02.財閥交流会



 □ ■ □



【昼休みの学食堂にて】



「どうしよう。慎重に決めないと、こういうのってすぐになくなっちゃうんだよな」



 二兎を追う者は一兎をも得ずってヤツだ。

 まずは優先順位を決めて、確実に手にしたい物をピックアップしないと。あれもこれも迷っていたら、何も手にできない。折角の機会なんだから、なるべく多くの物を手にしたいけれど。


 俺はボールペンを片手にジーッと紙切れと睨めっこ。

 眉根を寄せて視線を配っていると、「空。何しているのだ」向かい側から声を掛けられた。顔を上げれば注文した定食を片手に席に着く鈴理先輩の姿。


「チラシか? まどろっこしいもの読んでいるな」


 彼女の隣に座る大雅先輩が揶揄してくる。

 まどろっこしいってなんっすか、チラシは生活の情報が一杯詰まっているというのに。そりゃあ御曹司お嬢様方には関係のない代物でしょうけど。


 ……てか、ほんっと大雅先輩、毎日のように俺達とメシ取るようになったな。当たり前のように俺達の席に着いちゃって。

 鈴理先輩も諦めたのか、肩を竦めて椅子に腰を下ろしていた。

 何度言ってもこっちに来るもんな。ぜぇったい友達少ないんだろうな、大雅先輩。性格に難があるから。別に嫌ってわけじゃないけどさ。


 大雅先輩が来ると、自然と宇津木先輩や川島先輩もやって来るん。後で二人もやって来るんじゃないだろうか? 後輩の俺としては、先輩ばかりでなんだか居心地が悪いんだけど……今度フライト兄弟を誘ってみようかな。


 そんなことを片隅で考えながら、俺はチラシを四つ折にした。

 改めて何をしていたんだと質問してくる彼女に、


「タイムセール告知を見ていたんっす」


 俺はスーパーのチラシをピラピラと翳す。

 これまた箱入り息子さんに娘さんはタイムセールってなんだって顔をしてきた。


 ええいド畜生、お金持ちのボンボンめ。

 金銭なんて考えず物を買ってるでしょ! こっちたらぁびた一文無駄にできないっていうのに!

