ペパーミント・ラテと考査試験

「お待たせ!あれ、逹は?」

 私は大学のキャンパス内にあるカフェに急いで来た。午後からの講義がない私は、四年生前期の考査試験の勉強会があると聞いてやってきたのだ。メンバーはもちろん高校からの同級生、これがいつものメンバーである。

「よう、まだ来てないな」

「お疲れ様です、葵」

「桜さんも那瑠も早いね、ダッシュで来たのに」

 私は那瑠の真正面に座り、勉強の準備を始めた。

「ああ、私達は二限が無かったから」

「なるほど」

「それにしても、葵は本当に逹が好きですね」

 桜さんの言葉にドキッとする。一年生の時、那瑠に逹の事が好きだと相談して数週間経ったある日、逹から告白されてお付き合いする事になったのだ。

「ま、まあね……?」

「なんで疑問形なんだよ」

 ケラケラと那瑠が笑う。それにつられて私も笑った。

「よう、お疲れさん」

「お疲れ様!」

 三人で談笑していた時、蓮がやってきた。蓮は那瑠の隣に座り、教科書を鞄から出してノートに書き込みを始める。そうだ、今は勉強会の真っ最中だったんだ。私もにやけ顔を元に戻して勉強を始める。暫くして、ふと顔を上げると桜さんと目が合った。桜さんはにこやかに首を傾げてどうしました?と訊いてくる。

「いや、璃音も遅いなあって」

「ああ、確かに遅いですねえ」

「何かあったのかな?」

「二限が終わったらすぐに来ると言っていましたが……」

「呼んだか?」

「璃音!」

 璃音はカフェで買ったであろうケーキ数種とコーヒーを手にしてやってきた。コーヒーのいい匂いが広がる。

「あら、ケーキですか、私にもくださいな」

「ああ、いいよ、もとよりそのつもりだった」

 璃音は苦笑して頷いた。桜さんは子供のように目を輝かせてチョコレートケーキを口に運ぶ。

「ここのチョコレートケーキ、美味しいですよね」

 桜さんの笑顔が眩しい。私は璃音からケーキを一つ貰った。もともと皆に配る予定だったらしい。私達は各々飲み物を買って来てまた席に着いた。

「いただきます!」

 口を揃えて、みんな一斉にケーキを口に運ぶ。璃音は苦笑してどうぞと言った。しばらく私達は無言でケーキとコーヒーを楽しむ。私は珍しくペパーミント・ラテを飲んでいる。この間那瑠に教えてもらって初めて飲んだのだが、これがなかなか美味しいのだ。もともとチョコミントなど薄荷系の食べ物が好きだったので、このコーヒーも美味しく飲んだ。

 暫く勉強する手を止めてケーキやコーヒーを楽しむ。璃音は桜さんがケーキを美味しそうに食べるのを嬉しそうに眺めていた。これで正式には付き合っていないらしいから驚きだ。蓮は甘い物が苦手らしいのでケーキではなくサンドウィッチを食べている。そちらも美味しそうだ。

 皆がケーキやサンドウィッチを食べ終わった頃、やっと逹がやって来た。逹はカフェの入り口でキョロキョロと辺りを見渡して此方を探している。私は手を振って、逹に此処に居るよと合図した。逹は笑顔になって此方に歩いて来る。

「よう、遅かったな」

 蓮がコーヒーを飲みつつそう言う。逹は私の隣に座りながら力なく笑った。

「教授に捕まっちゃってさ、なかなか話が終わらなくて」

「何かあったのかと思った」

「んーん、何も無いよ、大丈夫」

 私の言葉に逹は笑顔を見せてくれる。逹も璃音からケーキを一つ受け取って喜んでそれを食べ始めた。逹はケーキを食べながら教科書を読んでいる。昔は、と言っても数年前だが、勉強が嫌いだったのに人って変わるんだな、なんて考えた。私も見習ってノートに目をやる。

