイを舎弟にするにしても、新たにモトもしくはキヨタを舎弟にするにしても、納得する答えがいる。少なくとも当事者のケイとモトやキヨタが納得するような答えを出せ。ケイなんざ、あんたの思い付きのとばっちりを受けてるようなもんだ。少しは使わない脳みそを動かせ。分かったな、ヨウ」
手厳しい響子さんの言葉にヨウはぐうの音も出ないみたいだった。
シズも同意見のようで、「チームの輪を乱すことは許さない」冷然と言い放つ。普段の眠たそうな顔は何処へやら。副リーダーらしい威厳がシズを取り巻いていた。
「お前の決定でチームの輪が乱れる可能性がある……」
自分達の目的はあくまでヤマト達を潰すこと。チームの輪が乱れては元も子もない。チームをより纏めるためにも、慎重に舎弟は決めて欲しい。
何よりお前はリーダー、これからは自覚を持って行動、してもらわなければ此方が困る。どちらにせよキヨタは、舎弟にならずともチームにはいて欲しい存在。合気道を使える点は大きな利益だからな。大きな戦闘力になる。モトの一番のダチならば、ヤマトの回し者だと警戒する必要性も無い。
「入ってくれるな?」シズの問い掛けに、「はいっス!」キヨタは勿論だって大きく頷いた。リーダーと違って、副リーダーはこういったチームへの考え方は本当に上手いよな。尊敬するぜ、ほんと。
はぁあぁ、なんかドえらいことになってきたな。
どうしよう俺。んでもってどうするよヨウ。俺等、色んな意味で舎兄弟ピンチだぞ。まさかこんなところで終わりを迎えようとは思いもしなかったぞ。
俺はヨウに視線を向ける。重々しく苦虫を噛み潰すような顔を作っているヨウに、俺は思わず苦笑い。後で舎兄弟二人っきりで話す必要がありそうだな。
「ケイちゃーん、リストラされたら僕ちゃーんの舎弟になればいいよーん! 僕ちゃーんの後継者にしてあげるってんばてんば」
会話に入って来たワタルさんは、ニヤニヤ笑いながら俺の右肩に手を置いてきた(左肩だったら叫んでるところだった!)。
ワタルさんの舎弟……それだけはご遠慮させてもらいたい。切に。日賀野の舎弟の次に遠慮させてもらいたい。だってワタルさん、ヨウよりも人使いが荒そう。んでもってワタルさんの二重人格部分には泣きそう。マジで。
まーだヨウの思い付き我が儘に付き合ってやった方がマシだって。
「キヨタちゃーんだっけ? ケイちゃーんは強豪だよよよん。なにせ、ヤマトちゃーんに舎弟勧誘されてるんだからっきょ! 何より、ケイちゃーんはヨウちゃーんの足。腕っ節だけで舎弟の座を奪えるかなっぱ?」
「ヤマトって、敵側の頭っスよね? ええええっ、ケイさんっ、日賀野大和に狙われているんっすか! 実は陰の実力者なんっスか!」
「そーそー。仮にケイちゃんがヨウちゃーんの舎弟をリストラされても、新たに身内の誰かの舎弟としておかないと、ヤマトちゃーんに狙われるぽ」
「マジっスかァアアアア!」キヨタは自分の絶叫した後、俄然燃えてきたと闘争心を滾らせる。
一方、俺はガックリと項垂れていた。ワタルさん、そうやってまた余計な知識をキヨタに植え付ける。「楽しんでいますね」俺が喧嘩できない、チャリと習字だけの男だって知ってるくせに。ワタルさんに視線を投げやる。
「正直に言っただけぴょーん」ウィンクしてくるワタルさんはへらへら笑い、溜息をついているヨウの肩を叩いた。
「ケイちゃーんリストラしたら、僕ちんにちょーだいね。移動が楽になるから!」
「チャリの後ろは俺の特等席だっつーの」
俺はあんた等の移動手段かよ!