 ……おっと、しまった。

 倹約の心がついつい剥き出しになるところだった。金持ちさんは金持ちさんで大変なんだってことを忘れるな、俺。


「タイムセールっていうのは、区切った時間内に行われるセールのことです。その時間にだけ、商品が値下げされて販売されるんっすよ。

 例えばほら、トイレットペーパーが68円。12個入りで68円! 激オトク! 他にも生鮮食品とか、日用品とか、色んなものが値下げされるんです。

 このスーパーでは月一でタイムセールをするんっすけど、毎度の如く豊福家はこれを狙っているんです。


 これを逃せば、また翌月まで待たないといけない。翌月まで他のスーパーのタイムセールで賄いといけない。

 此処のスーパーは特に大安売りしてくれるんで、月一タイムセールを楽しみにしているんです。


 今月はちょっとお金が厳しいんで、欲しい物を定めておこうと思いまして。

 それがなくてもタイムセールは主婦戦争っすからね、心しておかないと戦利品なしになってしまいます。

 千円以内でどれだけ多くの食材・日用品が買えるか、今日の俺の手に掛かっているんです。一週間をそれで賄いといけないんで、これまたプレッシャーなところなんっすけど」


「……な、なんか大変なんだな豊福も。なあ、鈴理」


「……空は家庭的な男だからな。それより空、昼食を取らないと時間がなくなるぞ。弁当は? あたしのものと半分にしよう」


 彼女は笑顔を向けてきた。

 鈴理先輩は俺のお弁当事情を知って、よくお弁当を作ってきてくれるんだけど、それはいつもじゃない。習い事やらなんやらで作って来れない日も当然ある。

 その時は俺の悲惨なお弁当と、自分の昼食を半分ずつにして一緒にご飯を食べているんだけど。


 彼女の問い掛けに、たっぷりと俺は間を置いて「ダイエット中っす」と笑顔を返した。


 だから遠慮せず食べて欲しい、言った直後に腹の虫が鳴って俺は居た堪れなくなった。ちょっとは空気を読んでくれよな、俺の腹。

 向かい側で先輩方が、まさかと顔を引き攣らせているじゃないか。

 突き刺さる視線に観念した俺は、「お弁当にできるものがなくて」とおずおず家庭事情を暴露。


「その、さっきも言ったんっすけど……今月、ちょっと俺の家、一杯一杯でして。お恥ずかしい話、昨日まで電気とガスが止められてたんっす」


「ま、マジかよ」


「マジっす。三日くらい電気とガスが止められて、ちょっと生活し難いってことで光熱費を払ったはいいんっすけど、今度は食費の方が」


 慌てるほど大袈裟な話でもなく、もうすぐ父さん、母さんの給料日だから、それまで生活を持たせればいい話。


 お弁当が作れないからと母さんがお金は一応持たせてくれる。が、これを使っちゃったら俺の家は一週間もやし炒め決定だ。何度経験しても、一週間もやし炒めは辛い。

 なんというかシャキシャキ感に飽きてくる。煮ても炒めても湯がいてもシャキシャキシャキ……調理法や味付けを変えてもやっぱりもやしはもやしだ。


 もやし一週間漬けは断固死守したい。

 だから今日は昼食を抜いてタイムセールに賭けようと思った。全財産の千円を今日のタイムセールに捧げる勢いなんだ。


「俺はまだ学校に通っているだけなんでいいっすけど、父さん、母さんは働いている身の上。疲れた体にもやし炒め一週間漬けとか苦痛極まりない。ぜったい栄養価の高いものをゲットして、二人に食べさせないと。二人もそう若くはないんで、美味しい物を食べて疲労回復に努めて欲しいんっすよ。今日は双方、飲み会に誘われているみたいだから安心なんっすけど」


「まったく。ご両親至上主義もいいが、少しは自愛したらどうだ? そうやって苦労を同情されたくないのは分かるが、少しはあたしに頼れ。言ってくれたら、弁当だって作ったというのに。ばあや、すまないがこれを分けてくれ」

 

 いつの間にいたのか、お松さんがテーブルからぬっと顔出し、さっさと先輩の皿から料理を小皿に分けていく。

 今日の先輩の昼食メニューはトンカツ定食。

 だから、切り分けられていたトンカツを半分ずつ盛ってくれているんだけど。


「一食くらい抜いても平気っすよ?」


「馬鹿者。食べ盛りだろ? 食わないでどうする」


 先輩が不機嫌に返した。


「そうやって昼食を抜いて、どんどん痩せていったりする? いいか空、あたしはな、あんたにちゃんと食ってもらいたいんだ」


 先輩……そんなに俺のことを心配してくれて。


「でなければ、抱き心地が悪くなるだろう! しっかり食って、あたしを誘惑してくるエッロイ体を保持しとけ!」


 喜べばいいんっすかね、その主張。素直に受け取れないんっすけど。 

 誰がエロイんっすか、誰が。先輩の色目フィルターが勝手な妄想をしているだけでしょーよ。誘惑した覚えはこれっぽっちもないんっすけどね。


「ガリガリなど論外だ」


 熱弁する先輩は、食わないなら食わしてやるまでだとニヤリ顔。

 誤魔化し笑いを作る俺は、目前に置かれた皿を素直に受け取り、手を合わせてイタダキマス。彼女に逆らったら何をされるか分からない。貞操を守るためにも指示に従った方が身のためだ。