 逹がふぅと溜息を吐いたのは三限が終わる時間だった。九十分間集中して私達は勉強していた様だ。私は問題集から目を離して、隣で伸びをしている逹に目をやった。

「集中してたみたいだね」

「そういう葵も集中してたみたいだけど。珍しいね」

「一言多いよ」

「ははっ、ごめんごめん」

 そして視線を感じて真正面を見ると、にんまりとした那瑠と目が合う。

「いやあ、仲睦まじくて私は嬉しいよ」

「やめてよ~」

「良いじゃん、からかってる訳じゃないよ」

「そう?」

「そう」

 那瑠はクスリと微笑んだ。私はいつもこの笑顔に見守られながら高校時代から過ごしてきたんだなと、ふと思った。私は成績が皆に比べたら悪かったので、高校時代もよくこうして勉強会を開いて貰っていた。といっても偏差値の高い聖北大学に入れたので、そこそこ頭は良い筈なのだが。

「ねえ那瑠このあと授業あるっけ?」

「いや無いよ、どうして?」

「那瑠の部屋でも勉強会したいなって」

「お、やる気じゃん。いいよ」

 那瑠はニカッと笑って承諾してくれた。那瑠の部屋にはお酒がたくさん置いてある。私はそれもちょっと楽しみにしながら、また勉強を始めた。

「じゃあ、俺はこの後授業あるから、授業終わったら那瑠の部屋に直で行くわ」

「分かった、いてら」

「いってらっしゃい」

 蓮が一抜けたと言って席を立つ。私達は蓮に声を掛けて、手を振って見送った。

「ねね、那瑠、蓮と付き合わないの?」

「はぁ?」

 那瑠は素っ頓狂な声を発して目を丸くしながら笑う。

「蓮とは付き合わないと思うよ」

 苦笑しながらそう言うので私はちょっとしょんぼりしてしまう。那瑠は笑ったまま言葉を続けた。

「私は誰とも付き合わないし、蓮も誰とも付き合わないと思うから、安心してくれ」

「ふふ、何それ」

 那瑠がそう言うので私は笑ってしまう。お似合いなのにな、と言いたかったが心の内に留めておいた。

「私はお似合いだと思いますけどね」

 桜さんがそう言ったので、私は目を輝かせる。うんうんと璃音も頷いていた。

「そうだよね!お似合いだと思う!」

「二人して何言ってるんだ、ほら、勉強するよ」

 那瑠はぷいとそっぽを向いて勉強を始めてしまう。私と桜さんは目を見合わせてクスリと笑った。


 放課後、私と那瑠は並んでキャンパスを後にした。桜さんと璃音は一度帰ると言って帰り、逹は教授に分からない所を聞きに行くと言って別行動になった。那瑠は私に帰ってからじゃなくて良いのか?と訊いてきたが、私は後で親に連絡するから大丈夫と言った。

「何飲もうかなぁ」

「おいおい。酒目当てで私のところに来るのか?」

「ふふ。そういう訳じゃないけど。それもちょっと楽しみ」

「しっかり勉強しないと酒はやらないからな」

「うん!頑張るよ!」

 苦笑した那瑠に笑みを向けながら歩く。こうしてゆっくり話が出来るのも、今年で最後か、なんて考えが頭によぎって、私は少し寂しくなってきた。

「どうした?」

「あ、ううん、何でもない」

「何でもないような顔してないぞ、大丈夫か?」

 私はちょっと涙目になっていた。どれだけ皆の事が好きなんだ、と自分に自分で突っ込みを入れる。ちょっと寂しくなっちゃった、と言うと、那瑠はぽんぽんと背中を優しく撫でてくれた。

