予告編 バーバスカムのせい


 ~ 七月二十二日(日) ~


  バーバスカムの花言葉 臨機応変な態度



「オープン初日に来るこたあないでしょうに。あちいったらないわよ」


「ほんとなの。熱気で酔いそうなの」


「元・東京人の血が騒ぐわ! オープンセールの目玉品、残さずゲットよ!」


「やれやれ。あの子がいりゃあ荷物持ちさせたんだけど、バイトらしいしねえ」


「酷いやつなの。きっとこうなることを想定してバイト入れたの」


「ほら、二人とも気合い入れて! 最初はおひとり様ひと袋限定の爆安お米よ!」


「はなから十キロの荷物かい!?」


「なに言ってるのよ。あんたも買うんだからニ十キロでしょうに」


「ねえ、おばさん。この、自称『オープンセールのファンタジスタ』を止めて欲しいの」


「そうさねえ。………ん? なんだい、道久からのメールかい」


「SNSは、メールじゃないの」


「わはははは! こないだベルが来たって言っちまったら大笑いされたっけね!」


「いつの時代よ」


「あんただって、昔は電話ボックスにこもってた口でしょうに。ええと…………」


「道久君、なんて言ってるの?」


「バイト前に、まーくん連れてここに来るって。……まーくんって誰さね」


「うちの義弟おとうとよ。しばらくこっちで暮らすらしいの」


「へえ! 越してきたんかい?」


「ううん? せいぜい夏休みの間くらいじゃないの? このショッピングセンターが藍川の関連らしくて、お忍びで視察なんだってさ」


「へえ~!」


「あと、お義父さんに言われて、ほっちゃんの様子を見に来たらしくて」


「そうなんかい。…………よかったね、穂咲ちゃん」


「よかったの」


「ほんとによかったわね。これで……」


「そうなの。これで、三十キロまでOKなの」




 こうして俺は。

 バイト前だというのに。

 炎天下、三十キロもの荷物を……




「なに言ってんだい穂咲ちゃん。道久も並ぶんだから、四十キロじゃないのさ」




 ……………………。


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