 鈴理先輩にお礼を言い、箸立てから割り箸を取る俺の一連の流れを眺めていた大雅先輩が、「ほんとにお前のところは大変なんだな」箸の先端を銜えてぼやいた。

 次いで、「そうだ」頭上に豆電球を明滅させて身を乗り出してくる。


「なあ豊福。今日の夕飯代が浮く良い話があるぞ。ご両親は飲み会で不在なんだろ? 尚更お前にピッタリな良い話があるんだ」


「え? 夕飯代が浮く?」


 ついつい食いついてしまう俺に、「なあ鈴理」大雅先輩が満面の笑みを浮かべて提案した。

 今日の財閥交流会にこいつを連れて行こうぜ、と。


 それは良い案だと相槌を打つ鈴理先輩が一緒に行こうと前触れもなしに誘ってきた。


 財閥交流会? なんっすかそれ。

 キョトン顔で訊ねれば、提携している財閥達が集う会だとか。

 今回は未来を背負う財閥グループの二世、三世、簡単に言えば財閥の子供達が集う会。鈴理先輩や大雅先輩は勿論、竹之内家の姉妹も、宇津木先輩も出席するそうな。

 交流会と言っても、ただの立食パーティー。談笑と交流を目的とする集会だから、そう堅苦しい集会でもない。


「美味い物が沢山出るぜ?」


 折角のチャンスだから、参加してみないかと大雅先輩が指を鳴らして俺を誘ってきた。トンカツを齧る俺は当然乗り気にはなれなかった。

 だってさ、そのパーティーって財閥達が集うんだろう? 庶民の俺が参加できるわけないじゃないか。招かざる客っつーのかな? 俺が行くなんてお門違いもいいところだって。


「それに俺が行ったら不味いんじゃないっすか、二人の立場的に」


 俺は交互に大雅先輩と鈴理先輩に視線を配った。


 一応、二人は許婚。

 公の場でも公式許婚として名が挙がっているらしいし。尻込みする俺に、「大丈夫だ」鈴理が一般人とお付き合いしてるのは皆知ってるぞ、と大雅先輩が笑顔を作った。

 「え゛? マジっすか」引き攣り顔を作る俺に、「あたしが言いふらしているからな」胸を張る鈴理先輩。


 先輩、面子ってものを考えなくていいんっすか? 困るのはお二人だと思うんっすけど。


「お前が顔割られたくないって言うならダチってことで通すからさ。俺達の付き人なら大歓迎してくれる軽いパーティーだし。なあ、行こうぜ、豊福。マジ見知らぬ財閥の奴等と話すのダリィんだ。ダチと一緒なら今日のダルイパーティーも有意義に過ごせそうだし」


「だけど、俺……タイムセールにも行かないといけないっす。お誘いは嬉しいっすけど……そんなパーティーに出られるような服とか持ってませんし」


 持っている私服じゃあ、とてもじゃないけど公の場に出られない。鈴理先輩との初デートでさえ制服だったっていうのに。


「立食パーティーは七時からだし、あたしと大雅は制服で出席する。あんたも制服で出席すればいいさ。タイムセールは何時からだ?」


「5時から6時の間っすけど」


 パァッと鈴理先輩の顔が明るくなった。否、意地悪くなった。


「では問題ないな、空。決定だ。立食に出る料理は最後に包んでもらうこともできる。ご両親に大きな土産ができるんだぞ? この誘いを蹴る必要なんてない」


「そーそーっ。たまには贅沢なメシを体験するってのいうのもイイと思うぜ? 俺と鈴理が誘っているんだ」


「蹴るわけではないだろうな? 彼女のこのあたしが誘ってるんだ。拒否権なんてないと思うんだが?」


 「そーらー」「行こうぜ?」あたし様と俺様に迫られて、俺はドッと冷汗を流した。


 これは俺に選択肢なんてないんじゃ。

 断ったら最後、あたし様と俺様になんて言われるか、そして何をされるか。

 体を引いて、愛想笑いを浮かべる俺は目を泳がせながら、「じゃあ。えーっとタイムセール終わってから行ってみようかなぁ……」小声で返答。


 決まりだとニンマリ笑う悪魔達に、俺は乗せられてしまったと深い溜息をついた。

 ほんとに大丈夫なのかな、こんな貧乏人男が行っても。



「あっれー、豊福。あんたも立食パーティーに行くの? 良かった、うちも行くんだ」


  

 会話に割り込んできたのは川島先輩。

 当たり前のように俺の隣を陣取る彼女は、「イェーイ。一般人仲間」ハイタッチを求めてくる。反射的にハイタッチする俺は川島先輩も行くのかと質問。「もち」百合子に誘われたから行くんだと胸を張る川島先輩は、向かい側を親指でちょいちょいと指す。