ヨウの足だと自称しているだけに、そう思われてもしゃーないけど、だからって毎度まいど不良をチャリの後ろに乗せるのも苦労するんだぜ? 重いし、運転し難いし、速度も落ちるし。なーんて意見できたらスッキリできるんだろうなぁ。
うふふっ、不良のチームに入っても田山圭太、内心では超不良が恐い今日この頃です。俺も不良になっちまおうかなぁ! 取り敢えず舐められない程度に髪染めてみっか! ……仮にそうしたら、無難に茶色になるとは思うけどさ。
うーん、それよりもこんな出だしでこのチーム、大丈夫かなぁ。日賀野達、只でさえ曲者揃いなのに。
俺は小さく小さく溜息を零した。
こうしてお騒がせ舎弟騒動は、舎兄であるヨウの責任のもとで決められることが決定した。
候補者は三人。
現時点でヨウの舎弟になっている俺と、騒動の元凶のキヨタ、んでもって前からヨウ信者のモト。
この三人の中から、ヨウの相応しい舎弟を決めることになったんだ。しかもヨウの責任は重大で舎弟決定プラス、周囲が納得するような説明をしなきゃなんないんだからな。チームのためにも慎重に選べってシズから再三注意をされていた。
ヨウは事の大きさにスッゲェ参っているみたいで、今日一日だけで手足の指以上の溜息をついていた。ヨウは頭を使うことに関しちゃ、ホントからっきしだからな。頭痛がするって嘆いていたよ。
……まあ俺的に言わせれば自業自得だって。これに懲りたら、少しは思い付き行動、控えてくれよ?
舎弟騒動後は半強制的に仲間に入らされたタコ沢を交えて(タコ沢は帰りたがってたけどさ)、今後の策について話し合った。
日賀野達が情報や人材の輪を広げているのなら、俺達も輪を少しずつ広げていく。それは勿論だけど、輪を広げるだけじゃ駄目だ。向こうの輪を潰していかないと。向こうの輪が小さければ小さいほど俺達が優勢に立てる。向こうは繋がりの輪が大きいみたいだしな。
「だったらまずは情報源を沢山持っている池田チームを潰すのが良いと思うよ」
俺等の情報網役・弥生が意見し、その流れでいこうって決断する。
池田というのはこの辺一帯を縄張りにしてる他校の不良。本名、池田 邦一(いけだ くにかず)。
俺はまったく知らなかったんだけど、巷では結構有名な不良さんらしい。その不良さんが属しているチームは、日賀野達と協定を結んでいるようだ。互いに情報交換をしているんだと。日賀野チームの中には魚住っていう情報網役がいるけど、やっぱ向こうも一人じゃ限度があるわけで。魚住に次いでの情報網役がいるってわけだ。それが池田邦一率いる不良チーム。
こいつを潰せば、随分状況も変わる。
情報網役ってのは魅力的でそいつ等を手玉に取れたら万々歳だけど、なにせ日賀野達と協定を結んでるチームだからな。裏切られる可能性もあるだろうし、取り敢えず潰すって形で話は纏まった。
こっちはこっちで大変なことになりそうだ。まずは池田達のたむろってる場所を探さないとな。
倉庫裏で延々と続いていた話し合いがようやく終わり、俺は大きく伸びを零す。
「イタッ」激痛が左肩に走り、軽く手を添えた。動かす度、左肩に鋭い痛みが走る。完治には程遠いな。鉄パイプで負わされた怪我は並大抵のものじゃないや。
優しく患部を擦っていると、「大変だね」声を掛けられた。声を掛けてきたのは弥生。それにココロも一緒だ。弥生は微苦笑を零しながら、俺の背中を軽く叩いて応援していると言葉を贈ってくれた。
「私、ヨウの舎弟はケイだって思っているから。改めて舎弟に選ばれるよう、頑張ってね」
「ははっ、サンキュ。弥生。でもなぁ。相手が悪いって」
俺はヨウの方に目を向ける。
ヨウの周囲にはカッコイイと連呼しているキヨタ、それから今回の騒動を何度も深く詫びてるモトがいた。騒々しい光景極まりない。どっちも喧嘩ができる不良だしな。ひとりなんて合気道で全国だろ? 勝つ負けるの前に、俺、天に召されそう。
ゲンナリする俺に対し、弥生は変わらない応援を送ってきてくれる。
「ケイだって、すっごく頑張っているじゃん。いつも陰から見ていたよ、ケイの努力している姿。ケイらしく、がつーんと二人を納得させればいいんじゃないかな? 何よりケイは私を助けてくれたんだから、きっと何があっても大丈夫だよ!」