「まーた来年のこと考えてたな?その前に前期考査と後期考査で単位貰わないとな」

「うん、そうだよね」

「一人だけ留年したら、もっと寂しいぞ。一緒に頑張ろうな」

「それは死んでも嫌!頑張る」

 私は他の五人がいない大学生活なんて御免なのでもっと頑張ろうと思った。

 那瑠の部屋は聖北大学からそう遠くない所にある。私たちは他愛のない話をしながらそこに向かう。

「皆も来るなら夕飯作らなきゃいけないな」

「え、作ってくれるの?」

「もちろん?」

「やった!」

 私は那瑠の手料理が好きだったのでとても嬉しい。部屋に帰る前に買い出しするか、と那瑠は言って、スーパーに向かう。

「何が食いたい?」

「簡単に作れる物で良いよ」

「んー。じゃあ量も作れるしカレーにするか」

「いいね」

 私たちはカレーの材料を買って、また歩き出す。那瑠は部屋に着くと勉強してていいよと言って、カレーの準備をし始めた。私ははーいと返事をして机に参考書を広げる。私のレポート作成は順調に進んだ。家でやるよりも断然ここでやる方が集中できる。家でやるには誘惑が多すぎるのだ。一段落ついた所で呼び鈴が鳴って、蓮がやってくる。蓮は入ってくるなりキッチンに寄って、今日はカレーか、と呟いた。こちらに来た蓮は、荷物を下ろして酒瓶が並ぶ戸棚に目をやり、今日はコークハイがいい、と言って那瑠にグラスを要求する。那瑠は苦笑して言った。

「せめて夕飯を食ってからにしてくれ」

「残念」

 蓮はしょぼくれてそう言い、私の向かいに座る。蓮に向かって私は声をかける。

「お酒、楽しみだね」

「ああ、その為に来たようなもんだ」

「聞こえてるぞ、二人とも勉強しろよ」

 那瑠の一声に笑って私たちは勉強を始めた。那瑠はお母さんみたいだ。面倒見が良くて頼れるお母さん。私もそんな母親になりたいなと思った。

 那瑠がカレーを作り上げて数十分後、逹がへとへとになりながら部屋に入ってきた。

「あ~カレーの匂い。腹減ったぁ」

 何でそんなに疲れているのかと那瑠が問いかけると、逹は溜息を吐きながら言う。

「教授が分かんない所教えてくれてたんだけど、それが講義みたいになっちゃってさ、かなり時間かかった」

「なるほどな。そろそろ夕飯にするか」

「やった」

 逹は顔をパッと輝かせて立ち上がった。那瑠がカレーを温めているのにも待ちきれない様子だ。子供じゃないんだから、と那瑠が言うのにも耳を貸さず、ご飯を大盛にしたお皿を那瑠の方に差し出す。私と蓮も立ち上がって、対面式のキッチンに立つ二人を見守った。

「二人はどのくらい食べる?」

「俺は大盛で」

「私は普通にさらっとでいいよ」

「オーケー」

 那瑠は手際よくご飯とカレーを盛り付ける。私たちはそれとスプーンを受け取って参考書類を片付けた机に落ち着いた。

 逹は美味い美味いと言ってあっという間に完食し、おかわりをした。そんな細い体でよく食べるなあと常々思う。やっぱり男の子は違うなあと思いながら私もスプーンを動かした。那瑠が作るカレーは市販のルゥを使っていない。いろんなスパイスを使った特別製だ。それがどんなカレーよりも美味しくて、私も綺麗に完食する。蓮も逹に続いておかわりをして、私たちは少々談笑した。そうしているうちに桜さんと璃音がやってきた。時間は七時を過ぎたころだった。

「あら、良い香り」

「桜、璃音、いらっしゃい」

「お邪魔する」

 二人は靴を脱いで丁寧に揃えてから部屋に入ってくる。その手には缶酎ハイやつまみなどが入った袋が。

「おいおい、飲みに来たのか?」

「せっかくの機会ですから」

 苦笑する那瑠に向かって桜さんはにっこりしてそう言った。やれやれと首を振る那瑠に、蓮は今度こそはとコークハイをいれてくれるように頼む。

「仕方ないなぁ」

 那瑠は蓮にコークハイ、私にカルアミルクを作って持ってきてくれた。逹は桜さんが買ってきたレモンサワーを貰っている。それぞれがお酒を手にして、那瑠の一声で乾杯。

「しっかり勉強もしてくれよ」

 皆ではーいと頷いてグラスを傾ける。しばらくワイワイと話をして、蓮がそろそろ始めるか、と言ったところで勉強を始めた。私はお酒をちびちび飲みながらレポートを書き上げて、次の課題に手を付ける。工学部の中でもテストを課さない講義ばかり取っていたので、逆に課題やレポートは多い。