 視線を流せば、カッチンコッチンに固まっている大雅先輩の隣に腰掛ける宇津木先輩の姿。彼女からにこっと微笑まれる。


 大雅先輩は……嗚呼、ぎこちなく食事再開している。


 このアスパラベーコン巻系男子め。

 鈴理先輩や俺には偉そうな口ばっかり利くのに、俺様はどーしたんっすか? あーあーあー箸を持つ手が震えちゃって。ほんっと本命の前ではなんちゃって俺様なんっすね、大雅先輩って。


 呆れている他方で川島先輩が話を続ける。   


「豊福、超チャンスじゃない? 財閥のメシ食えるなんて。うち、絶対に包んでもらおうと思ってるんだ」


 ウキウキ声で川島先輩がそんなことを言うもんだから、俺は爛々目を輝かせちまった。


「川島先輩も包んでもらおうと」


「あったりまえでしょ。美味いものは包んでもらって家で味わう。庶民の常識っしょ。んで舌に馴染む安い熱い茶と一緒に土産を食べる。最高じゃない?」


「ですよね! わっかります! うっわぁあ、俺、仲間ができて凄く心強くなりました!」


 「だしょだしょ?」笑声を漏らす川島先輩ともう一度ハイタッチ。

 向かい側に座っているご令息ご令嬢は顔を見合わせて、「なんで安いお茶なのでしょう?」うんっと首を傾げる宇津木先輩、「意味不明だぜ」肩を竦める大雅先輩、「最高な食べ方なのか?」高い茶ではダメなのかと鈴理先輩。