「ね?」笑顔で励ましてくれる弥生に、柄にもなく俺は照れた。
こんな風に言われると、あれだな。すげぇ嬉しいな。女の子に言われるともっと嬉しいな。やっだなぁ、俺、女の子に対する免疫ほんっとねぇな。でも超嬉しいって。応援されるとさ。
シズが池田チームの情報を入念に聞くために弥生を呼んだ。
「はいはーい」返事を返す弥生は頑張ってとウィンクを送り、颯爽と駆けて行った。弥生って人を元気にさせる力があるよな。今の応援で俺、なんか頑張れそうな気がする。あくまで気がするだけどさ。
「け……ケイさん……、私も応援してますので。その、ケイさんだからこそ頑張って欲しいと言いますか」
残されたココロが俺に話し掛けてきた。
「俺だからこそ?」首を傾げる俺に構わず、ココロはおずおずと隣に並んでヨウ達の方を見つめる。
「だってケイさん、私と同じ……その、あまり目立たない方ですから。でも比べれば私の方が目立たないと言いますか。ケイさんには親近感を覚えて」
「そりゃ俺とココロは不良じゃないから。みーんなバッチシ、髪染めたり、制服着崩したりしてるけど、俺とココロだけは真面目だもんな」
「だけど……ケイさん、ヨウさんの舎弟として頑張ってますよ。私も見習わないとなー……って。私、皆さんに何もデキませんけど……でも役には立ちたいんです。できれば、ヨウさんみたいになりたいなーって」
ココロは恍惚にヨウを見つめていた。
誰にでも屈折なく話し掛けてくれる、仲間思いのヨウみたいになりたいんだとココロは話してくれる。ココロにとってヨウは憧れの存在らしい。なんとなく分かるな、それ。俺もヨウに憧れる部分いっぱいあるもん。
イケメンもそうだけど、なんっつーか、仲間思いで真っ直ぐなところがな。羨ましい。
「ヨウさんは……とても素敵な方ですよね。何も役に立たない……地味女ですけど、せめて……ヨウさんのチームに恥じない女になりたいです。ケイさんのように頑張りたいです」
微笑を零すココロの独り言と表情に俺は目を削ぐ。
もしかして、ココロ……。
「ココロって、ヨウのことさ。好きだったりする?」
「え……え?! いえ、その! 憧れはありますけど、そんな……そんなこと」
かぶりを勢いよく振り、ボッと赤く染まるココロに俺は確信を抱いた。ココロ、好きなんだな。ヨウのこと。
憎いねぇ、ヨウの奴も。周囲の男子女子からキャーキャーワイワイ言われている上に、こうやって身近な奴からも想われているなんて。あーあ、俺もイケメンに生まれたかったな。「違いますからね!」全力で否定してくるココロに、俺はハイハイと聞き流して一笑。
「ココロだってさ、十分に役に立っているじゃん。俺、ココロがいつも皆に気配りしてるの知ってるぜ? 誰かが怪我したら誰よりも早く動くしさ。そういったところ、ヨウも助かってるんじゃないかな。ほら、あいつ、ああ見えて責任感強いし……どっかで背負い過ぎるところあるから。ココロはそういった意味で、ヨウや他の仲間達を助けてるんだと思うぜ? ココロはチームに必要な存在だって」
俺の言葉にココロは呆気に取られていた。
でもすぐに表情を崩す。「ケイさんもですよ」ポツポツ言葉を紡いできた。
「私、不良じゃないからこそ分かるんです。ケイさんの苦労。不良じゃないと、結構周りからとやかく言われますよね。それでもケイさん、屈することないから……私、ヨウさんにも憧れてますけど、ケイさんにも憧れてるんですよ。私、ケイさんのようにもなりたいです」
向けられる微笑に俺は面食らった。
あ、あ、あれ……ちょっと……これは……不意打ちなんじゃ。不意打ちっていうか、なんだこれ。妙に心拍数が上がっている。上がっちゃっているぞ。あっれー? どうしたよ、俺。
顔が熱くなる俺と同じように、ココロの方も言った言葉に羞恥を噛み締めているのか頬を紅潮させている。
俺達の間に沈黙が流れた。
ぎこちなく視線を合わせると、これまた顔が熱くなるという……どうした。マジでどうしたよ俺。てか、この沈黙、どうにかしないと!