 お酒が無くなった所で、私の課題はすべて終了した。あとは提出するだけにしておいて、唯一テストがある講義の教科書を出す。隣を見るとうつらうつらしている璃音と目が合った。

「璃音、寝そうだけど大丈夫?」

「ん?ああ……」

 時刻は十時を過ぎていた。その姿を見て私は欠伸をする。

「もうこんな時間か」

 那瑠は顔を上げて私を見た。

「帰らなくて大丈夫なのか?」

「うん、泊まってくるって親に言ってある」

 なら大丈夫か、と那瑠は言ってベッドの方を見やる。

「桜も泊まっていく?」

「ええ。出来れば泊まっていきたいです」

 桜さんはおっとりとそう言った。

「そうか。じゃあ、ベッドは狭くて悪いけど桜と葵が使ってくれ」

「那瑠は?」

「もう一組布団があるからそこで雑魚寝かな。蓮も逹もそこで雑魚寝。璃音はソファ倒して、リクライニングチェアだから、そこで寝ていいよ」

 もう半分意識が無い璃音を逹と蓮が、倒したソファに横たえさせる。タオルケットをかけてやれば、もう璃音は寝息を立ててしまった。

「ふふ、疲れてたのかしら」

 桜さんが小声でそう言って微笑んだ。私は教科書を開く前に那瑠にカルアミルクをもらう。

「那瑠、俺ジンライム飲みたい」

「はいはい」

 那瑠はキッチンとこちらを行ったり来たりしてお酒を作って持ってきた。桜さんの隣の逹を見ると、大きな欠伸をしている。

「逹も眠いの?」

「眠い。俺テスト範囲一応終わったから寝ようかな」

「あらあら、寝てしまうのですか?夜はこれからですよ」

 桜さんは元気だなあと思いながらお酒を飲んだ。まだ二杯目だがちょっと私も眠い。

「私もちょっと眠いかも」

「葵まで」

 桜さんが悲しそうな瞳をこちらに向けた。明日は一限からテストなので早めに勉強を終わらせてしまいたい。私は教科書と問題集を交互に見ながら勉強を始めた。

「私はまだ寝ないから安心しなよ桜」

「俺も」

「あら、嬉しいです。飲み明かしましょうね」

 那瑠と蓮はそう言ってグラスを手にする。それから私たちは二時間ほど勉強した。逹は一時間したところでギブアップと言って布団に横になっている。

「この位でいいかなぁ」

 私は大きく伸びをして満足してノートを見た。びっしり問題を解いたので少し疲れた。

「皆明日何限から?」

「私たちは三限から」

 私の問いに那瑠が答える。蓮は那瑠にジンライム、と言った。

「よく飲めるねぇ」

「まあ、酔わないから酒の消費量半端ないけどな。あ、俺も三限から」

「ほえー」

 程々にしておけよとキッチンから那瑠の声。

「璃音は明日一限からですよ」

「俺は二限からぁ……」

「じゃあ璃音は早く寝て良かったね。逹、起きてたの」

「うん……」

 私はそろそろ寝ると言って、那瑠のベッドに横たわる。スマホのアラームがかかっている事を確認して目を閉じた。


「おはよ~……」

 私は六時に鳴ったアラームを止めて辺りを見る。逹と那瑠が揃って眠っていて、璃音が起きていた。それに桜さんと蓮も起きている。

「葵、おはようございます」

「おはよう皆」

 まだ眠い目を擦って欠伸をした。

「あれ、もしかして。桜さん寝てない?」

「ええ、眠気が来なくて、蓮と話し込んでいたらこんな時間になってしまいました」

「眠くない?大丈夫?」

「後で少し仮眠を取ろうかと」

「俺はこのまま学校行くわ」

「ええ、凄い体力」

 私は真似できないし良い子は真似しないで欲しい。

「ん……」

「あ、那瑠おはよう」

「おはよう、あれ、桜も蓮も寝てないのか」