 三者三様の反応に川島先輩は「これだから坊ちゃん嬢ちゃんは」嫌味ったらしく首を振って、あんた達じゃ一生分かんないって、と俺の首に腕を絡めてきた。


「庶民育ちだからこそ分かる贅沢なんだって。ねえ、豊福?」


「あはははっ、まあ……」


「むっ。待て早苗。あんたが理解できて、あたしにできないなんぞ言語道断だ。その庶民の贅沢とやら、あたしも一度経験させろ。必ず理解できるから」


 いやぁ、無理と思うっすよ。鈴理先輩。根本的に育った世界が違うんっすから。

 でも鈴理先輩は本気で庶民の贅沢を理解したいようだ。バンバンとテーブルを叩き、「空と贅沢を共有しているなんて小生意気だぞ」川島先輩に大説教。

 これには俺も微苦笑。喜んでいいやら呆れたらいいやら、どういう反応すれば良いんっすか。


 嫉妬心を剥き出しにする鈴理先輩に、「あんたもようヤるわ」本当に豊福ラブなんだから、と川島先輩は口笛を吹いて感服。


「昨日だって三年から告られていたのに」


 なんて言われている光景を見て俺は気まずい思いを抱く。

 隣人の様子に川島先輩はもしかして知らなかった、とちょい気遣いをみせてくれた。


 答えは否。告白の件は俺も知っている。

 鈴理先輩の噂は、良くも悪くも学院で回るのが速い。先輩からも教えてくれたしさ。


 鈴理先輩の気持ちを知っていても、やっぱ不安になるのは片隅で俺自身に自信がないからだろう。


 だってしょーがないじゃん。俺は美人先輩と違ってすべてが普通くんなんだから。

 金銭面じゃ下の下なんだし。だけどこうやって不安を抱いていても先輩を気遣わせるって分かっていたし、俺は承知の上でお付き合いをしているんだ。

 こんな美人さんに好かれて、好きになって、付き合えて凄く幸せなんだ、俺。


「不安ならば、ゆっくり寝台の上で気持ちを伝えてやるぞ。空」


 こういう面さえなければ、もっと幸せなんだろうけど。いつまで健全関係でいられるんだろう、俺達。


 複雑な気持ちを噛み締めていると、


「マジお前等が来てくれると助かる」


 大雅先輩が話題を切り替えた。

 気の置けない顔見知りがいないとあんな立食パーティーやってられない、彼は箸をお椀に橋渡し。

 お冷の入ったグラスを手に持って意味深に溜息をつく。


 曰く、あっちこっちに良い顔をするのが苦痛らしい。

 話を合わせるのも辛いし、愛想笑いを作り続けるのも体力勝負。終わる頃には疲弊してしまうとか。


「しかも今回の交流会にはれいが来るだろうしな。あいつ、苦手なんだよな。だけど鈴理の許婚である以上、絶対関わりを持っちまうし」


 愚痴を零す大雅先輩に宇津木先輩は微苦笑、鈴理先輩は想像してしまったのか盛大な溜息をついてこめかみに手を添えていた。

 これまた三者三様の反応をしてくれているけど、玲ってどなた様?


 キョトン顔を作る俺と川島先輩に、宇津木先輩が自分達と同じ財閥の子なのだと教えてくれる。


 名前は御堂みどう れい

 先輩達と同じ17歳のお嬢様らしく、財閥界では名が通っている筋金入りの男嫌いだとか。


 一方で自分自身は男装を好む傾向があるらしい。

 理由としては男に負けたくない反骨精神からきているとか。自分も男のように振る舞い、いつかその男ポジションを分捕る。それが彼女の夢であり願望……と、まるで鈴理先輩と同じような夢を抱いているらしい。


 でも彼女の場合、男尊女卑の考えを根っこから毛嫌いしているからきている夢だとか。


 まあ、今日こんにちの社会、どんなに男女平等が確立されていても、どっかで男が優位ってところがあるもんな。

 男の俺からしてみれば、レディースデイとか、女性専用車両とか、そういった女性を特別視するお得なキャンペーンに羨ましさを抱いてたりするんだけど(安くなるってお得じゃん!)、社会的にはまだ男が優越してるところもあるよな。

 特に代々続いている財閥なら、そういった男尊女卑の考えが深く根付いていそうだ。


「玲は女に優しく、男に厳しい性格だから、俺には超厳しいんだって。百合子みたいな女には激甘でよぉ。一応、腐れ縁だから喋ってはくれるんだけどな。悪い奴じゃねえし」  


 やんわりフォローしているところからして、大雅先輩自身嫌ってはいないようだ。

 取り敢えず友達として位置付いているみたい。


「あいつのことだ」


 鈴理先輩は吐息交じりに、俺を一瞥。

 「へ?」間の抜けた声を出す俺に、「玲に何を言われても」気にしないでくれ、と先手の慰めを施してくれる。



「玲はあたしと良くも悪くも好敵手なんだ。幼少から、些少のことでも競り合ってきた。あたしの噂はもう耳にしているだろうから、あんたに興味を持っていてもおかしくないだろう。……その、なんだ。大雅も言ったが男にはやたら厳しいことを言う奴でな。痛烈な言葉を浴びせてくる可能性が大きいんだ。悪い奴ではないんだがな、性格上、どうしても……だから先に言っておく。右から左に聞き流してくれ」



 例えば貧乏だとか、容姿身形貧相とか、ご両親のことを弄くってくるかもしれない。


 だがそれもなるべくは聞き流して欲しいと、鈴理先輩。

 うーん、両親のことだけはおヤクソクできませんよ先輩。


 だって俺、悪く言えば重度のファザコンマザコンなんっすよ?

 両親至上主義の俺が馬鹿の一言でも言われたら、カッチーンのブッチーンだと。努力はしますけど。


「へえ、鈴理に好敵手ね。そりゃ会うのが楽しみだわ。どんな子? 可愛い?」


 川島先輩の質問に、大雅先輩が返答した。


「あいつはカッケー分類だ。男装が趣味だからな。髪はロングだけど、イケメンオーラムンムンだ。一人称も僕だしな」 


 典型的な男装趣味に走ってるんだな。

 んー、なんだか楽しみ半分、不安半分になってきたぞ。何事もなくパーティーを楽しめればいいんだけど。


 先輩の好敵手、か。

 話を聞くだけじゃ人物像が思い浮かばないや。



 どんな人なんだろうな、御堂 玲先輩って。



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