「な、なあ」
「あ、あの」
かぶっちまったしさ!
なんだ、このタイミングの良さ! お互いに地味への親近感を覚えてるせいか、なんかもう、俺たち、息合い過ぎじゃね?! 気まずさが増すって!
「え、何? 先にいいよ。俺、大したことじゃ」
「わ、私の方こそ! ……ケイさん、お先に……」
嗚呼、ほらまた、こうやって譲り合いが始まっちまうし! 気まずいし!
視線を合わせては外し、俺とココロはどうやってこの空気を打破するか考えた。早く打破しないと心臓が壊れちまいそう。
「ココロー。ちょっとコンビニに付き……何しているんだアンタ等」
!!?
俺とココロは見事に硬直した。
ぎこちなーく視線を投げれば、そこにはキョトンとした顔で俺等の様子を見ている響子さんの姿。やっばっ、この空気はやっばっ! ココロはヨウが好きなのに、こういう空気を作ってたら誤解されね? 絶対されね? あたふたと俺は大袈裟に笑い、「じゃあ」ココロに挨拶してヨウのところに逃げることにした。
だけどココロに呼ばれ、つい立ち止まって振り返る。
ココロは頬を紅潮させたまま、優しい微笑を向けてくれた。
「ケイさん、ありがとうございました。私……ケイを応援してますから」
「お、おう。こっちこそサンキュな!」
軽く手をあげて今度こそヨウ達のところへ逃げる。
やばいやばいやばい、多分一時的な感情なんだろうけど、これはちょっと不味いぞ。うん、忘れよう。まずココロはヨウのことが好きだしな。うん。でも何だ、このモヤモヤ。ココロってさ。俺と同じ普通だけど結構、健気で可愛いところあるよな。名前のとおり心優しいし。
「あー駄目だ駄目だ!」俺は煩悩を振り切るように走った。何となく分かっていたその気持ち。どうしても認めたくなかったんだ。だって認めたら、それこそチームの輪が乱れちまうって。今は舎弟問題をどうするかを考えよう。何もなかったことにしよう。
「――ココロ。アンタ……ケイと何を話してたんだ?」
響子の問い掛けに、ココロは力なく笑った。
「お互いに、強くなりたいですね……と話をしてただけです」
それが思いのほか盛り上がってしまったのだと目尻を下げ、恍惚に前を見つめる。
ヨウに話し掛けているケイは近くにいたモトやキヨタからやんやん言われているようだけれど、彼はそれをものともしない。持ち前のノリ良い性格で罵声その他等々を受け流し、普通に不良と会話を交えている。
ココロには、それがとても凄いことだと思っていた。普通に不良と馴染めているケイは本当に凄い。
最初は少し戸惑いもあったっけ。ヨウが自分と同じような地味な男の子を舎弟として連れてきた時には、なんで? と戸惑ったけれど。同じ目立たない子があんなにも不良達と交わって、喧嘩に参戦したり、チームのために動いたり、時に友達と喧嘩して挫折したりしてたけれど。
何があっても不良達と対等に向かっていく直向きな姿に強い憧れを抱いた。自分にはない強さを、彼は持っていると思う。
彼に対する強い憧れと、それから……。
(ケイさんに『必要』って言われた。凄く嬉しかったなぁ……もっと頑張ろう)
見ていないようで、意外と自分のことを見てくれてることも分かった。それだけで幸せだ。
(あ、誤解されてないかな……。誤解だけはされたくないんだけど。ヨウさんには本当に憧れしかないから……でもケイさんには好きな人がいるようだし。多分、弥生ちゃんなんだろうけど。困ったなぁ。私じゃ勝ち目なんてないし)
「ココロ……アンタ、百面相になってっけど悩みでもあるのか?」
含みある問い掛けには笑いを入っていた。
響子には見抜かれているのだろう。自分の煩いを。彼女に目を向けると、「もっと行動してもいいのにな」笑って頭を撫でてきてくれた。それに羞恥を噛み締めながらも、ココロは今はこれでいいのだと思っていた。
背中を見つめているだけで十分だ。
直向きに不良と共に走る、彼の背中を見つめるだけで今は十分なのだ。
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