 私と同じ反応をした那瑠が体を起こしてそう言った。桜さんは笑って頷く。

「何をそんなに話し込んでたの?」

 私は蓮と桜さんの顔を交互に見た。蓮が水を飲んで……たぶん水だ……答える。

「これからの日本の情勢とか経済の話とか色々」

「うええ、よくそんなに話せるね」

「楽しいですよ」

「楽しいぞ」

 蓮と桜さんの声が揃って、二人は顔を見合わせて笑った。そして気になった事を蓮に確認する。

「それ、水?」

「いや、ジンライム」

「おい、程々にしとけって言ったよな?」

 那瑠が怖い顔で蓮に詰め寄った。蓮はまあまあ落ち着けよと言ってたじろぐ。

「飲んじゃったもんは仕方ないけどさ……」

「すまんって、今度から気を付けるよ」

「ああ、そうしてくれ」

 ムスッとした那瑠はキッチンに行って何やら調理し始めた。そしていい香り、コーヒーの香りが。

「蓮!」

「な、なんだよ」

 唐突に那瑠が大きな声を出す。なんだろうと思って那瑠の方を見ると、空になったジンの瓶を振って見せた。

「飲み切りやがったな!」

 クスクスと桜さんと私が笑う。那瑠は憤慨してプンプン怒り始めた。そしてその声で逹が身を起こす。

「うるさいなあ、何の騒ぎ?」

 ぼーっとした声で逹が言うので私たちはまた笑った。璃音がキッチンに向かって行き、那瑠の食事作りを手伝う。コーヒーを持って来た璃音がボソッと、自業自得だなと言うので蓮は天井を仰いだ。

「まったくお前ってやつは!」

「すまんって、買ってくるから許して」

「暫く蓮は宅飲み禁止だな、水だけ!」

 那瑠の言葉に蓮は不満そうな顔をする。私は璃音からコーヒーを受け取って一口飲んだ。熱い。

「朝食出来たから持って行ってくれ」

「はーい」

 璃音がそう言って何とか場を収める。那瑠も溜息を吐いて食器を運んだ。朝食はトーストにベーコンエッグ、それにサラダである。私たちはそれぞれテーブルの前に座って手を合わせた。

「いただきます」

 皆の声が揃う。時間は八時少し前だった。私は少し急ぎ気味でパンを齧る。テストに遅れる訳にはいかない。璃音も同様に急いでサラダを食べていた。


「じゃあ、行ってきます!」

「行ってくる」

 私と璃音は声を揃えてそう言うと那瑠の部屋から出た。気持ちの良い晴れの日だ。璃音と私は並んで歩く。璃音と二人きりというのはあまり経験したことが無いので少しだけ緊張した。

「どうした?僕の顔に何か付いてるか?」

「あ、ううん、違うよ何でもない」

「そうか」

 璃音は微笑んでそう言って腕時計を確認する。

「教室に入るにはちょっと早いから、カフェでコーヒーでも飲みながら復習するか」

「うん!」

 私たちは大学に着くと大学内にあるカフェを目指す。私は何を飲もうかななんて考えて、ペパーミント・ラテにしようと決めた。

 カフェは閑散としていた。まだ早い時間だからかもしれない。ちょっと私はウキウキしながら店員さんに注文する。璃音もペパーミント・ラテを選んだ。ちょっと意外だ。

「あれ、珍しいね」

「ああ、昨日葵が飲んでいるのを見てな、飲んでみたくなったんだ」

「美味しいよ~」

「そうじゃないとな」

 私たちはクスリと笑う。コーヒーを手に日当たりの良いテラスに腰を下ろした。今日のテスト頑張ろうね、と言って璃音を見ると、璃音は大きく頷く。

 今日の私は何だか自信に溢れていた。そして時間ギリギリまで復習をして璃音と別れる。不可だけは回避するぞ、と低い目標だったが、満点取るぞという気持ちで教室に入った。

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