壱ノ不思議 廊下の怪(22p)

 この先は確か、台所が有ったはずだ。


『行かないで』


「はい! はい! 今行くわよ」


『行かないで!』


 廊下の突き当たりにある台所から声は聞えている。

 私は入口の青い布の暖簾を潜り、台所へ入った。

 誰もいない。

 台所の中には、おばあちゃんも雪絵お姉さんも、誰もいなかった。

 台所は炊事場である六畳の板の間とそれに続く四畳半の土間があり、板の間はリフォームしたらしく、オーブン付きの、ステンレス性のシステムキッチンが入っているが、土間は小さな釜戸と青と水色のタイルで彩られた流しがあり、

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る